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マイナーチェンジで「フィット」にどんなテコ入れが? ティザー情報からホンダの意図を読み解く

2022.08.24 デイリーコラム 佐野 弘宗
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ちょっと早めの“強い”テコ入れ

ホンダが「フィット」のマイナーチェンジにまつわるティザーキャンペーンを開始した。新しいフィットは今年秋の発売予定という。4代目となる現行フィットの国内発売は2020年2月だから、今回は発売2年半強でのマイナーチェンジとなる。

今どきとしてはちょっと早いタイミングの気もするが、ホンダ車の場合、発売から2年くらいで一度テコ入れをするのが通例である。そのうえで発売3〜4年で本格的なマイナーチェンジを実施するケースが多い。

実際、2代目と3代目のフィットでも発売から2年強で一部改良が入り、2代目ではグレード追加が、3代目ではエクステリアのデザイン変更や装備の見直しが実施されている。ただ、今回は2年半の段階で“マイナーチェンジ”をうたい、大規模なキャンペーンをうっているのがちょっと異例である。

その理由のひとつには、今のフィットの販売が好調とはいえない現実があるだろう。4代目フィットは2020年2月14日に、月間1万台の販売計画で発売された。しかし、実際に月間1万台を超えたのは2020年3月の1万4845台だけで、発売初年度である2020年度(2020年4月〜2021年3月)から、月間平均は8000台を切った。翌2021年度(2021年4月〜2022年3月)はさらに減少して、月間平均5000台を割り込んでいるのだ。

半導体不足・部品不足のご時世なので、台数が伸びないのはいたしかたない面もある。しかし、2021年度については、フィットは販売ランキングでも登録車全体の13位に落ち込んでおり、同じホンダの「フリード」(月間平均6134台で8位)や「ヴェゼル」(同じく4972台で9位)を下回っているのは、さすがに厳しい。ご想像のとおり、軽自動車の「N-BOX」はさらに上(同時期の月間平均は1万6000台弱)をいっている。

2020年2月に発売された現行型「ホンダ・フィット」。燃費や室内の寸法等の数値を追わず“心地よさ”を追求したという触れ込みだったが、肝心の販売台数はちょっと低迷気味。
2020年2月に発売された現行型「ホンダ・フィット」。燃費や室内の寸法等の数値を追わず“心地よさ”を追求したという触れ込みだったが、肝心の販売台数はちょっと低迷気味。拡大
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今や主力ではないものの……

フィット不振の理由については、いくつか指摘されている。まず現行型の発売時期が「トヨタ・ヤリス」(2020年2月10日発売)と完全にカブってしまったことだ。少なくとも、車名やデザインの新鮮度ではヤリスに分があったのは否定できず、スタートダッシュの勢いが削がれた可能性はある。

また、4代目フィットは先代からあえてパッケージレイアウトを変更せず、乗り心地や居心地改善のためにシートの厚みを増やしたことで、室内空間や荷室がわずかながらも狭くなったことを指摘する声もある。フィットはもともとコンパクトカーの常識を覆す居住性や積載性能の高さが大きな売りであり、それは現在もクラストップ級ではある。ただ、結果的には3代目、そして今回の4代目と荷室は実質的に少しずつ縮小しており、旧型からの代替え需要が伸びなかったとしても不思議はない。

さらに2021年度の販売ランキングからも分かるように、今や日本のベストセラーに上り詰めたN-BOXに加えて、フリードも安定して売れている。ホンダの国内市場が、かつてのようなフィットに頼った構造でなくなっているのは事実だ。となると、フィットだけの責任でもない? ……とはいえ、フィット担当チームとしては不振を放置するわけにもいかないわけで、いつもより早めのマイナーチェンジということになったのだろう。

ニッポンのベストセラーカーである「ホンダN-BOX」。2022年の上半期(1〜6月)も10万3948台が販売され、当然のように新車販売台数1位に輝いた。
ニッポンのベストセラーカーである「ホンダN-BOX」。2022年の上半期(1〜6月)も10万3948台が販売され、当然のように新車販売台数1位に輝いた。拡大

グリルレスからの転換

というわけで、今回のマイナーチェンジだが、技術的には「e:HEV」=ハイブリッドのモーター出力がアップして、より小気味いい走りになる……ということだけが現時点で明かされている。現行フィットも乗り心地や操縦性、走りについても評価は低くなかったわけで、その点は大きな変更はないのかもしれない。

公開された画像を見るかぎり、フロントマスクのデザインも変わっている。「ベーシック」「ホーム」「リュクス」といった標準系グレードでは、センターグリルにメッキ加飾を入れたり、バンパーグリルをブラックアウトしたりと、見た目のグリルを強調して従来の犬顔感(?)を薄める意図がうかがえる。

ただ、すでにご承知のように、今回のマイナーチェンジ最大の目玉は「RS」の復活である。フィットRSといえば、2代目と3代目で設定されていた定番スポーツグレードだが、4代目ではそれにかわるスポーツグレードとして「ネス」が用意された。車名とつなげた“フィットネス”という語呂からも想像できるように、それはいかにも今っぽい新感覚スポーツグレードの提案だったわけだが、やはりなかなか理解されなかったようだ。

2022年8月5日に公開された「フィット」のマイナーチェンジモデル。グリルレスが特徴だったはずだが、グリルを強調するかのようにメッキ加飾があしらわれている。
2022年8月5日に公開された「フィット」のマイナーチェンジモデル。グリルレスが特徴だったはずだが、グリルを強調するかのようにメッキ加飾があしらわれている。拡大
マイナーチェンジの目玉となる「フィットRS」。「ネス」にかえて投入される。
マイナーチェンジの目玉となる「フィットRS」。「ネス」にかえて投入される。拡大

困ったときのRS

ホンダにおけるRSは、2代目フィットでもマイナーチェンジ時にハイブリッドに新設定されたり、2020年にフルモデルチェンジした「N-ONE」でも目玉とされたりと、“困ったときの……”でもないだろうが、ホンダファンの琴線に触れるキラーアイテムではある。

フィットRSは3代目では再びエンジン車のみの設定になっていたが、今回は主力のe:HEVに用意されるようだ。グリルや前後バンパー、リアスポイラーなどが専用デザインとなり、パドルによる減速セレクターやドライブモードスイッチが追加されるという。ただ、シャシー方面がどうなるかは現時点で明らかではない。

さらに、公式ウェブサイトではRSのインテリア画像も公開されているが、ステアリングホイールも定番の3本スポークデザインとなっているほか、センターにアームレスト付きのコンソールボックスが備わっているのが目をひく。他グレードのインテリアはまだ公開されていないのだが、あの特徴的なフラット(で、アタッチメントがいろいろ装着できる)コンソールは、個人的にはやめないでほしいなあ。

というわけで、ホンダファン、およびこの秋に国産コンパクトカー購入に動こうとしている向きは、刮目して待て……というほどではなくとも、少しは気にしておくといいかも。

(文=佐野弘宗/写真=本田技研工業/編集=藤沢 勝)

「フィットRS」のティザー画像。主役として強調されているのはやはりフロントグリルだ。
「フィットRS」のティザー画像。主役として強調されているのはやはりフロントグリルだ。拡大
2020年にフルモデルチェンジされた「N-ONE」にも「RS」が設定された。
2020年にフルモデルチェンジされた「N-ONE」にも「RS」が設定された。拡大
佐野 弘宗

佐野 弘宗

自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。

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