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驚きのデザインで話題をまいたあのクルマ 販売の結果はどうなった?

2022.08.31 デイリーコラム 今尾 直樹

多様性の時代ゆえ

登場したときはみんなが“これじゃああんまりだ”と思うようなびっくりデザインだったクルマの、実際のセールスはどうだったのか? というお題をいただいたので、ネットベースですけれど、調査してみました。それでは、筆者の独断による“これじゃああんまりだ”デザインの第3位から発表しましょう。

“これじゃああんまりだ”デザイン第3位! 「三菱デリカD:5」である。新しいクリーンディーゼルエンジンと8段ATを備えて2019年に発売されたデリカD:5。その電気カミソリのようなフロントマスクは、タデ食う虫も好き好き、捨てる神あれば拾う神あり、ということでしょうか。あるいは世間というのは冷たいようで温かい。

自動車販売協会連合、いわゆる自販連の「乗用車ブランド通称名別順位」の2021年度(2021年4月〜2022年3月)、デリカD:5は……ジャーン、第36位! 販売台数は1万4117台で、前年比なんと108.9%! あれをよしとする懐の深いひとたちが、ニッポンにはいらっしゃるのだ。多様性の時代である。いろんな価値観がある。ニッポンも捨てたもんじゃあない。

ちなみに、2021年に新型「アウトランダー」を発表したとき、三菱はこんなデザイン宣言を出している。「Robust & Ingenious(頑強さと独創的)のシナジー効果によって“三菱らしさ”を表現するとともに、他に類を見ない独自性を生み出していく」。年産100万台以下に落ち込んでしまった三菱が、いかにはい上がっていくか。要注目である。

2019年のビッグマイナーチェンジでフロントまわりが一変した「三菱デリカD:5」。当時の三菱のスタッフは「賛否の賛があるといいのですが」と心配していたが、販売成績は好調。
2019年のビッグマイナーチェンジでフロントまわりが一変した「三菱デリカD:5」。当時の三菱のスタッフは「賛否の賛があるといいのですが」と心配していたが、販売成績は好調。拡大
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ニッポン人を引きつけるなにか

“これじゃああんまりだ”デザイン第2位! 「トヨタ・アルファード」。もともとアルファードは、「日産エルグランド」にターゲットを絞って開発され、2002年に投入されて見事にライバルをうっちゃった大型ミニバンである。存在そのものが“これじゃああんまりだ”なヤツに映っている方もいらっしゃるに違いない。

しかして、2015年に現行アルファードが登場したとき、こんなダンゴムシだか、『風の谷のナウシカ』に出てくる「王蟲(オーム)」みたいなグリル、“これじゃああんまりだ”と思ったのは筆者だけではあるまい。そして、ご存じのように、売れまくっている。自販連の統計だと、昨年度は……ジャーン、第7位! 最廉価モデルでも359万7000円もする高級ミニバンなのに、7万9726台も売れている。

驚くべきは姉妹車の「ヴェルファイア」が発表されている上位50位の圏外から外れてしまっていることだ。2017年のマイナーチェンジで、ヴェルファイアはガンダムを通り越して、『トランスフォーマー』のオプティマスプライムみたいな顔になっているのに、それでもアルファードとの差は縮まらなかった。多くのひとは、あのよろいのようなアルファードのグリルになぜだか知らねど、圧倒的に魅了されたのである。ここにはニッポン人の潜在的ななにかが隠されているのではあるまいか。

現行モデルのデビュー時に世の中に衝撃を与えた「トヨタ・アルファード」。しかしながら今や政治家をはじめとしたVIPの送迎用車両の主力にすらなりつつある。
現行モデルのデビュー時に世の中に衝撃を与えた「トヨタ・アルファード」。しかしながら今や政治家をはじめとしたVIPの送迎用車両の主力にすらなりつつある。拡大

デザインの良しあし≒売れ行き

“これじゃああんまりだ”デザイン第1位! 「ホンダN-BOX」である。特に「カスタム」。あれは“これじゃああんまりだ”である。しかもそれがめちゃくちゃ売れている。これこそ“これじゃああんまりだ”ではあるまいか。

2017年に登場した現行2代目N-BOXは、プラットフォームやパワートレインまで一新したのに、デザインはほとんど初代そのままだった。それはなぜかと尋ねたら、もちろん売れているからである。

N-BOXは2011年に初代が発売となり、年間軽四輪車販売台数第1位を、2014年は逃したものの、2013年と、2015年から2021年まで7年連続、合わせて8回も獲得している(おそらく今年も1位になる)。この間、前述したように2017年9月にモデルチェンジを受け、メカニズムを一新した2代目が登場しているのである。

ホンダはかつて「ライフステップバン」だとか、「バモスホンダ」だとか、ステキな軽自動車をつくっていた。だから、デザイン力がないわけではなくて、むしろクリエイティビティーに富んでいて高いはずなのだ。現行の軽のラインナップにしても、N-BOX(特にカスタム)は“これじゃああんまりだ”だけれど、「N-WGN」も「N-VAN」も「N-ONE」もとてもいいと筆者は思う。

圧倒的に売れているのはN-BOXなのである。いったいニッポン人にとってデザインとはなんなのか? 興味の尽きないテーマである。

(文=今尾直樹/写真=三菱自動車、トヨタ自動車、本田技研工業/編集=藤沢 勝)

年間20万台を軽く上回るペースで売れまくっている「ホンダN-BOX」。デザインとしての美しさは他の「Nシリーズ」のほうがずっといいと思うわけだが、販売実績はN-BOXが圧倒的だ。
年間20万台を軽く上回るペースで売れまくっている「ホンダN-BOX」。デザインとしての美しさは他の「Nシリーズ」のほうがずっといいと思うわけだが、販売実績はN-BOXが圧倒的だ。拡大
今尾 直樹

今尾 直樹

1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。

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