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販売低迷でも変わらぬ存在感 「マツダ6」こそがマツダの精神的支柱である理由

2022.12.21 デイリーコラム 鈴木 真人
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デビュー20周年記念特別仕様車が登場

11月に「マツダCX-8」の商品改良説明会があった。3列シートのSUVというトレンドのモデルである。2年ぶりにデザインやダイナミクス性能などに変更が加えられたということで、ニュースバリューは高い。同時に「マツダ・ロードスター」の仕様変更と特別仕様車の「ブラウントップ」が披露された。人気が再燃しているといわれるオープンモデルだから、こちらも注目の発表である。

新型車両が並べられ、写真撮影も行われた。マツダが誇るSUVとオープンカーをしのぐオーラを放っていたのが「マツダ6」である。2002年にデビューしたミッドサイズセダンだ。当初は「アテンザ」という車名だったが、2019年にグローバル統一名称のマツダ6に変更されている。今年はデビュー20周年ということで、特別仕様車「20thアニバーサリーエディション」が発表されたのだ。

セダンというジャンルは、昨今ではあまり人気がない。日本では日産の「シーマ」と「フーガ」、ホンダの「レジェンド」が生産終了し、新型「トヨタ・クラウン」はクロスオーバータイプが先行発売されてセダンは後回しになった。選択肢が乏しくなっているからマツダ6の一人勝ちになりそうだが、そんなに甘くはない。2021年の販売台数は1234台で、ワゴンと合わせても2350台である。出来の善しあしにかかわらず、セダンは売れなくなっているのだ。

マツダ自体も、今やすっかりSUVメーカーという印象になった。すでに販売台数の6割以上がSUVになっているそうだ。2014年に「CX-5」を発売し、SUV人気を主導したのがマツダである。2015年に「CX-3」、2017年にCX-8、2019年に「CX-30」を投入してラインナップを充実させてきた。マツダのブランドイメージを高めた立役者がSUVなのである。

「マツダ6 20thアニバーサリーエディション」。初代「アテンザ」から数えてデビュー20周年を記念した特別仕様車だ。
「マツダ6 20thアニバーサリーエディション」。初代「アテンザ」から数えてデビュー20周年を記念した特別仕様車だ。拡大
フロントフェンダーには「20TH ANNIVERSARY」のバッジが貼られる。
フロントフェンダーには「20TH ANNIVERSARY」のバッジが貼られる。拡大
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ジャーマンスリーへの挑戦状

SUVの功績は明らかだが、それでもマツダにとってセダンは特別な存在だ。今もマツダ6はフラッグシップモデルに位置づけられている。マツダの資料には《ブランドメッセージ「Zoom-Zoom」を象徴し、ブランドDNAを100%体現するミッドサイズカー》と記されていた。そういえば、アウディも売れ筋とはいえない「A8」をフラッグシップと呼び、最新のテクノロジーを注ぎ込んできたことを強調している。自動車の普遍的な価値を表現しているのがセダンだという考えは、ずっと変わっていない。

2002年、初代アテンザのティザー広告でマツダのZoom-Zoomキャンペーンが始まった。北米では2000年に開始されていたが、日本ではこれが初めてである。英語で「ブーブー」を意味する子供言葉で、「子供のときに感じた動くことへの感動」を伝えるメッセージだという。最近では「Be a driver.」というキャッチコピーが使われているが、Zoom-Zoomもマツダの世界観を表す言葉として残されているそうだ。

アテンザは、マツダの走りを重視する姿勢を表現したモデルである。ヨーロッパ車、特にジャーマンスリーと呼ばれる自動車メーカーに対し、日本からの挑戦という意味合いがあった。アウトバーンで180km/hを保って巡航する高速性能を持ち、スポーティーな走りを楽しめることをアピールしたのだ。

発売当時、ドイツでマツダ6を借りてチェコのプラハを往復したことを思い出した。アウトバーンはあいにくの渋滞だったがチェコに入ると高速道路はガラ空きで、古いシュコダを横目にアクセル全開で飛ばしたことを覚えている。ハイスピードでハンドルを切っても怖さはまったく感じられず、鼻歌気分でドライブを楽しんだ。新開発の2.3リッターエンジンが精密機械のようなフィールだったことにも感心した。

ボディーカラーは「匠塗(たくみぬり)」シリーズ第4弾の「アーティザンレッドプレミアムメタリック」を国内初採用した。
ボディーカラーは「匠塗(たくみぬり)」シリーズ第4弾の「アーティザンレッドプレミアムメタリック」を国内初採用した。拡大
写真左から「アテンザ」の初代、2代目、そして「マツダ6 20thアニバーサリーエディション」。
写真左から「アテンザ」の初代、2代目、そして「マツダ6 20thアニバーサリーエディション」。拡大

今も技術開発の中心に

撮影会場には、20thアニバーサリーエディションの横に初代アテンザが置かれていた。今見るとコンパクトなサイズで、低く構えた姿勢はアグレッシブである。マツダ6は大型化して高級感を増したが、走りを志向するドライバーズカーという方向性にブレはない。今回の商品改良ではエンジン制御の変更によって最高出力とトルク特性を最適化するなど、細かいチューニングが行われている。

大幅な商品改良が施された2018年にはすでにSUVの勢いは明らかになっていたが、マツダは技術開発の中心にアテンザを置いていることを表明していた。「スカイアクティブビークルアーキテクチャー」をいち早く採用し、サスペンションシステムを一新するという力の入れようである。開発主査の脇家 満氏は「アテンザがマツダのクルマづくりの中心にあるというのは、会社全体の意識なんです。マツダが持っている信念であり、伝統です」と力強く語っていた。

最近は試乗するクルマの多くがSUVで、たまにセダンに乗ると安定感のある走りに喜びを感じる。バランスという点では、今も最良の形態なのだと思う。マツダのマーケティング担当者は、売れ筋のSUVの美点を列挙した。当然のことだが、セダンについて話すときのほうが明らかに誇らしげなのだ。SUVが見事な走りを見せるのは、セダンで磨き上げた技術があるからだと考えている。販売台数がすべてではない。20年前にアテンザで始まったZoom-Zoomの精神は今も健在だ。

(文=鈴木真人/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)

「20thアニバーサリーエディション」はタンのナッパレザーシートを特別装備する。
「20thアニバーサリーエディション」はタンのナッパレザーシートを特別装備する。拡大
ヘッドレストには20周年記念車であることを示すエンブレムが型押しされる。
ヘッドレストには20周年記念車であることを示すエンブレムが型押しされる。拡大
鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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