オーダー停止から無事復活! 「日産GT-R」の延命に思うこと
2023.01.30 デイリーコラム驚異のハイポテンシャル
スポーツカーのモデルライフは実用車に比べるとたいてい長い。特にスーパースポーツのような超高性能モデルともなると、少ない年間生産台数で賄うことになるから、どうしてもライフサイクルは長くなりがちだ。
最近ではランボルギーニのフラッグシップモデル「アヴェンタドール」が11 年間に及ぶ長寿を締めくくったことで話題となった。フェラーリあたりは短いようにみえて、実は2モデルのライフを1世代のプラットフォームで賄っているから結構長め。最近では「458」「488」「F8」という3モデルライフを1世代でカバーした例もあった。
高性能モデルの寿命は長いといっていいが、とはいえ16年目に入ったR35「日産GT-R」のモデルライフは、他に類をみない長さとなった。もうほとんど「カウンタック」レベル(1974~1990年)だ。あの時代は16年間といっても“インジェクション化”“偏平タイヤ”“エアロデバイス”くらいの進化しか起きなかった。時間(とき)の流れ方が現代とはまるで違う。電子制御技術が日進月歩の21世紀は、感覚的に言って、1970年代の2、3倍は速いんじゃないか。そんななかでの16年(これからまだ延びそう)なのだから、やっぱりGT-Rのモデルライフはめちゃくちゃ長い。
逆に言うと、それだけGT-Rのポテンシャルが高かった、ということだ。15年以上に及ぶ周りの進化に負けないくらい、ベースのエンジニアリングが優れていた。そして、それをベースに今からでも高性能車界の第一線で活躍できるクルマになると確信したからこそ、この期に及んでなおフェイスリフトを日産は敢行したのだ(もちろん待ち望むファンの大きな声も届いた)。
騒音規制を含む環境対策が厳しくなるなか、スポーツモデルを取り巻く状況は年々困難の度合いを増している。2022年、いったん生産をストップさせたわけだから、「もうやめた!」でも一向に差し支えなかった。それでも日産は新型を企画した。騒音対策を施し、空力を磨き上げ、あまつさえドライブフィールも向上させているという。日産のグプタCOOいわく「集大成だ」、と。
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電動化は歓迎できる
思い返せば第2世代の「スカイラインGT-R」は基本的なプラットフォームを踏襲しつつ3モデルで13年にわたり生産された。フェラーリと同じ手法だから、これもまた大きな意味で1つのモデルだったと考えていい。そして振り返ってみれば、BNR32とBNR34とのドライブフィールの違いは、R35の初期型スタンダードグレードと今回のマイナーチェンジ直前の「T-spec」との違いより、わずかであったとさえ思う。
つまり、R35はその豊かな素質をベースにこの16年間で似て非なるクルマへと進化している。そのさらなる進化版=集大成となる新型GT-Rは一体、どんなクルマになっているのだろうか。初期型R35を真っ先に手に入れて楽しんだ筆者は、いや、第2世代から乗り継ぎずっとGT-Rファンであり続けてきた筆者は、COOの言う“集大成”の意味を早く確認したくてうずうずしている。
想像するにそれは、これまで数々の変遷を盛り込んできたR35のなかで最も“スカイライン的”なキャラクターになっているのではないか。スカイラインGT-Rの現代的解釈になっているような気がしてならない。ここでスカイライン的というのは、より“グランドツーリングカー”を意識するという意味だ。つまり、当初のR35GT-RはR(レーシング)側に重きを置いていたが、集大成としてのスタンダードモデル(特にグレード化されたT-spec)はGT側に立っていると予想する。
そう考えたとき、次世代モデルの方向性もおぼろげながら見えてくるのではないか。電動化が必須といわれていること自体、GT-Rにとってはおそらく何のためらいもない。スポーツモデルにおける電動化の最大の問題点は重量増に尽きる。けれどもGT-Rといえば重いことを武器にしてきた。多少の重量増ならば、軽量素材との組み合わせによってある程度は相殺できるはず。むしろ問題はPHEVを挟むか、一気にフル電動化か、マセラティのようにどちらもやるか、だろう。
個人的な希望でこの話題を締めるとしよう。PHEVとなった次期型R36(?)のスタンダードモデルには、「スカイラインGT-Rの現代版的なモデル」になってほしい。なんなら「スカイライン」と名乗ってくれてもいい。BEVならR35のデビュー時のような過激さの最新解釈が望まれるだろう。ならばそれが「NISMO」バージョンだ。BEVの「GT-R NISMO」となれば、大いにスポーツカーの未来を感じさせてくれると思う。
(文=西川 淳/写真=webCG/編集=関 顕也)
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西川 淳
永遠のスーパーカー少年を自負する、京都在住の自動車ライター。精密機械工学部出身で、産業から経済、歴史、文化、工学まで俯瞰(ふかん)して自動車を眺めることを理想とする。得意なジャンルは、高額車やスポーツカー、輸入車、クラシックカーといった趣味の領域。
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