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レクサスRX350“Fスポーツ”(4WD/8AT)【試乗記】

努力は裏切らない 2023.03.22 試乗記 佐野 弘宗 ホイールのハブボルト締結をはじめとした細かな改良を採り入れ続けてきたレクサスのシャシー制御が、いよいよ開花期を迎えている。とりわけ新型「RX」のハンドリングは見事だ。2.4リッターターボエンジンを搭載した「RX350」の仕上がりをリポートする。

供給を優先したラインナップ

新型レクサスRXの日本向けラインナップには、現在、3種類のパワーユニットがある。最上級が最新の「デュアルブーストハイブリッド」を積む「RX500h」で、2番手がプラグインハイブリッドの「RX450h+」。それに続くのが2.4リッターターボの純エンジン車となるRX350というわけだ。

ここで「あれはないの?」とお気づきの向きもあると思うが、そのとおりである。RXの土台にもなっている「GA-K」プラットフォームの定番パワーユニットといえば、2.5リッターシリーズパラレルハイブリッド(旧名:THS II)だ。RXでも積めば売れそうな気がするが、現在は用意されない。

ただ、存在しないわけではない。実際、海外では「RX350h」の名で販売されているし、担当者によれば、当初は日本での販売も想定していたという。しかし、RXはこのご時世でのデビューであることを考慮。まず確実な供給を優先してあえてバリエーションを絞っており、国内で350hを投入しないのもその一環という。なので、今後供給状態が改善すれば、追加される可能性は十分にあるようだ。

閑話休題。いずれにしてもRX500hやRX450h+はちょっと過剰な性能を売りにする上級モデルであり、“ちょうどいい”を期すると、今の日本では350一択となってしまう(今はRXそのものも自由に注文できない状態だが)。

上級の2機種がそれぞれモノグレードなのに対して、RX350はエントリーモデルということもあってか、いくつかの選択肢が用意されるのもうれしい。トリムグレードに豪華系の“バージョンL”とスポーツ系の“Fスポーツ”という2種類があるほか、駆動方式もFFと4WDがある。

2022年11月に発売された5代目「レクサスRX」。国内向けに用意されるパワートレインは「500h」「450h+」と「350」で、350では4WDのほかにFWDも選べる。
2022年11月に発売された5代目「レクサスRX」。国内向けに用意されるパワートレインは「500h」「450h+」と「350」で、350では4WDのほかにFWDも選べる。拡大
ボディーの全長は先代モデルと変わらぬ4890mm。ホイールベースは60mm長い2850mm。
ボディーの全長は先代モデルと変わらぬ4890mm。ホイールベースは60mm長い2850mm。拡大
今回の試乗車のボディーカラー「ヒートブルーコントラストレイヤリング」は16万5000円のオプション。
今回の試乗車のボディーカラー「ヒートブルーコントラストレイヤリング」は16万5000円のオプション。拡大
メッシュパターンのサイドグリルやバンパー下部のシルバーのあしらいが“Fスポーツ”ならではの特徴だ。
メッシュパターンのサイドグリルやバンパー下部のシルバーのあしらいが“Fスポーツ”ならではの特徴だ。拡大
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ディーゼルのようなガソリンエンジン

今回試乗したのはRX350の“Fスポーツ”だ。“バージョンL”はFFと4WDが選べるのに対して、“Fスポーツ”は4WDのみとなる。

同じレクサスのSUVでプラットフォームも同じGA-K、しかも多くのパワートレインがかぶっていることから、RXを“「NX」のサイズ拡大版”と捉えている好事家もおられるかもしれない。その認識がマトハズレとはいわないが、本質を射抜いているわけでもない。

たとえばプラットフォームは、RXのそれは正確には「改良版GA-K」である。リアサスペンションが新開発のマルチリンクとなり、あわせて各部の骨格配置と接合技術を見直して、とくにリアまわりの剛性を引き上げている。また、前後重量配分に配慮した軽量化も実施。その成果かどうなのか、新型RXの場合、“Fスポーツ”系グレードの車体にも、お約束だった「パフォーマンスダンパー」が備わらない。

このクルマに積まれる2.4リッターターボの「T24A-FTS」は、現在のトヨタ自社製ガソリンエンジンとしては、3.5リッターV6ターボと5リッターV8に次いで強力なユニットだ。設計の新しさ(2021年秋のNXに初搭載)や4気筒というコンパクトさを考えると、V8やV6より長生きして、最後まで使われるスポーツエンジンになる可能性もある。

このエンジンはさすが最新だけあって、2500rpmも回せば、2t近いRXの車体を軽々と走らせる。急な上り坂も苦にしない。4000rpm以上ではわずかにレスポンスが向上して、6000rpm付近までスムーズに回るがハイエンドで炸裂するタイプではない。

以前の試乗記で高平さんも指摘されていたが、このエンジンはざらざらしたノイズというか振動というか、とどのつまりは音があまり気持ちよくない。それもあって、箱根のようなワインディングロードでも、トップエンドまで回すよりは、多段ATを生かして3000~4000rpmをキープするのが一番心地よい。

最近はこういうディーゼルっぽいガソリンエンジンが増えていて、実際、無理に回さないほうが効率もいい。しかし、これが本当のトヨタ最後のスポーツエンジンとなるなら、もう少し高回転を心地よく味わいたい。それはもはや古臭い考え方でもあるのだけれど。

シャシーの基本は「NX」などと同じ「GA-K」。リアセクションを新規開発したほか、接合部の強化や軽量化が施されている。
シャシーの基本は「NX」などと同じ「GA-K」。リアセクションを新規開発したほか、接合部の強化や軽量化が施されている。拡大
ドアパネルとダッシュボードを立体的につなげることで包まれるような空間を目指している。随所に使われたソフトパッドは厚みがたっぷり。
ドアパネルとダッシュボードを立体的につなげることで包まれるような空間を目指している。随所に使われたソフトパッドは厚みがたっぷり。拡大
トーンを抑えた赤のカラーネームは「ダークローズ」。ヒーターだけでなくベンチレーションも標準装備。
トーンを抑えた赤のカラーネームは「ダークローズ」。ヒーターだけでなくベンチレーションも標準装備。拡大
フロントシートの薄型化によって先代モデルよりも後席の足元空間が広くなった。後席用にもヒーターとベンチレーションを完備する。
フロントシートの薄型化によって先代モデルよりも後席の足元空間が広くなった。後席用にもヒーターとベンチレーションを完備する。拡大
後席用のエアコン操作パネル。両脇にUSBタイプCポートが1つずつ備わっている。
後席用のエアコン操作パネル。両脇にUSBタイプCポートが1つずつ備わっている。拡大

4WD制御にカメラも活躍

RX350のパワートレインは、弟分ともいえる「NX350」と、エンジンチューンから変速機のギアレシオ、そして最終減速比まですべて共通だ。ただ、タイヤが大径化したことで実質的にはハイギアード化されており、車重も150kg以上も重くなっているので、動力性能が穏やかになっているのは体感的にも明らかである。

RX350に使われる4WDシステムも従来同様の油圧多板クラッチを使った電子制御オンデマンドタイプである。ただ、今回からより高精度に路面状況を把握するために、従来のタイヤ回転数センサーなどだけでなく、カメラ映像も制御に使うようになったのが新しい。オンデマンド型とはいえ完全にFFになることはなく、基本的に75:25~50:50の間でトルク配分するフルタイム式だ。

ディスプレイ上に4WDのトルク配分をリアルタイム表示することも可能となっている。それがどれくらい正確かはともかく、観察しているかぎりにおいては、発進時およびステアリング操作が入った瞬間には先回り的に50:50として次に備えるようだ。その後のトルク配分も緻密で、グリップが確保された路面での穏やかなアクセル操作なら、加速や旋回中でもフロント優勢のトルク配分として、穏やかで滑らかに転がるようにしている。

ギアレシオや重量、優秀な駆動システムもあってか、RX350(の少なくとも4WDモデル)は自然吸気換算で4.5リッターなみの最大トルクを完全に支配下に置いたシャシーファスターカーだ。旋回中にアクセルを強引に踏みつけるような無粋な運転をしても、テールを振り出すような姿勢にはならない。反対に強いアンダーステアにおちいることもなく、ねらったラインを冷静沈着にトレースする。

2.4リッター直4直噴ターボエンジンは最高出力279PSと最大トルク430N・mを発生する。
2.4リッター直4直噴ターボエンジンは最高出力279PSと最大トルク430N・mを発生する。拡大
変速機はトルコン式の8段AT。レシオはひと回り小さい「NX350」と変わらない。
変速機はトルコン式の8段AT。レシオはひと回り小さい「NX350」と変わらない。拡大
液晶式メーターは“Fスポーツ”専用デザイン。タコメーターのレッドゾーンは6300rpmから。
液晶式メーターは“Fスポーツ”専用デザイン。タコメーターのレッドゾーンは6300rpmから。拡大
ステアリングコラムの上にドライバーモニタリングカメラが備わる。信号を確認するために一瞬脇を見ただけで警告を発するなど、監視の目はなかなか厳しい。
ステアリングコラムの上にドライバーモニタリングカメラが備わる。信号を確認するために一瞬脇を見ただけで警告を発するなど、監視の目はなかなか厳しい。拡大

あくまでもゆったりと重厚

RX350の4WDはFFより車重が80kgほど重いが、500hや450h+と比較すれば100kg以上軽い。それもあって、この350ではRXの基本フィジカル性能が素直に味わえる。

RXというか、昨今のトヨタ、とくにレクサスで印象的なのは、利きそのものが正確で強力なうえに、すっきりとした手応えのステアリングフィールだ。山坂道で追い込むような運転をしても、軽やかで一定の手応えのまま、フル舵角付近までしっかりと追従してくれる。しかも、鮮明な接地感が伝わってくるので、自信をもって運転できる。

ボンネットのダブルロックやホイールのハブボルト締結に加えて、年を追うごとに車体強化技術を磨いてきた地道な努力が、いよいよ実を結びつつあるように思える。可変ダンパーの減衰が柔らかくなる「ノーマル」モードでオイタをしても、まるで姿勢が乱れないのはRXの基本フィジカルのおかげだろう。

いっぽう、ダンパーが引き締まる「スポーツ」モードにしても、ホットハッチ的な俊敏さを見せるNXとはちがい、あくまでゆったり重厚なクルーザー感が残る。飛ばし屋ドライバーには物足りないかもしれないが、RXというのは、もともと“SUVのクラウン?”ともいうべき、穏やかで少し緩めな味わいが心地よかった。その残り香が、ほかでもない“Fスポーツ”で感じられたことは、筆者のようなオッサンにはちょっとうれしい。

ところで、今回の試乗取材をおこなったのは2月上旬だった。早朝などはまだ凍える寒さで、この試乗車にオプション装着されていた「輻射ヒーター」はちょっと感動するくらい重宝した。このヒーターはデンソーが開発したもので、電気自動車の「bZ4X」で初めて商品化された。RXではグローブボックスリッド(助手席用)と、ステアリングコラム下面(運転席用)にメッシュのようなファブリックが張られることで、それと分かる。輻射ヒーターはシートヒーターとステアリングヒーターに続く第3の速熱アイテムとして、太ももやヒザを温めてくれる。いやはや、これでまた冷え性のオッサンは一度味わったら手放せなくなりそうだ。今後は間違いなく定番になるだろう。

(文=佐野弘宗/写真=峰 昌弘/編集=藤沢 勝)

4WDシステムは油圧多板クラッチを使ったオンデマンド式。前後トルク配分は75:25~50:50の間で制御される。
4WDシステムは油圧多板クラッチを使ったオンデマンド式。前後トルク配分は75:25~50:50の間で制御される。拡大
荷室の奥行きは1043mm。横幅は一番狭いところが1088mmで広いところが1410mm。
荷室の奥行きは1043mm。横幅は一番狭いところが1088mmで広いところが1410mm。拡大
ボディーが大きいだけあってラゲッジアンダースペースも広大だ。
ボディーが大きいだけあってラゲッジアンダースペースも広大だ。拡大
アルミペダルは“Fスポーツ”専用。ステアリングコラムの下にあるファブリックの部分が輻射ヒーター。
アルミペダルは“Fスポーツ”専用。ステアリングコラムの下にあるファブリックの部分が輻射ヒーター。拡大
タイヤ&ホイールは21インチ。オレンジのブレーキキャリパーはオプションで選べる。
タイヤ&ホイールは21インチ。オレンジのブレーキキャリパーはオプションで選べる。拡大

テスト車のデータ

レクサスRX350“Fスポーツ”

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4890×1920×1705mm
ホイールベース:2850mm
車重:1950kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.4リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:279PS(205kW)/6000rpm
最大トルク:430N・m(43.8kgf・m)/1700-3600rpm
タイヤ:(前)235/50R21 101W/(後)235/50R21 101W(ブリヂストン・アレンザ001)
燃費:11.2km/リッター(WLTCモード)
価格:706万円/テスト車=735万5900円
オプション装備:ボディーカラー<ヒートブルーコントラストレイヤリング>(16万5000円)/“Fスポーツ”専用オレンジブレーキキャリパー(4万4000円)/“Fスポーツ”専用ブラックルーフレール(3万3000円)/デジタルキー(3万3000円)/寒冷地仕様(2万0900円)

テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:2615km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:280.5km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:8.7km/リッター(車載燃費計計測値)

レクサスRX350“Fスポーツ”
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佐野 弘宗

佐野 弘宗

自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。

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