レクサスRX500h“Fスポーツ パフォーマンス”(4WD/6AT)
まだまだ通過点 2025.05.17 試乗記 「レクサスRX」の一部改良モデルが登場。そのポイントはごくマニアックであり、特に見た目の変化は最小限なのだが、ひとたび運転してみれば進化の幅の大きさに誰もが驚くことだろう。ターボハイブリッド搭載の「RX500h“Fスポーツ パフォーマンス”」の仕上がりをリポートする。たゆまぬ進化でクルマを磨く
2022年秋に登場したレクサスRXに、2回目の年次改良が加えられた。1回目は2023年夏、「RX350h」の追加と同時に、ワイヤレス充電やイルミネーションなどの装備に小改良を加えた程度のものだったが、今回は初めて項目が走行性能面にも及んでいる。たゆまぬ進化でクルマを磨いていくという「Always On」のスローガンにのっとっての施しというわけだ。
まず内装・装備的な面を挙げると、“Fスポーツ”系に白基調の内装色を追加し、“バージョンL”系には21インチタイヤ&ホイールの塗面に切削光輝加工を加えたフィニッシュを新たにオプションとして設定している。内装ではセンターコンソール下部に新たなイルミネーションを追加。全体輝度を高めることでより明るい印象に仕立てられた。これらは華美を好む昨今のグローバルな嗜好(しこう)に配慮したものでもあるのだろう。加えてメーターパネルは全車12.3インチの全面液晶となり、内燃機モデルの「RX350」にもアドバンストパークが標準装備となっている。
隙あらば走り込む
ドライビングダイナミクスについては4輪操舵システム=DRSの設定グレードを500hのみならず「450h+」とAWDの350hにも広げたほか、スポーツモード時の同相作動域を中速側にも広げて応答性を向上させている。また、450h+と350hはアクセル開度と駆動力の出方を見直したほか、500hについてはアクセルの踏み込み側だけでなく抜き側の減速応答性にも手を加えて、応答性を高めるとともに減速度の引き出しや姿勢づくりにもスムーズさを意識したチューニングが施された。これらの特性変化を織り込んだうえで、ダンパー減衰力や電動パワステの制御なども見直され、ドライブフィールはよりフラットで素直なものになっているという。
このAlways Onに少なからず寄与しているのが、トヨタの本社から30分程度のところにあるトヨタテクニカルセンター下山だ。2024年から全面運用されているここに、レクサスの開発機能のおおむねが集約されている。設計やデザイン、整備や実験というイン&アウトドアの現場が隣接しており、その価値を最大化するという目的に沿って、レクサスのクルマは上市後も隙あらばテストコースを走り込みながら切磋琢磨(せっさたくま)を重ねているようだ。このRXも市場のフィードバックに加えて走り込みで洗い出した課題などを擦り合わせ、熟成してきたという。
今も昔も北米が大票田
もとより現在のレクサスのラインナップでは最も多くの仕向け地で販売される、文字どおりの稼ぎ頭ゆえ、何をやるにしても失敗は許されない。そんなプレッシャーのなかで、RXはどういう方向性に舵を切ろうというのか。こと乗ってナンボの部分でいえば、なんなら話題喚起によるテコ入れを狙った喧伝(けんでん)もできなくはないわけだが、はたして、乗ってみれば直近までのモデルとの差は想像以上に大きかった。
乗用車系の車台を用いたSUVをプレミアムな一台へと引き上げる、そんな今日的なクルマづくりのパイオニアともいえるRXが最初にブレイクしたのは、レクサスにとって最大市場である北米だ。今でもRXの最大需要地であるその地の嗜好は、微に入り細をうがって織り込まれている。そんな視点で見れば、現行のRXも程よく柔らかで、速度域を問わずふわりとした柔らかなタッチが印象的な乗り味だった。往年のアメリカ車……というほど大げさではないが、ギャップを越える際の上屋の収まりの緩やかさが「NX」とはひと味違う持ち味だったように思う。
でも、このふんわり感はいまのレクサス的なコンフォートライドとはちょっとズレがあるという認識は、開発陣でも共有されていたという。それは上市後でなければきっちり走り込めない日本の公道で得られたフィードバックでもあったそうだ。今回の年次改良ではそれに対するキャリブレーションの意味合いもある。ちなみに今回の取材車はRX500h。“Fスポーツ パフォーマンス”の名が与えられた最もスポーティーな、そしてこの年次改良でかなり手が加えられたグレードだ。
フラットライド感が大幅アップ
動的質感の向上は走り始めからみてとれる。パワートレインのマネジメントと遮音対策の相乗効果もあってだろう、滑らかさや静かさやといったいわゆる高級車らしい要素がぐっと前に出てきた、そんな印象だ。そして30~40km/hと、速度を徐々に高めていくと走りの変化も表れ始める。凹凸を越える際の車体のバウンド量が減っていて、その収まりも早い。いわゆるフラットライド感がうんと高まっている、高速域になれば明らかにその変化が分かるだろう。この動きがクルマ全体の精度が高まったような印象にもつながっている。
上屋の動きから曖昧な要素が減ったぶん、ハンドリングの印象もより高精細なものとなっている。特にワインディングロードのような場面では後軸のDRSの効果がよりあらたかになり、つづら折れの切り返しなどの動きにもシャープさが高まった。フラットライド化によって乗員の動きが小さくなったぶん、御する自信も高まるわけで、ドライバーにはこの進化がクルマを手の内に収めているという安心感にもつながるだろう。
正直にいえば個人的には前型の、わずかに駄肉の感じられたルーズな乗り味も捨てがたい思いもある。でも、世間的にはこの清涼感や上質感は望まれる進化なのだと思うし、レクサスが常に指向しているすっきりとしたライドフィールにも合致している。ともあれ近ごろは欧州車でも簡略化されつつある、現行車の年次的な熟成というプロセスをしつこく続けているレクサスの姿勢はちょっと注目してもいいのではないだろうか。RXの変化をみるにつけ、そう思う。
(文=渡辺敏史/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝/車両協力=トヨタ自動車)
テスト車のデータ
レクサスRX500h“Fスポーツ パフォーマンス”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4890×1920×1700mm
ホイールベース:2850mm
車重:2110kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.4リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:6段AT
エンジン最高出力:275PS(202kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:460N・m(46.9kgf・m)/2000-3000rpm
フロントモーター最高出力:87PS(64kW)
フロントモーター最大トルク:292N・m(29.8kgf・m)
リアモーター最高出力:103PS(76kW)
リアモーター最大トルク:169N・m(17.2kgf・m)
システム最高出力:371PS(273kW)
タイヤ:(前)235/50R21 101W XL/(後)235/50R21 101W XL(ミシュラン・パイロットスポーツ4 SUV)
燃費:14.3km/リッター(WLTCモード)
価格:903万円/テスト車=973万7300円
オプション装備:ボディーカラー<ヒートブルーコントラストレイヤリング>(16万5000円)/オレンジブレーキキャリパー<フロント「LEXUS」ロゴ>(4万4000円)/235/50R21タイヤ&21×8J“Fスポーツ パフォーマンス”アルミホイール<ダークメタリック塗装>(11万円)/デジタルキー(3万3000円)/ルーフレール(3万3000円)/ふく射ヒーター<運転席・助手席>(2万2000円)/“マークレビンソン”プレミアムサラウンドサウンドシステム(27万9400円) /寒冷地仕様(2万0900円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:854km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(6)/山岳路(0)
テスト距離:155.2km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:8.8km/リッター(車載燃費計計測値)

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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