レクサスRX500h“Fスポーツ パフォーマンス”(4WD/6AT)
万能感に注意 2025.03.07 試乗記 「レクサスRX500h“Fスポーツ パフォーマンス”」で冬の信州へ。もくろみどおりにお目にかかれたのはあたり一面の銀世界。自慢の電動4WD「DIRECT4」を試すにはこれ以上ないシーンだ。細心の注意を払いつつ、山道を奥へ奥へと入り込んでみた。冬はやっぱり4WD……なのだが
冬場になるとがぜん注目されるのが4WD車である。もちろん雪道に強いからだが、4WDであれば無敵なわけではないし、そもそも4WDといってもその中身はさまざまである。センターデフやリアデフをロックできる「ランドクルーザー」のような本格的クロスカントリービークルから、ほとんど発進時のみリアモーターがサポートする「E-Four」のような簡便な4WDシステムもある。以前は「ちょっとだけ四駆」や「生活4WD」などと呼ばれたものである。
とはいえ、いかに現代の優れたスタッドレスを履いた4WDでもアイスバーンの上ではほとんどなすすべなしであり、またある程度以上の積雪になればどんな4WDでもお手上げだ。雪国のベテランドライバーは何をいまさらと笑うだろうが、そういう状況判断が苦手、というか驚くほど無関心な都会のドライバーが多いのも事実である。警報が出ているにもかかわらず、「こんなに降るとは思わなかった」と後から言い訳しても誰も同情してはくれない。
今冬は日本海側は大雪に見舞われているが、目指した信州・霧ヶ峰は意外に積雪量は少なく、道の上にはうっすらと乾いた新雪が載った状態。天気も良かったが、時折強い風が吹き抜け、実際に何度か地吹雪で視界が利かなくなる、いわゆるホワイトアウト状態にも遭遇した。そういう場合には少しでも安全な場所で見えるようになるのを待つしかない。ありったけのライトを点灯して他のクルマに見つけてもらえるようにすることは言うまでもない。
マイナーチェンジ版は間に合わず
今回の雪山行の相棒はレクサスRXのトップモデルたる500h“Fスポーツ パフォーマンス”である。現行型は2022年末に発売された5代目で、パワートレインもプラットフォームも一新されている。パワートレインは4種類で、T24A-FTS型2.4リッター4気筒ターボ+8段ATの「RX350」とA25A-FXS型2.5リッター4気筒+モーターのハイブリッド「RX350h」、同エンジンのプラグインハイブリッド「RX450h+」、そして今回の2.4リッターターボ+モーター2基+6段ATによるハイブリッドのRX500hである。ガソリンターボ車のRX350とハイブリッドのRX350hにはFWD/AWDが設定されるが、ターボハイブリッドとPHEVは後輪モーター駆動によるAWDモデルのみとなる。
山道を登る前にひとつお断りを。実はRXシリーズは2025年2月末にマイナーチェンジを受けた新仕様が発表されているが、今回の試乗車は従来型である。500hについてもスロットル制御の見直しや静粛性のさらなる改善などが施されているというが、それはまた後日ということでご了承いただきたい。
明らかなパフォーマンス志向
フロントに2.4リッター4気筒ターボとモーターを組み込んだ6段ATを積み、リアには高出力モーター「eAxle」を搭載するのがRXシリーズの最強力バージョンたる500h“Fスポーツ パフォーマンス”の特徴だ。お察しのとおり、このパワートレインはトヨタブランドでは「デュアルブーストハイブリッド」と呼ぶシステムで、「クラウン クロスオーバー」が搭載するものと基本的に同じである。エンジンは最高出力275PS/6000rpmと最大トルク460N・m/2000-3000rpmを発生。前後モーターはそれぞれ87PSと292N・m、103PSと169N・mを生み出し、すべてを合計したシステム最高出力は371PSという。クラウン クロスオーバーは349PSだったからさらに強力。0-100km/h加速は6.2秒という。
さらに前後アクスルが機械的につながっていない電動4WDながら、「DIRECT4」と称する(クラウンでは「E-Fourアドバンスト」と呼ぶ)4WDシステムが自慢で、500hは各種センサーからの情報をもとに100:0~20:80の間で前後の駆動力配分を最適制御するという。RXの他の「AWD」との違いはクラウンの場合と同様で、強力な水冷式リアモーターの駆動力を積極的にハンドリングやスタビリティーにも生かすことである。加えて500hにだけ後輪操舵の「DRS(ダイナミックリアステアリング)」が標準装備とされる(今回のマイナーチェンジでRX450h+とRX350hにも新たに設定された)。
DIRECT4の実力
これほどパフォーマンス志向の電動4WDハイブリッドゆえに、ちょっとだけでも雪の上で振り回してみたいと思うのが人情だ。トルコンではなくクラッチ式の切れのいいATと強力なリアモーター、さらにDRSのおかげで雪道でも非常に扱いやすく、しかもあえて余分なパワーを与えてもグイグイと押し出してくれる力強さと安定感は予想以上だった。
RXの4WD車には滑りやすい路面やデコボコのラフロードなどでの使用を前提にした「トレイル」モードも設けられており、タイヤの空転を抑えて最大限の駆動力を得るモードとされている。このモードを選ぶとある程度のホイールスピンを許容するようで、新雪路面ではなおさら扱いやすい。滑った瞬間にパワーが絞られると脱出できないこともあるからだが、ただし空転させて深く掘ってしまってはそれこそ脱出できなくなる。積雪量や雪質、傾斜などによって、こうすれば絶対大丈夫などという正解はない。4WDならば、さらにスタッドレスを履けばもう平気と単純に考えてはいけない。雪道は常に変化しているのである。
ひとつ惜しいのは、全開時ではなくてもエンジンからどこかざらついたフィーリングが伝わってくること。アクティブノイズコントロールも標準装備されているが、実用域でごく普通に加速するような場合でも、滑らかに緻密に回っているというより、どうしても若干ゴロゴロした感触がある。程度の差こそあれ、ダイナミックフォース系エンジンに共通するものだが、静粛でスムーズなRXでは余計に気になるのかもしれない。ちなみにこの点もマイナーチェンジモデルでは手当てしてあるという。
もうひとつ、強力なモーターを2基積むハイブリッドの割には燃費があまり芳しくない。WLTCモード燃費は14.4km/リッターというが、雪の山道を走ったとはいえ、ほとんどが高速道路の約500kmの行程をワンタンク(容量65リッター)でこなせないのは今どき、ちょっと寂しい。Fスポーツにパフォーマンスも乗っかっているとしても、レクサスならばなおさらである。
(文=高平高輝/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝/車両協力=トヨタ自動車)
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テスト車のデータ
レクサスRX500h“Fスポーツ パフォーマンス”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4890×1920×1700mm
ホイールベース:2850mm
車重:2140kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.4リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:6段AT
エンジン最高出力:275PS(202kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:460N・m(46.9kgf・m)/2000-3000rpm
フロントモーター最高出力:87PS(64kW)
フロントモーター最大トルク:292N・m(29.8kgf・m)
リアモーター最高出力:103PS(76kW)
リアモーター最大トルク:169N・m(17.2kgf・m)
システム最高出力:371PS(273kW)
タイヤ:(前)235/50R21 101Q/(後)235/50R21 101Q(ブリヂストン・ブリザックVRX3)
燃費:14.4km/リッター(WLTCモード)
価格:900万円/テスト車=936万6300円
オプション装備:デジタルキー(3万3000円)/ルーフレール<“Fスポーツ パフォーマンス”専用ブラック塗装>(3万3000円)/“マークレビンソン”プレミアムサラウンドサウンドシステム(27万9400円) /寒冷地仕様(2万0900円)
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:1万5860km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(7)/山岳路(2)
テスト距離:501.3km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:10.8km/リッター(車載燃費計計測値)

高平 高輝
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