【F1 2023】第2戦サウジアラビアGP続報:レッドブルのペレスが初ポール・トゥ・ウィン、フェルスタッペンは15番グリッドから2位
2023.03.20 自動車ニュース![]() |
2023年3月19日、サウジアラビアのジェッダ・コーニッシュ・サーキットで行われたF1世界選手権第2戦サウジアラビアGP。開幕戦に続きレッドブルの2台が圧倒的な速さで駆け抜けた。セルジオ・ペレスは1年前の雪辱を果たしポールから優勝、マックス・フェルスタッペンはトラブルで15番グリッドと後方スタートながら2位表彰台でレースを終えた。
![]() |
![]() |
暗雲が垂れ込めるフェラーリとメルセデス
開幕戦バーレーンGPでは、他を寄せつけないスピードで1-2フィニッシュを飾ったレッドブルと、台風の目として強豪を蹴散らし3位表彰台を勝ち取ったアストンマーティンのフェルナンド・アロンソが話題をさらったが、一方で手ひどい敗北を喫したライバル勢の頭上には暗雲が垂れ込めていた。
フェラーリの初戦は、カルロス・サインツJr.が4位、シャルル・ルクレールは3位走行中にパワーユニットのトラブルでリタイア。信頼性の問題に加え、レースペースでレッドブルにまったく歯が立たず、あまつさえアストンマーティンにも表彰台を奪われ、フレデリック・バスール新代表率いるスクーデリアにとっては荒れ模様の船出となった。
レース後、マラネロで車両コンセプトの責任者を務めていたデイビッド・サンチェスの離脱が明らかになると、大物を含めさらなる人材流出がうわさされ、何かと手厳しい地元イタリアのメディアを中心に騒がしい日々が続いた。またルクレールのパワーユニットは、開幕戦ですでに2基を使ってしまったコントロールエレクトロニクスを新しいものに交換せねばならず、第2戦にして早くも10グリッド降格のペナルティーを受けなければならなくなった。
「フェラーリSF-23」には予選での速さが認められたものの、事態がより深刻だったのはメルセデスのほう。開幕戦でルイス・ハミルトンは5位、ジョージ・ラッセル7位という残念な結果に終わったチームは、「W14」に大鉈(なた)を振るう決断を下した。ユニークな“ゼロポッド”コンセプトがどの程度改められるかはまだ見えてこないものの、コストと開発が制限されているなかでのマシンコンセプトの転換が、現在イギリスのファクトリーで行われているという。
2023年のマシンのトレンドは「レッドブル化」だ。開幕戦から絶好調のアストンマーティンは、昨年の第6戦スペインGPで“グリーン・レッドブル”とやゆされるほどレッドブルに酷似したマシンを投入し物議を醸したが、22戦で17勝を記録した2022年のチャンピオンマシンに、今年になって各車が近づいているように見えるのは不思議なことではない。
しかし、それでよしとすることができるのは中団チームまで。優勝とタイトルを狙うフェラーリやメルセデスは、すでに大きく先行するレッドブルに似せたところで、早々に勝てるわけがないことを知っているのである。
![]() |
ペレスが2年連続ポール、大本命フェルスタッペンにまさかのトラブル
今年で3回目を迎えた超高速ストリートコース、ジェッダでのレースウイークは、前戦に続きレッドブルの2台とアストンマーティンのアロンソがリードするかたちで始まった。
3回のプラクティスともトップタイムを記録した開幕戦ウィナー、マックス・フェルスタッペンがポールシッターの大本命。だが予選Q2中にドライブシャフトが壊れるというトラブルに見舞われたことで15位に沈んでしまった。
主役を1人欠いたQ3だったが、レッドブルに一日の長があったことは誰の目にも明らか。セルジオ・ペレスは、後続に0.155秒差をつけて自身2度目のポールポジションを獲得。ペレスにとってはサウジアラビアでの2年連続ポールとなった。
予選2位はフェラーリのルクレールとなるも、10グリッド降格ペナルティーにより12番手へダウン。代わってアロンソが2番グリッドにつけ、アストンマーティンは1959年以来となる2度目のフロントローからスタートすることとなった。
3番グリッドにはメルセデスのラッセルがつけたものの、マシンの扱いにくさに浮かない表情の僚友ハミルトンは7番手。4番グリッドにはフェラーリのサインツJr.、その後ろにアストンマーティンのランス・ストロール、そしてアルピーヌのエステバン・オコンが並んだ。マクラーレンの新人オスカー・ピアストリが初Q3進出で8番グリッドと健闘。アルピーヌのピエール・ガスリーが9番グリッド、そしてハースのニコ・ヒュルケンベルグが10番グリッドからレースに臨むこととなった。
![]() |
アロンソがスタートでトップに浮上
大勢がミディアムタイヤを履いて50周レースがスタートすると、アロンソがトップを奪い、2位ペレス、3位ラッセル、4位ストロール、5位オコンらが続いた。またグリッド後方の“追い上げ組”は、ソフトタイヤで蹴り出しの良かったルクレールが9位にジャンプアップ、フェルスタッペンは13位でオープニングラップを終えた。
抜群のスタートを切ったかに見えた首位アロンソだったが、スターティングポジションが規定位置よりずれていたことで5秒加算ペナルティーが言い渡された。そしてその知らせを無線で聞いた直後、4周目にペレスに1位の座を譲り2位へとダウンした。
タイヤ交換のためピットに入るマシンが出始めていた18周目、ストロールに「マシンを止めろ」と指示が飛び、アストンマーティンの1台がストップ。これでセーフティーカーが出動すると、トップのペレスをはじめ、2位アロンソ、3位ラッセル、そして4位にまで上がっていたフェルスタッペンらが続々とピットに入り、トップランナーはこぞってハードに交換した。
21周目、1位ペレス、2位アロンソ、3位ラッセル、4位フェルスタッペン、5位サインツJr.、6位ハミルトン、7位ルクレールといったオーダーでレース再開。次のラップには、ハードからミディアムに変えたハミルトンがサインツJr.を抜き5位へ、続いて23周目にはフェルスタッペンがラッセルをかわして3位へと駒を進めた。
![]() |
![]() |
ペレスが雪辱を果たしポール・トゥ・ウィン、アロンソ100回目の表彰台
15番手から3位まで挽回したフェルスタッペンの勢いは止まらず、25周目にはアロンソもやすやすとオーバーテイクし2位へ。次なる標的は同じマシンを駆る、5.6秒前方のペレスだった。ファステストラップを更新し勝利を目指すフェルスタッペンに対し、ペレスも最速タイムで応戦。2台のレッドブルは、後続集団よりも1秒以上速い異次元のペースでリードを着々と広げるのだった。
とはいえ、レッドブルに不安がなかったわけではなかった。ペレスとの差を4.4秒まで詰めたフェルスタッペンは、無線で「ハイスピードでおかしな音がする」と伝え、またペレスもブレーキペダルの違和感を訴えていたのだ。2台はほとんど同じタイムを刻みながらゴールを目指し、そしてファイナルラップになると、それまでペレスが保持していたファステストラップをフェルスタッペンが塗り替えチェッカードフラッグが振られた。
昨年のサウジアラビアGPでは、ピット作戦がうまくいかず4位に終わっていたペレス。1年前の雪辱を果たす今シーズン1勝目は、彼にとって初めてのポール・トゥ・ウィンであり、またフェルスタッペンを2位に従えての初めての勝利である。
ファイナルラップでフェルスタッペンがペレスからファステストラップを奪ったことで、チャンピオンシップではフェルスタッペンが1点差でリードを保つことができた。ライバル不在の今季のレッドブルにあって、今後も2人がしのぎを削るようになれば、チーム内の緊張感は徐々に高まっていくに違いない。
2戦連続で3位表彰台を獲得したかに見えたアロンソは、むしろレース後のほうが忙しかったかもしれない。セーフティーカー中のピットインで最初の5秒ペナルティーを受けたのだが、その際、ペナルティーの5秒を待たずしてマシンを持ち上げるジャッキが触れてしまったことが違反とされ、レースリザルトに10秒が加算されたアロンソは4位に降格した。
しかし納得がいかなかったアストンマーティンは、スチュワードに裁定の見直しを求めた。ゴールから数時間後、レギュレーション上の表現で曖昧な箇所があったとして10秒加算ペナルティーは取り消され、アロンソには通算100回目のポディウムが返ってきたのだった。
開幕から2戦が終わり、レッドブル一強、アロンソ&アストンマーティンの台頭、そしてメルセデスとフェラーリが後塵(こうじん)を拝すという戦力図が見えてきた2023年シーズン。次の第3戦オーストラリアGP決勝は、4月2日に行われる。
(文=bg)