【F1 2023】第7戦モナコGP続報:レッドブル&フェルスタッペンは雨にも負けず
2023.05.29 自動車ニュース![]() |
2023年5月28日、モナコにあるモンテカルロ市街地コースで行われたF1世界選手権第7戦モナコGP。突然の雨もものともせず、マックス・フェルスタッペンのレッドブルはポールポジションから真っ先にチェッカードフラッグをくぐり抜けたのだった。
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ホンダ復帰、メルセデスの改良型マシン、アルファタウリの今後
5月19日から行われる予定だった第6戦エミリア・ロマーニャGPが水害により急きょ中止となり、欧州に舞台を移してのトリプルヘッダーはモナコGP、スペインGPの2連戦に短縮。とはいえ、つかの間の休息とはいかないところが多忙極まるF1の世界である。
既報のとおり5月24日には、ホンダがF1に“復帰”し、2026年から「アストンマーティン・ホンダ」として参戦することが発表された。正式には2021年シーズンを最後にGPから撤退しているホンダだが、その後も2025年までホンダ・レーシング(HRC)がレッドブルへのパワーユニット供給を続けることになっている。2021年、2022年とマックス・フェルスタッペンが2年連続ドライバーズタイトル獲得、レッドブルも今季2連覇まっしぐらと常勝軍団としての地位を築いているホンダ。そのノウハウをベースに、新たなパートナーと頂点を目指すことになったのはファンにとって朗報だろう。
メルセデスは、今季型マシン「W14」の大幅アップグレード版を急造し、モナコGPで実戦投入してきた。特徴的だった“ゼロポッド”と呼ばれる極小サイドポッドを捨て去り、よりコンベンショナルなフォルムをまとって登場。さらにダウンフォースの発生源となるフロアや、フロントサスペンションといった主要パーツを一新してきたのだが、コスト制限という制約を受けての開発となり、現有のアーキテクチャーを切り貼りしたような苦労の跡が見て取れるものだった。
アルファタウリは、レッドブル内で検討されていた「チーム身売り計画」が完全になくなったことが、レッドブルのモータースポーツ・アドバイザー、ヘルムート・マルコへのインタビュー記事で明らかになった。レッドブルとパワーユニット部門であるレッドブル・パワートレインズがイギリスを本拠としているのに対し、アルファタウリはイタリアはファエンツァにファクトリーを置いており、今後リソースをなるべくイギリスに寄せていく計画は実施される見込みという。
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予選での激闘を制し、フェルスタッペンがモナコ初ポール
オーバーテイクがほぼ不可能なモナコにあって、レースで勝つためには予選順位こそが最重要。予選Q3では、コーナーというコーナー、壁という壁にヤスリをかけるような熾烈(しれつ)なアタックの応酬が続いた。
セッション残り3分30秒、アルピーヌのエステバン・オコンがフェルスタッペンからトップタイムを奪うと、今度は母国で気を吐くフェラーリのシャルル・ルクレールが最速に。続いてアストンマーティンのフェルナンド・アロンソが、本人いわく「野獣のように攻めた」ドライビングで暫定1位に立った。
しんがりはフェルスタッペンだ。3.3kmしかない最短コースの前半2つのセクターで後れをとっていたレッドブルのエースは、ウォールにタイヤを擦りながら最後の最後で逆転に成功し、モナコで初のポール。今季3回目、通算23回目の予選P1を獲得した。チームメイトのセルジオ・ペレスはQ1でクラッシュし最後尾となり、レッドブル内で明暗が分かれた。
アロンソは0.084秒という僅差で2位。ルクレールは3位となったものの、ランド・ノリスのマクラーレンの進路を妨害したとして3グリッド降格ペナルティーが科され、6番グリッドに落ちた。代わって大健闘のオコンが3番グリッドに繰り上がり、その後ろにフェラーリのカルロス・サインツJr.、メルセデスのルイス・ハミルトンが続いた。
アルピーヌのもう1台、ピエール・ガスリーは7位、メルセデスのジョージ・ラッセルが8位、そして今シーズン2度目のQ3進出を果たしたアルファタウリの角田裕毅が堂々9位につけた。ノリスは、Q2で壁に当てたマシンを修復し10位だった。
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フェルスタッペン対アロンソ、異なるタイヤでの戦い
難攻不落のストリートコースでの戦いは、優勝を争うことになるフェルスタッペンがミディアム、アロンソはハードと異なるタイヤを選んでスタートしたことが、その後のレース展開に影響を与えることになった。
78周レースのスタートでは、フェルスタッペンがアロンソを従えてターン1へ。以下3位オコン、4位サインツJr.、5位ハミルトン、6位ルクレールと各車順当にオープニングラップを終えた。
トップを走るフェルスタッペンは、2位アロンソに対して10周して3.2秒、20周を過ぎると10秒以上のギャップを築き、その後タイヤの一時的パフォーマンスダウンと周回遅れのマシンによりその差は縮まるも、再び10秒まで間隔が開いた。
レッドブルとフェルスタッペンにとっての問題は、雨の予報だった。タイヤメーカーのピレリによれば、ミディアムタイヤのライフは34周程度とされたが、一方で雨雲がコースに向かってくる可能性を考えれば、レッドブルとしてはなるべくタイヤ交換を遅らせたかった。この時点で、より長く走れるハードを履くアロンソは有利な立場にいたのだ。
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勝敗を分けた2つの要因
フェルスタッペンとアロンソの、勝敗を分けた要因は2つ。まずは、フェルスタッペンがミディアムタイヤを長く持たせることができたこと。40周を過ぎても大幅にタイムを落とすことなく、結局56周までこのタイヤをキープできたのは大きかった。
そしてもうひとつの要因は、アストンマーティン側の判断ミスだった。50周目にはコースの一部にポツポツと雨粒が落ち始め、やがて雨脚が強まりだすと、55周目にアロンソがピットに飛び込み、ハードからミディアムを選択しコースに戻った。だが、ドライに賭けたアストンマーティンの読みははずれ、コースはびしょぬれの状態となり、たまらず次のラップで雨用のインターミディエイトに履き替えることとなった。
フェルスタッペンが1ストップでインターミディエイトを装着したことを考えれば、2回のピットストップを要したアロンソは無駄足を踏んだことになる。その後、首位を堅持するフェルスタッペンはアロンソをラップごとに突き放し、最終的に27秒もの大差をつけてチェッカードフラッグを受けるのだった。
突然の雨にも負けなかったフェルスタッペンが6戦して4勝。チームメイトでドライバーズチャンピオンシップ2位のペレスが16位で無得点となったことで、ポイント上のリードは39点と一気に開くこととなった。
アロンソは勝利こそ逃したものの、2014年ハンガリーGP以来となる2位という好成績に上機嫌の様子。そして3位に入ったオコンも、自身3度目の表彰台にはちきれんばかりの笑顔を見せていた。
次の第8戦スペインGP決勝は、6月4日に行われる。
(文=bg)