【F1 2023】第15戦イタリアGP続報:フェルスタッペンが前人未到の10連勝、レッドブル今季6回目の1-2で15連勝の大記録達成

2023.09.04 自動車ニュース bg
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F1第15戦イタリアGPを制したレッドブルのマックス・フェルスタッペン。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)
F1第15戦イタリアGPを制したレッドブルのマックス・フェルスタッペン。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)拡大

2023年9月3日、イタリアのアウトドローモ・ナツィオナーレ・モンツァで行われたF1世界選手権第15戦イタリアGP。地元イタリアの超高速コースでフェラーリが奮起するも、レッドブルの追い上げにはなすすべもなかった。

ポールポジションからレースをリードするフェラーリのカルロス・サインツJr.(写真左)に揺さぶりをかけるフェルスタッペン(同右)。超高速コースで行われるイタリアGPでは、ストレートで速いフェラーリに前を取られることが多かったレッドブル。予選2位だったフェルスタッペンは、スタートからサインツJr.を追い回し、フェラーリのタイヤが音をあげ始めたところでトラクションを効かせオーバーテイクに成功、以降はいつもの一人旅となった。これで5月のマイアミGPから10連勝を飾り最多連勝記録を樹立。「ペースも、タイヤのマネジメントも良かった。ただフェラーリはずば抜けたトップスピードを持っていたね」とはレース後の弁。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)
ポールポジションからレースをリードするフェラーリのカルロス・サインツJr.(写真左)に揺さぶりをかけるフェルスタッペン(同右)。超高速コースで行われるイタリアGPでは、ストレートで速いフェラーリに前を取られることが多かったレッドブル。予選2位だったフェルスタッペンは、スタートからサインツJr.を追い回し、フェラーリのタイヤが音をあげ始めたところでトラクションを効かせオーバーテイクに成功、以降はいつもの一人旅となった。これで5月のマイアミGPから10連勝を飾り最多連勝記録を樹立。「ペースも、タイヤのマネジメントも良かった。ただフェラーリはずば抜けたトップスピードを持っていたね」とはレース後の弁。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)拡大
レッドブルのセルジオ・ペレス(写真)は2位でゴール。プラクティス中に派手なスピン&コースアウト、加えてオイル漏れのトラブルにより走行時間が削られ、予選では5位と微妙なポジション。それでもレースになると、ストレートで速いフェラーリの2台を相手にコース上で果敢に攻め、レッドブルにとって今季6度目となる1-2に貢献した。絶好調なフェルスタッペンの陰に隠れ不振が続いていたペレスだったが、この2位でドライバーズランキング3位のフェルナンド・アロンソに49点もの大差をつけることができた。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)
レッドブルのセルジオ・ペレス(写真)は2位でゴール。プラクティス中に派手なスピン&コースアウト、加えてオイル漏れのトラブルにより走行時間が削られ、予選では5位と微妙なポジション。それでもレースになると、ストレートで速いフェラーリの2台を相手にコース上で果敢に攻め、レッドブルにとって今季6度目となる1-2に貢献した。絶好調なフェルスタッペンの陰に隠れ不振が続いていたペレスだったが、この2位でドライバーズランキング3位のフェルナンド・アロンソに49点もの大差をつけることができた。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)拡大
サインツJr.(写真)は、フェラーリの地元で3位表彰台を獲得した。金曜日に29歳になったばかりのスペイン人ドライバーは、翌日の予選で今季初のポールポジションを獲得。「SF-23」は、持ち前のストレートスピードで今季最強のレッドブルと互角にポールを争い、フェルスタッペンを0.013秒差で打ち破った。跳ね馬を操りイタリアでポールを獲る喜びは格別だったようで、「フィニッシュラインを越えてから鳥肌が立ちっぱなしだった」と興奮ぎみに語っていた。レースでも熱狂的なファン“ティフォシ”の前で奮闘しスタートからトップを守るも、タイヤを酷使して2位に転落。さらにペレスにも抜かれてしまったがポディウムは守り切った。僚友シャルル・ルクレールは予選3位から4位フィニッシュ。この結果、フェラーリはアストンマーティンを抜きコンストラクターズランキング3位に躍り出た。(Photo=Ferrari)
サインツJr.(写真)は、フェラーリの地元で3位表彰台を獲得した。金曜日に29歳になったばかりのスペイン人ドライバーは、翌日の予選で今季初のポールポジションを獲得。「SF-23」は、持ち前のストレートスピードで今季最強のレッドブルと互角にポールを争い、フェルスタッペンを0.013秒差で打ち破った。跳ね馬を操りイタリアでポールを獲る喜びは格別だったようで、「フィニッシュラインを越えてから鳥肌が立ちっぱなしだった」と興奮ぎみに語っていた。レースでも熱狂的なファン“ティフォシ”の前で奮闘しスタートからトップを守るも、タイヤを酷使して2位に転落。さらにペレスにも抜かれてしまったがポディウムは守り切った。僚友シャルル・ルクレールは予選3位から4位フィニッシュ。この結果、フェラーリはアストンマーティンを抜きコンストラクターズランキング3位に躍り出た。(Photo=Ferrari)拡大

メルセデスは2人の契約を延長、レッドブルは……

秋となれば、来シーズンのシートに誰が座るかといった話がちらほら出てくるもの。前戦オランダGPの週末には、ハースがニコ・ヒュルケンベルグとケビン・マグヌッセンの残留を発表した。F1参戦8年目、アメリカを本拠とする異色のチームは今季13戦で11点を獲得し、昨季と同じコンストラクターズランキング8位につけている。予選は速いがレースで失速というマシンの悪癖に苦戦するも、ベテラン2人の安定感を買って契約更新となった。

メルセデスは、イタリアGP前の8月31日、今季で切れる予定だったルイス・ハミルトンとの契約を2年延長すると発表。さらにジョージ・ラッセルとの契約も1年延長し、両名とも2025年までシルバーアローのチームに在籍することが明らかになった。2025年には40歳を迎える史上最多勝ドライバー、ハミルトンにとって、このチームで13年間も戦うことを意味しており、前人未到の8度目のタイトルへの意欲はついえていないことがうかがえる。レッドブル一強できている今季も、ハミルトンとラッセルによる力走でランキング2位につけているのだから両者残留もしごく自然な流れだった。

一方で移籍(?)にまつわる奇妙なうわさ話も。ランス・ストロールがレーシングドライバーからプロテニスプレーヤーに転向を考えているというのだ。これは本人により否定されているが、アストンマーティンのオーナーの子息という、恵まれているようで難しいポジションにいるストロールは、八面六臂(ろっぴ)の活躍を見せるチームメイトのフェルナンド・アロンソの陰に隠れ、ポイントでもアロンソの121点後方のランキング9位に沈んでいた。開幕直前に負った骨折の影響もあるだろうが、ドライバーとしての限界を感じたのではないかという臆測もあってか、パドックすずめのかっこうの餌となってしまったようだ。

そしてもうひとつ妙な話といえば、レッドブルにおけるセルジオ・ペレスの立場だ。オランダGP後、チーム代表のクリスチャン・ホーナーが「ペレスは2024年もレッドブルをドライブする」と周知の事実をあらためてアナウンスしなければならなかったのには、メキシコ人ドライバーの不振があった。オランダGP予選では、同じマシンを駆るマックス・フェルスタッペンに1周で1.3秒ものタイム差をつけられ、またレースでも突然の雨でコースアウト、ピットレーンのスピード違反もあって表彰台から転げ落ち4位に終わっていた。

フェルスタッペンと同じ最速マシンをドライブしながら、コンスタントに2位をキープできないのはまずい。さらにレッドブルの重鎮でドライバー人事に多大な影響を及ぼすとされるアドバイザー、ヘルムート・マルコが「(ペレスの残留は)100%確実なものではない」などと歯に衣(きぬ)着せぬ発言をすることで、度々火に油が注がれることになり、状況は混迷するのだった。

F1ドライバーのシートは、世界にたった20しかない。何が起きてもおかしくない壮絶な椅子取りゲームに、そもそも100%の確実はないのかもしれない。

メルセデス勢は、ジョージ・ラッセル(写真)が5位、ルイス・ハミルトンは6位だった。超高速コースのモンツァではドラッグをいかに減らすかがポイントとなるものの、ドラッグが多いことで知られるメルセデスはトップスピードで伸び悩んだ。予選ではフェラーリ、レッドブルのポール争いに絡めず、ラッセルがなんとか健闘し4位を獲得したが、ハミルトンは「マシンのスイートスポットを見つけられなかった」とし8位に沈んだ。レースではラッセルが1つポジションを落としてゴール、ハミルトンは41周目にオスカー・ピアストリのマクラーレンと接触しながらも6位まで順位を上げることができた。(Photo=Mercedes)
メルセデス勢は、ジョージ・ラッセル(写真)が5位、ルイス・ハミルトンは6位だった。超高速コースのモンツァではドラッグをいかに減らすかがポイントとなるものの、ドラッグが多いことで知られるメルセデスはトップスピードで伸び悩んだ。予選ではフェラーリ、レッドブルのポール争いに絡めず、ラッセルがなんとか健闘し4位を獲得したが、ハミルトンは「マシンのスイートスポットを見つけられなかった」とし8位に沈んだ。レースではラッセルが1つポジションを落としてゴール、ハミルトンは41周目にオスカー・ピアストリのマクラーレンと接触しながらも6位まで順位を上げることができた。(Photo=Mercedes)拡大

三つどもえのポール争いは、フェラーリのサインツJr.に軍配

母国オランダでセバスチャン・ベッテルの最多9連勝という記録に並んだフェルスタッペンは、いよいよ10連勝という新記録を目指す。

今季ここまで全勝中のレッドブルがどこでも速いオールラウンダーなマシンなら、モンツァのような超高速サーキットを得意とするのは、フェラーリやウィリアムズといったストレートスピードにたけたマシンだった。

第12戦ハンガリーGPに次ぐ試験的なタイヤ割り当て「ATA」が実施された今回、予選ではフェラーリの2台が躍動し、フェルスタッペンを含めた3台による緊迫したポール争いは僅差で決着することとなった。

0.013秒差で最速タイムを記録したのはサインツJr.。今季初、通算4回目のポールポジションを奪い、フェラーリの熱狂的なファンからの声援を前に「鳥肌が立った」と歓喜の表情を浮かべた。この最古参チームにとってはモンツァで通算23回目のポール。単一サーキットでの最多ポール記録を更新したことになる。そして2位はフェルスタッペン、3位には0.067秒差でルクレールがつけた。

メルセデスのラッセルが4位、レッドブルのペレスは5位。ウィリアムズのアレクサンダー・アルボンは今季6回目のQ3進出で6位だった。マクラーレン勢は、オスカー・ピアストリが7位、8位だったメルセデスのハミルトンを間に挟み、ランド・ノリスは9位。トップ10最後はアストンマーティンのフェルナンド・アロンソだった。

ウィリアムズのアレクサンダー・アルボン(写真)は今季最高タイの7位入賞。超高速コースで行われるイタリアGPは、ウィリアムズの武器であるストレートスピードで勝負ができた。予選では今季6回目のQ3進出で6位。レースではポジションを1つ落としたものの、マクラーレンのランド・ノリスらをしっかりと抑え切り2戦連続入賞を果たした。僚友ローガン・サージェントは予選15位、レースでは13位。(Photo=Williams)
ウィリアムズのアレクサンダー・アルボン(写真)は今季最高タイの7位入賞。超高速コースで行われるイタリアGPは、ウィリアムズの武器であるストレートスピードで勝負ができた。予選では今季6回目のQ3進出で6位。レースではポジションを1つ落としたものの、マクラーレンのランド・ノリスらをしっかりと抑え切り2戦連続入賞を果たした。僚友ローガン・サージェントは予選15位、レースでは13位。(Photo=Williams)拡大

サインツJr.、必死にフェルスタッペンを抑えるも……

1988年にマクラーレン・ホンダが打ち立てた大記録「16戦15勝」のうち、唯一の黒星がついたレースが、フェラーリが1-2フィニッシュを決めたイタリアGPだった。35年後の今年、連勝街道をひた走るレッドブル&フェルスタッペンの行く手をスクーデリアが阻むことになれば、まさに歴史の再来となったはずなのだが、筋書きはそうはならなかった。

フォーメーションラップ中、11番グリッドだった角田裕毅のアルファタウリから白煙があがりコース脇にストップ。マシン撤去のためスタートは一時中断され、当初より約20分遅れて2周減の51周レースが始まった。

サインツJr.が首位を守り、2位フェルスタッペン、3位ルクレール、4位ラッセル、5位ペレスと上位陣は順当にスタート。フェルスタッペンとしては早めにサインツJr.を抜きたかったものの、直線がとにかく速いフェラーリがなかなかそれを許してくれなかった。サインツJr.は、0.5秒前後でフェルスタッペンをなんとか抑えていたが、防戦がたたってタイヤがスライドを始めると、15周目にトップの座をフェルスタッペンに譲ることとなった。

2位に落ちたサインツJr.はリアタイヤのマネジメントに苦しみ、3位ルクレールに背中をつつかれる始末。その間に1位フェルスタッペンはリードを着々と広げ、そして4位に上がっていたペレスも、前を走る赤い編隊に迫ってくるのだった。

アストンマーティンのフェルナンド・アロンソ(写真)は9位でフィニッシュ。今季すべての予選でQ3に進出しているアロンソは、イタリアGPでは10位と今シーズンワーストを記録。レースでも目立つことはなかったものの、意外にもアロンソにとってはイタリアGP過去10年で2度目の入賞となった。チームメイトのランス・ストロールは予選20位、レースでは16位完走。アストンマーティンは、コンストラクターズランキングでフェラーリに3位の座を奪われ、11点差の4位に後退した。(Photo=Aston Martin)
アストンマーティンのフェルナンド・アロンソ(写真)は9位でフィニッシュ。今季すべての予選でQ3に進出しているアロンソは、イタリアGPでは10位と今シーズンワーストを記録。レースでも目立つことはなかったものの、意外にもアロンソにとってはイタリアGP過去10年で2度目の入賞となった。チームメイトのランス・ストロールは予選20位、レースでは16位完走。アストンマーティンは、コンストラクターズランキングでフェラーリに3位の座を奪われ、11点差の4位に後退した。(Photo=Aston Martin)拡大
予選11位から入賞を目指そうとしていた角田裕毅のアルファタウリが、フォーメーションラップ中に白煙をあげストップ。チームの地元であるイタリアGPは、ダニエル・リカルドのけがが治るまでドライブすることが決まったリアム・ローソン(写真)のみの出走となった。ぶっつけ本番の前戦オランダGPとは違い、今回は3回のプラクティスをみっちり走り、角田とともにQ2進出で12位。レースではスタートでつまずくも11位でチェッカードフラッグを受けることができた。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)
予選11位から入賞を目指そうとしていた角田裕毅のアルファタウリが、フォーメーションラップ中に白煙をあげストップ。チームの地元であるイタリアGPは、ダニエル・リカルドのけがが治るまでドライブすることが決まったリアム・ローソン(写真)のみの出走となった。ぶっつけ本番の前戦オランダGPとは違い、今回は3回のプラクティスをみっちり走り、角田とともにQ2進出で12位。レースではスタートでつまずくも11位でチェッカードフラッグを受けることができた。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)拡大

フェルスタッペン10連勝、レッドブル15連勝という大記録

1ストップ作戦が大勢を占めた今回、タイヤが悲鳴をあげていたサインツJr.が20周目にピットに飛び込みミディアムタイヤからハードに交換。次のラップにはフェルスタッペンとルクレール、22周目にはペレスがハードに履き替え、結果1位フェルスタッペン、2位サインツJr.、3位ルクレール、4位ペレス、5位ラッセルとトップ5の順位は変わらなかった。以降はコース上での戦いを、ゴールまでいかにタイヤをセーブできるかというマネジメントとともに行わなければならなくなった。

レース後半の主役は、4位を走っていたペレスだ。ストレートで飛ばす2台のフェラーリに、ダウンフォースを効かせずば抜けた速さで最終コーナーを駆け抜けるレッドブルが勝負を挑む。32周目、ペレスがようやくルクレールをオーバーテイクし3位へと上がると、今度は2位サインツJr.とのギャップをどんどんと削り取っていった。

残り10周、ペレスはサインツJr.の真後ろにつけるも、サインツJr.も頑として道を譲らない。ここはイタリア、フェラーリの地元だと奮起する29歳になったばかりのスペイン人ドライバーは、しかし46周目に白旗をあげることになり、これでレッドブルは1-2となった。

3位に落ちたサインツJr.は、背後で虎視眈々(たんたん)とポディウムを狙っていた僚友ルクレールと丁々発止とやりあうことに。「リスクを負いすぎるなよ」とチームからくぎを刺されている割に、2台は激しいつばぜり合いを繰り広げ、最終的にサインツJr.に軍配があがった。

フェルスタッペンがついに前人未到の10連勝を達成。レッドブルは昨季最終戦から15連勝と、こちらも大記録を打ち立てたことになる。どちらも歴史的な快挙であるが、この金字塔を1-2フィニッシュで飾った点が重要だ。レッドブルとしては年間最多の6回目の1-2であり、これこそがペレスに期待されているパフォーマンスなのだ。さらにドライバーズランキング2位のペレスは、3位アロンソに今季最多49点ものギャップを築いたことになり、チーム初のドライバーズランキング1-2も現実味を帯びてきた。

フェラーリは、熱狂的な地元のファン“ティフォシ”の前で勝利することはできなかったが、サインツJr.による力走と3位表彰台、そしてルクレールの4位により、最強チームに一泡吹かせることができたことは収穫だった。

秋のイタリアを後にしたF1サーカスは、残り8戦のフライアウェイへ。次の第16戦シンガポールGP決勝は、9月17日に行われる。

(文=bg) 

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