【F1 2023】第15戦イタリアGP続報:フェルスタッペンが前人未到の10連勝、レッドブル今季6回目の1-2で15連勝の大記録達成
2023.09.04 自動車ニュース![]() |
2023年9月3日、イタリアのアウトドローモ・ナツィオナーレ・モンツァで行われたF1世界選手権第15戦イタリアGP。地元イタリアの超高速コースでフェラーリが奮起するも、レッドブルの追い上げにはなすすべもなかった。
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メルセデスは2人の契約を延長、レッドブルは……
秋となれば、来シーズンのシートに誰が座るかといった話がちらほら出てくるもの。前戦オランダGPの週末には、ハースがニコ・ヒュルケンベルグとケビン・マグヌッセンの残留を発表した。F1参戦8年目、アメリカを本拠とする異色のチームは今季13戦で11点を獲得し、昨季と同じコンストラクターズランキング8位につけている。予選は速いがレースで失速というマシンの悪癖に苦戦するも、ベテラン2人の安定感を買って契約更新となった。
メルセデスは、イタリアGP前の8月31日、今季で切れる予定だったルイス・ハミルトンとの契約を2年延長すると発表。さらにジョージ・ラッセルとの契約も1年延長し、両名とも2025年までシルバーアローのチームに在籍することが明らかになった。2025年には40歳を迎える史上最多勝ドライバー、ハミルトンにとって、このチームで13年間も戦うことを意味しており、前人未到の8度目のタイトルへの意欲はついえていないことがうかがえる。レッドブル一強できている今季も、ハミルトンとラッセルによる力走でランキング2位につけているのだから両者残留もしごく自然な流れだった。
一方で移籍(?)にまつわる奇妙なうわさ話も。ランス・ストロールがレーシングドライバーからプロテニスプレーヤーに転向を考えているというのだ。これは本人により否定されているが、アストンマーティンのオーナーの子息という、恵まれているようで難しいポジションにいるストロールは、八面六臂(ろっぴ)の活躍を見せるチームメイトのフェルナンド・アロンソの陰に隠れ、ポイントでもアロンソの121点後方のランキング9位に沈んでいた。開幕直前に負った骨折の影響もあるだろうが、ドライバーとしての限界を感じたのではないかという臆測もあってか、パドックすずめのかっこうの餌となってしまったようだ。
そしてもうひとつ妙な話といえば、レッドブルにおけるセルジオ・ペレスの立場だ。オランダGP後、チーム代表のクリスチャン・ホーナーが「ペレスは2024年もレッドブルをドライブする」と周知の事実をあらためてアナウンスしなければならなかったのには、メキシコ人ドライバーの不振があった。オランダGP予選では、同じマシンを駆るマックス・フェルスタッペンに1周で1.3秒ものタイム差をつけられ、またレースでも突然の雨でコースアウト、ピットレーンのスピード違反もあって表彰台から転げ落ち4位に終わっていた。
フェルスタッペンと同じ最速マシンをドライブしながら、コンスタントに2位をキープできないのはまずい。さらにレッドブルの重鎮でドライバー人事に多大な影響を及ぼすとされるアドバイザー、ヘルムート・マルコが「(ペレスの残留は)100%確実なものではない」などと歯に衣(きぬ)着せぬ発言をすることで、度々火に油が注がれることになり、状況は混迷するのだった。
F1ドライバーのシートは、世界にたった20しかない。何が起きてもおかしくない壮絶な椅子取りゲームに、そもそも100%の確実はないのかもしれない。
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三つどもえのポール争いは、フェラーリのサインツJr.に軍配
母国オランダでセバスチャン・ベッテルの最多9連勝という記録に並んだフェルスタッペンは、いよいよ10連勝という新記録を目指す。
今季ここまで全勝中のレッドブルがどこでも速いオールラウンダーなマシンなら、モンツァのような超高速サーキットを得意とするのは、フェラーリやウィリアムズといったストレートスピードにたけたマシンだった。
第12戦ハンガリーGPに次ぐ試験的なタイヤ割り当て「ATA」が実施された今回、予選ではフェラーリの2台が躍動し、フェルスタッペンを含めた3台による緊迫したポール争いは僅差で決着することとなった。
0.013秒差で最速タイムを記録したのはサインツJr.。今季初、通算4回目のポールポジションを奪い、フェラーリの熱狂的なファンからの声援を前に「鳥肌が立った」と歓喜の表情を浮かべた。この最古参チームにとってはモンツァで通算23回目のポール。単一サーキットでの最多ポール記録を更新したことになる。そして2位はフェルスタッペン、3位には0.067秒差でルクレールがつけた。
メルセデスのラッセルが4位、レッドブルのペレスは5位。ウィリアムズのアレクサンダー・アルボンは今季6回目のQ3進出で6位だった。マクラーレン勢は、オスカー・ピアストリが7位、8位だったメルセデスのハミルトンを間に挟み、ランド・ノリスは9位。トップ10最後はアストンマーティンのフェルナンド・アロンソだった。
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サインツJr.、必死にフェルスタッペンを抑えるも……
1988年にマクラーレン・ホンダが打ち立てた大記録「16戦15勝」のうち、唯一の黒星がついたレースが、フェラーリが1-2フィニッシュを決めたイタリアGPだった。35年後の今年、連勝街道をひた走るレッドブル&フェルスタッペンの行く手をスクーデリアが阻むことになれば、まさに歴史の再来となったはずなのだが、筋書きはそうはならなかった。
フォーメーションラップ中、11番グリッドだった角田裕毅のアルファタウリから白煙があがりコース脇にストップ。マシン撤去のためスタートは一時中断され、当初より約20分遅れて2周減の51周レースが始まった。
サインツJr.が首位を守り、2位フェルスタッペン、3位ルクレール、4位ラッセル、5位ペレスと上位陣は順当にスタート。フェルスタッペンとしては早めにサインツJr.を抜きたかったものの、直線がとにかく速いフェラーリがなかなかそれを許してくれなかった。サインツJr.は、0.5秒前後でフェルスタッペンをなんとか抑えていたが、防戦がたたってタイヤがスライドを始めると、15周目にトップの座をフェルスタッペンに譲ることとなった。
2位に落ちたサインツJr.はリアタイヤのマネジメントに苦しみ、3位ルクレールに背中をつつかれる始末。その間に1位フェルスタッペンはリードを着々と広げ、そして4位に上がっていたペレスも、前を走る赤い編隊に迫ってくるのだった。
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フェルスタッペン10連勝、レッドブル15連勝という大記録
1ストップ作戦が大勢を占めた今回、タイヤが悲鳴をあげていたサインツJr.が20周目にピットに飛び込みミディアムタイヤからハードに交換。次のラップにはフェルスタッペンとルクレール、22周目にはペレスがハードに履き替え、結果1位フェルスタッペン、2位サインツJr.、3位ルクレール、4位ペレス、5位ラッセルとトップ5の順位は変わらなかった。以降はコース上での戦いを、ゴールまでいかにタイヤをセーブできるかというマネジメントとともに行わなければならなくなった。
レース後半の主役は、4位を走っていたペレスだ。ストレートで飛ばす2台のフェラーリに、ダウンフォースを効かせずば抜けた速さで最終コーナーを駆け抜けるレッドブルが勝負を挑む。32周目、ペレスがようやくルクレールをオーバーテイクし3位へと上がると、今度は2位サインツJr.とのギャップをどんどんと削り取っていった。
残り10周、ペレスはサインツJr.の真後ろにつけるも、サインツJr.も頑として道を譲らない。ここはイタリア、フェラーリの地元だと奮起する29歳になったばかりのスペイン人ドライバーは、しかし46周目に白旗をあげることになり、これでレッドブルは1-2となった。
3位に落ちたサインツJr.は、背後で虎視眈々(たんたん)とポディウムを狙っていた僚友ルクレールと丁々発止とやりあうことに。「リスクを負いすぎるなよ」とチームからくぎを刺されている割に、2台は激しいつばぜり合いを繰り広げ、最終的にサインツJr.に軍配があがった。
フェルスタッペンがついに前人未到の10連勝を達成。レッドブルは昨季最終戦から15連勝と、こちらも大記録を打ち立てたことになる。どちらも歴史的な快挙であるが、この金字塔を1-2フィニッシュで飾った点が重要だ。レッドブルとしては年間最多の6回目の1-2であり、これこそがペレスに期待されているパフォーマンスなのだ。さらにドライバーズランキング2位のペレスは、3位アロンソに今季最多49点ものギャップを築いたことになり、チーム初のドライバーズランキング1-2も現実味を帯びてきた。
フェラーリは、熱狂的な地元のファン“ティフォシ”の前で勝利することはできなかったが、サインツJr.による力走と3位表彰台、そしてルクレールの4位により、最強チームに一泡吹かせることができたことは収穫だった。
秋のイタリアを後にしたF1サーカスは、残り8戦のフライアウェイへ。次の第16戦シンガポールGP決勝は、9月17日に行われる。
(文=bg)