スズキVストローム250SX(6MT)
選べるシアワセ 2023.11.25 試乗記 スズキのアドベンチャーバイク「Vストローム」シリーズに、ニューフェイスの「Vストローム250SX」が登場。油冷エンジンを搭載した新しいデュアルパーパスの走り味は? 同じ250ccクラスの「Vストローム250」とは何が違うの? 実際に乗って確かめた。意外なことにオンロードが得意
スズキの単気筒アドベンチャー、Vストローム250SXで走り始めると、妙な言い方になるが、先輩モデルたる2気筒モデルの「Vストローム250」に初めて乗ったときと第一印象が同じだ。想像していたよりずっとオンロードが得意。
2気筒のVストロームは、パラレルツインを積むスポーツバイク「GSX250R」の着せ替えモデル……というと、スイマセン、語弊がありますが、適度に冒険のイメージをまといながら、オンロードでの楽ちんツーリングに強みを発揮する旅バイクに仕上がっていた。無理のないライディングポジションを採りながら、一方で「やるときゃヤル」側面も持ち合わせている。
新しいSXは、フロントタイヤがVストローム250の17インチから19インチに大きくなったから、多少なりともライドフィールの「オフ」テイストが強まったかと思いきや、当方の勝手な予想を裏切って、しっかりと硬めの足まわり。ハンドリングも鷹揚(おうよう)なところはなく、なかなかシャープ。スポーティーなライドフィールに驚かされる。
といっても、そもそもの個人的な基準がいかにも優しい「ヤマハ・セロー250」なのでいまひとつ説得力に欠けるが、大径タイヤを履くVストローム250SXは、未舗装路での走破性アップもさることながら、むしろ路面の荒れた道に頓着せず走り続けられるインド産ツアラーと考えるとわかりやすい、と自らを納得させた。
ちなみに2気筒のVストローム250は中国生産である。世界の2大二輪マーケットのアドベンチャーモデルを、販売規模で見れば吹けば飛ぶような日本市場でどちらも選べるのだから、皮肉にしてゼータクなハナシだ。スズキに感謝。
 拡大 | 
		
 拡大 | 
		
 拡大 | 
		
 拡大 | 
		
足つきにはご用心
ピストンが1本少ないSXの価格は、2気筒より7万7000円安い56万9800円。それでいてABSはもちろん、フロントスクリーン、リアキャリア、さらには防風面でもありがたいナックルガード、エンジンのフロント下部を保護するアンダーカウルまで装備するのだからうれしいかぎり。ヘッドランプ、リアのコンビネーションランプはLEDタイプ。メーターはフル液晶ディスプレイ、スマホ世代には必須のUSBソケットもインパネサイドに設けられる。旅好きバイカーとして、あとはETC車載器と必要に応じてハードケースを用意するくらいか。
サイドスタンドを払って車体を起こすと、軽い。車重は2気筒モデルより27kg減じた164kg。ただしシート高は35mm高い835mmなので、身長165cm足短めテスターの場合、両足つま先で地面をツンツンする感じ。厚いゴムで上面を覆われた立派なフットレストが、ちょうど足をおろす経路にあるのが少々気になる。きたるツーリングに危機感を覚えるほどではないが、道路横方向の傾斜と工事箇所には気をつけようと心に刻む。
「油冷」の単語が一部ファンの心を揺さぶったパワーソースは、いうまでもなくかつてのレーシィーなユニットとは無縁の、空冷エンジンの主にヘッド周りにオイルを循環させて冷却の一助とする純然たる実用エンジンだ。シングルカムながら4バルブのヘッドメカニズムを持ち、248ccの排気量から、最高出力はパラレルツインの先輩を2PS上回る26ps/9300rpm、最大トルクは22N・m/7300rpmを発生する。
いまひとつ感興の湧かない濁音系のサウンドを響かせながら軽く回っていく。ギアは乾いたフィールでスコスコと入る。高い視線とアップライトな姿勢がアドベンチャーらしい。
 拡大 | 
		
 拡大 | 
		
 拡大 | 
		
 拡大 | 
		
 拡大 | 
		
 拡大 | 
		
すみ分けはできている
新世代の油冷ユニットは、街なかで多用する4000rpm前後をはじめ、総じてトルク豊かで使いやすいエンジンだ。一方で、積極的にスロットルを開けて駆り立てると、がぜんアグレッシブに、間髪入れずに強めの駆動力を供給して、ライダーを喜ばせる。オフ派、林道好きなら、シングルらしい細身のボディーにまたがりながら、2気筒モデルとは違った意味で「やったろうかい!」と盛り上がることでしょう。
もう少し穏やかにロングツーリングをこなしたいと感じる向きには2気筒のVストローム。野趣を残したライドフィールを面白いと捉えるなら単気筒。多少なりとも試乗する機会を得られるならば、この2台は意外と迷わないのではないかと思う。
(文=青木禎之/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2180×880×1135mm
ホイールベース:1440mm
シート高:835mm
重量:164kg
エンジン:249cc 油冷4ストローク単気筒SOHC 4バルブ
最高出力:26PS(19kW)/9300rpm
最大トルク:22N・m(2.2kgf・m)/7300rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:34.5km/リッター(WMTCモード)/44.5km/リッター(国土交通省届出値)
価格:56万9800円
◇◆こちらの記事も読まれています◆◇
◆スズキが「Vストローム250SX」を日本に導入 軽快な250ccクラスの新型アドベンチャー
◆スズキVストローム250(6MT)【レビュー】

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
- 
  
  2025ワークスチューニンググループ合同試乗会(前編:STI/NISMO編)【試乗記】 2025.11.1 メーカー系チューナーのNISMO、STI、TRD、無限が、合同で試乗会を開催! まずはSTIの用意した「スバルWRX S4」「S210」、次いでNISMOの「ノート オーラNISMO」と2013年型「日産GT-R」に試乗。ベクトルの大きく異なる、両ブランドの最新の取り組みに触れた。
 - 
  
  シトロエンC3ハイブリッド マックス(FF/6AT)【試乗記】 2025.10.31 フルモデルチェンジで第4世代に進化したシトロエンのエントリーモデル「C3」が上陸。最新のシトロエンデザインにSUV風味が加わったエクステリアデザインと、マイルドハイブリッドパワートレインの採用がトピックである。その仕上がりやいかに。
 - 
  
  メルセデス・マイバッハSL680モノグラムシリーズ(4WD/9AT)【海外試乗記】 2025.10.29 メルセデス・ベンツが擁するラグジュアリーブランド、メルセデス・マイバッハのラインナップに、オープン2シーターの「SLモノグラムシリーズ」が登場。ラグジュアリーブランドのドライバーズカーならではの走りと特別感を、イタリアよりリポートする。
 - 
  
  ルノー・ルーテシア エスプリ アルピーヌ フルハイブリッドE-TECH(FF/4AT+2AT)【試乗記】 2025.10.28 マイナーチェンジでフロントフェイスが大きく変わった「ルーテシア」が上陸。ルノーを代表する欧州Bセグメントの本格フルハイブリッド車は、いかなる進化を遂げたのか。新グレードにして唯一のラインナップとなる「エスプリ アルピーヌ」の仕上がりを報告する。
 - 
  
  メルセデスAMG S63 Eパフォーマンス(4WD/9AT)【試乗記】 2025.10.27 この妖しいグリーンに包まれた「メルセデスAMG S63 Eパフォーマンス」をご覧いただきたい。実は最新のSクラスではカラーラインナップが一気に拡大。内装でも外装でも赤や青、黄色などが選べるようになっているのだ。浮世離れした世界の居心地を味わってみた。
 
- 
              
                
                          NEW
                    “安心・安全”をより長く 2人のプロが「ブリヂストン・ブリザックWZ-1」を語る
2025.11.42025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>ブリヂストンが、持てる最新のタイヤ技術を投入して誕生させた、新しいスタッドレスタイヤ「ブリザックWZ-1(ダブルゼットワン)」。高い氷雪上性能とサステナビリティーを併せ持つ新製品の魅力に、2人のプロフェッショナルが迫る。 - 
              
                
                        
                          NEW
                    2025ワークスチューニンググループ合同試乗会(後編:無限/TRD編)【試乗記】
2025.11.4試乗記メーカー系チューナーのNISMO、STI、TRD、無限が、合同で試乗会を開催! 彼らの持ち込んだマシンのなかから、無限の手が加わった「ホンダ・プレリュード」と「シビック タイプR」、TRDの手になる「トヨタ86」「ハイラックス」等の走りをリポートする。 - 
              
                
                          NEW
                    「新車のにおい」の正体は?
2025.11.4あの多田哲哉のクルマQ&Aかつて新品のクルマからただよっていた「新車のにおい」の正体は? 近年の新車ではにおうことがなくなった理由も含め、トヨタでさまざまなクルマを開発してきた多田哲哉さんが解説する。 - 
              
                
                        
                    第322回:機関車みたいで最高!
2025.11.3カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。2年に一度開催される自動車の祭典が「ジャパンモビリティショー」。BYDの軽BEVからレクサスの6輪車、そしてホンダのロケットまで、2025年開催の会場で、見て感じたことをカーマニア目線で報告する。 - 
              
                
                    現行型でも中古車価格は半額以下! いま本気で狙いたい特選ユーズドカーはこれだ!
2025.11.3デイリーコラム「クルマが高い。ましてや輸入車なんて……」と諦めるのはまだ早い。中古車に目を向ければ、“現行型”でも半値以下のモデルは存在する。今回は、なかでも狙い目といえる、お買い得な車種をピックアップしてみよう。 - 
              
                
                        
                    スズキ・アルト ラパン ハイブリッドX(FF/CVT)【試乗記】
2025.11.3試乗記スズキの「アルト ラパン」がマイナーチェンジ。新しいフロントマスクでかわいらしさに磨きがかかっただけでなく、なんとパワーユニットも刷新しているというから見逃せない。上位グレード「ハイブリッドX」の仕上がりをリポートする。 
      










































    
    
    
    
    
                          
                        
                          
                        
                    
                        
                    
                  
                  
                  
                  
                        
                    