ホンダN-ONE e:G(FWD)
ないものねだりしない人に 2025.12.17 試乗記 「ホンダN-ONE e:」の一充電走行距離(WLTCモード)は295kmとされている。額面どおりに走れないのは当然ながら、電気自動車(BEV)にとっては過酷な時期である真冬のロングドライブではどれくらいが目安になるのだろうか。「e:G」グレードの仕上がりとともにリポートする。寒さと上り坂
最初の「日産リーフ」が発売されたころは走りだす前にいろいろと身構えたもんだ、と思い出す。途中の充電場所はどこか(そもそもちゃんと稼働しているか)、どれだけ余分に時間を見積もればいいか、などなど考えることが多かった。今はずいぶんと気楽だが、それでも何しろBEVだし、万一のことを考えて余裕を持って早朝5時に自宅を出発した。
その時点でN-ONE e:のバッテリー残量は82%、航続可能距離は182kmと表示されていた。集合場所の山梨県の河口湖までは中央高速経由でおよそ100kmなので、どう見ても十分だろう、と走りだしてすぐにもう一度メーターに目を向けると航続可能距離は126kmと出ている。何かの間違いかと思ったら、エアコンをオンにすると一気に残りレンジが減ることが分かった。そういうこともある。なるべく使わないことにするが、都内の外気温9℃が中央高速を下って行くうちにどんどん下がり正直寒い。
とはいえ航続距離を減らしたくないのでシートヒーター(グレード問わず標準装備で本当によかった)をときどきオンにするだけで(もちろん最初から「エコ」モード)寒さに耐えながら、80km/hを上限におとなしく走る。にもかかわらず、八王子を過ぎて上り坂にかかると予想以上に数字が少なくなり、そこからは残り距離をにらみながら70km/h以下に抑えて走った。富士河口湖町役場前に設置されている24時間使用可の50kW出力充電器の前に止めたときの残り航続距離は1km、借用時(満充電)からのトリップは130kmだった。なかなかスリリングである。
当てになるかどうかは考え方次第
やっぱりBEVは当てにならない、ということをここでお伝えしたいのではない。「日産サクラ」(180km)の1.5倍以上という、295km(WLTCモード)の一充電走行距離を誇っていても(それをそのままうのみにする人はいないはずだが)、現実世界では状況次第でこのように七掛けどころか半分以下しか走れない、ということもある。
試乗ゆえにギリギリまで粘ってみたが、本来なら途中のSAで充電すればいいだけのこと。コミューターとしてつくられた軽BEVなのだから、そのように使うのが本筋である。とはいえ、どのぐらい当てにするか、当てにできるのかは、依然として使う側の考え方の問題だ。必要な知識と準備を備え、使い方を見きわめられる人ならば、現在のBEVはもう他人に薦めても問題ないレベルといえる(無論よく知らない他人は除く)。
装備が充実した「e:L」グレード(急速充電ポートとホンダコネクト対応の9インチディスプレイが備わることが機能面での主な違い)で車両価格は319万8800円、「e:G」グレードで269万9400円と軽自動車としてはもちろん高価だが、現在は国からの補助金57.4万円(自家用の場合)が当てにできるので、だいぶ壁は低くなるはずだ。東京都の場合はさらに50万円(給電機能がない場合は40万円)の補助金が上乗せされるのでもっと身近になる。なぜ東京都だけ他の自治体からねたまれるほどの補助金が出るのか? という疑問は残るが、それはまた別の問題だ。
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街なかベスト?
軽自動車ゆえにフロントに搭載されたモーターの最高出力は64PSだが、最大トルクは162N・mとエンジン車よりもずっとたくましく(ターボ車でも100N・mぐらいだ)、スタートで故意に深く踏み込めば、キュキュッとホイールスピンするほど強力で、街なかはもちろん、普通に高速道路を走るぶんにはまったく不足なく扱いやすい。私はアクセルペダルを戻した場合に惰性走行するほうが好みだが、完全停止まで使える「シングルペダルコントロール」のボタンも「ECON」スイッチと並んでセンターコンソールに設けられている。
どうしても重量がかさむBEV(この試乗車の車重は1030kg)はその重さを支えるためにサスペンションは硬くなりがちだが、N-ONE e:は思ったよりずっと柔らかいのが意外だった。おそらくは滑らかな乗り心地を狙ってのことだとは思うが、不安になるほどではないものの、オープンロードを走るともう少しフラット感がほしい。コミューターとしての扱いやすさにフォーカスしているのだろうが、フル乗車の場合がちょっと心配でもある。
ガソリン車と変わらない室内
新世代のBEVであると感じさせるのがパッケージングである。軽自動車であるからツルリ滑らかなボディーの外寸は動かしようがないが(全高も一般の機械式駐車場に対応する1545mm)、その限られたサイズのなかで無理なくBEVを成立させている。容量29.6kWhの薄型リチウムイオンバッテリー(もちろん加温・冷却システム付き)は車体中央の床下部分、前席下から後席足元にかけて搭載されており、おかげで荷室はガソリン車と変わらず、さらに他のホンダ軽自動車と同様、ダイブダウンもチップアップ機能も備わっている。後席のフロアの高さもほとんど気にならないレベルで、これなら乗り込んでもBEVと気づかない人も多いはずだ。スペースを稼ぐためにハイトワゴンボディーを選ばなくともここまでできる好例である。
上述したようにe:Lグレードとe:Gグレードの違いは、フロントグリル部分に急速充電ポートが備わるか否か(Gでもオプションで装備可能)、9インチディスプレイの有無、そしてアルミホイールぐらいだが、使用頻度と行動範囲がほぼ決まっている人ならば、さらには自宅の普通充電で十分賄えるという人ならば(急速充電は50kWまで、普通充電は6kWまで対応)、シンプルなe:Gグレードで問題なく使いこなせるのではないだろうか。ああもちろん、以前のようにサッサと諦めるのではなく、長くつくり続けてくれるという前提ではあるけれど。
(文=高平高輝/写真=山本佳吾/編集=藤沢 勝/車両協力=本田技研工業)
テスト車のデータ
ホンダN-ONE e:G
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3395×1475×1545mm
ホイールベース:2520mm
車重:1030kg
駆動方式:FWD
モーター:交流同期電動機
最高出力:64PS(47kW)
最大トルク:162N・m(16.5kgf・m)
タイヤ:(前)155/65R14 75S/(後)155/65R14 75S(ヨコハマ・ブルーアース)
一充電走行距離:295km(WLTCモード)
交流電力量消費率:105Wh/km(WLTCモード)
価格:269万9400円/テスト車=293万1150円
オプション装備:ボディーカラー<フィヨルドミストパール>(3万3000円)/急速充電ポート(6万0500円)/デジタルミラー型ドライブレコーダー(3万9800円) ※以下、販売店オプション ETC2.0車載器<発話タイプ>(3万0800円)/ETC2.0車載器取り付けアタッチメント(5500円)/フロアマット プレミアム(2万9700円)/ドライブレコーダー<スマートフォン連動>(3万2450円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:2395km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:277.9km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:6.7km/kWh(車載電費計計測値)

高平 高輝
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