狭いニッポン、そんなに急いでどこへ行く? 今尾直樹の2023年私的10大ニュース+1
2023.12.27 デイリーコラム「レクサスRZ」は「ポルシェ911」に似ていた
2023年ももうすぐおしまい。ということで、恒例の私的10大ニュースである。この一年を1月から私的に振り返ってみたい。
1月は20日に「シトロエンGS」に埼玉の秋ヶ瀬公園周辺で、1月31日に京都でロータスの「エラン」「エラン2+2」「セブン」、それに「ヨーロッパ」に乗る機会を得た。どれもメチャクチャよかった。
2月は15日に袖ヶ浦フォレストレースウェイで「レクサスRZ」に試乗した。このときも思ったけれど、7月に借り出して公道で試して確信した。「ポルシェ911」(997型)に似ている、と。低重心で、振動のない動力を積み、後ろから押し出されるような推進力を感じる。電気自動車(EV)はモーターの制御次第でどうにでもなる。と言われるけれど、なるほど、そうなのだ、と初めて実感した。
RZのチーフエンジニアは現在のレクサスのプレジデントの渡辺 剛さんで、911の信奉者であることを公言している。その渡辺さんと9月9日、軽井沢でお話しする機会があった。前後、2つのモーターを持つRZ、どうせだったらリアのモーターをフロントより強力にすべきではないですか? と質問したら、いや、やらないといけない。とお答えになったので驚愕(きょうがく)した。
男らしい「Cタイプ」と「Dタイプ」
4月9日、房総半島の館山の近くにつくられたザ・マガリガワ・クラブで930型の「ポルシェ911ターボ」を走らせる、という僥倖(ぎょうこう)に恵まれた。ガソリン自動車の馬化はすでに始まっている。
4月19日、ウチの近所の江戸川でサイクリングしていたら、ゾウガメみたいな大きなカメに乳母車みたいなのを引っ張らせているご婦人を見かけた。ゾウガメって飼ってもいいのでしょうか?
5月31日、ジャガーの「Cタイプ」と「Dタイプ」のコンティニュエーションに富士スピードウェイのショートサーキットで乗る機会を得た。Cタイプしか運転できなかったけれど、助手席は両方体験した。男らしい。という形容詞がこれほど似合うクルマはない。Cタイプは150万ポンド、Dタイプは175万ポンドで、およそ3億円。値段も男らしい。
6月3日、ウチの奥さんの「ホンダN-ONE」で私の田舎の岐阜まで法事に行った。今年はN-ONEで出かける機会がたくさんあった。茨城県の笠間までホタルを2回見物に行ったし、新潟で開かれるツールド妻有という自転車のイベントにも行った。ホンダによると、軽自動車をファーストカーとして使うひとは増えており、したがって高速道路の利用も増えている。ウチの奥さんのN-ONEは初代の自然吸気なので、120km/hがせいぜいで、高速スタビリティーにも欠ける。高速道路は常磐自動車でも一部110km/h区間になっており、軽にも120km/h巡航が求められつつある。ま、それでも、そろそろ20年になる私の愛車のルノーより信頼性が高い。軽はニッポンの国民車としてますます増えるだろう。
来たれ文春砲
6月14日、webCGの取材で千葉県柏市にあるスタートアップ企業Turing(チューリング)に赴いた。史上最強の将棋AI「ポナンザ」の開発者の山本一成さんが起こした、いまはまだ創業期にあるこのEVのベンチャーは、生成AIに自動車のスタイリングから全自動運転まで丸投げしよう、と考えている。いくら将棋が強い藤井聡太八冠にだって自動車はつくれない。とは思うけれど、つくるのはAIだから、要らぬ心配かもしれない。自動運転レベル2を搭載したチューリングのEVは限定100台で、2025年の発売を目指す。テスラを追い越す。そんなミッションを掲げる若者たちがわがニッポンにいる。そのことが頼もしい。
7月10日、本田博俊さんにインタビューした。お話はメチャクチャ面白かった。このとき、博俊さんは数年前に起きた脱税事件について、あれは冤罪(えんざい)で、自分は潔白である、と主張された。相手は国家権力だからなぁ……と縮こまる私だった。『週刊文春』で取り上げてはいただけまいか。
7月はシトロエンの「アミ6」&「アミ8」とホンダの「Sシリーズ」、すなわち「S500」「S600」「S600クーペ」「S800」「S800M」に乗る機会があった。どれもメチャクチャよかった。
9月3日、ツールド妻有に参加した。新潟県の十日町あたりの山のなかを自転車で走るイベントで、70km、90km、120kmと3つのコースのうち、一番短い70kmコースだけれど、今回、4度目にして初めて後半の山場である棚田を上り切ることができた。自転車のギアを山道向きに、タイヤとホイールを細くて軽いものに交換するという対策がハマった。ギア比とタイヤ&ホイールは大事だ。
そんなに急いでどこへ行く(←私)
10月10日、都内の築地虎ノ門トンネルを築地方面から都心方向に向けてEVで気持ちよく走行中、左コーナーを抜けた右前方で赤いランプが光った。後日、築地署に出頭した。44km/hオーバー。罰金は1km/hあたり2000円がメドだそうである。移動式オービスは予告なし。しかも、いかにも飛ばせそうなところに設置してある。このようなやり方は正義といえるのか?
築地署の警官によると、都内の交通事故は増えているという。確かに警視庁の発表だと、2023年1月~11月の事故発生件数は前年比+1114件、死者数は117人で+1人、負傷者数は3万1693人で、+1427人とある。注意一秒、ケガ一生。狭いニッポン、そんなに急いでどこへ行く。だからといって、移動式オービスの増加を許していてよいのか?
10大ニュースなのに+1になってしまった……。一年を通して振り返ると、今年は遅ればせながら、韓流ドラマにハマった。きっかけは『愛の不時着』である。出てくるクルマが北朝鮮の高官用も含めて、全部、ジャガーとレンジローバーなところもよかった。『ムービング』も『スタートアップ』も『バガボンド』も『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』も『ヴィジランテ』も夢中になった。嫌なことは全部、韓流を見て忘れた。読者諸兄もいろいろあったことでしょう。ピンチのときはチャンカンマン(ちょっと待って)とケンチャナヨ(大丈夫)のスピリットで乗り切ろう!
それではよいお年を。
(文=今尾直樹/写真=今尾直樹、トヨタ自動車/編集=藤沢 勝)
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今尾 直樹
1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。
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