事業の内容は? グループ内での役割は? 報告書と新人事にみる“新生ダイハツ”の姿
2024.02.23 デイリーコラム報告書に書かれた“ダイハツ改革”の中身
2023年の自動車業界で、ビッグモーターとともに“不正”という残念な話題を提供することになったダイハツ工業が、2024年2月9日に国土交通省へ再発防止に向けた報告書を提出した。
二度と不正を起こさないために、「風土改革」「経営改革」「モノづくり・コトづくり改革」からなる「三つの誓い」を定め、開発や法規認証での不正防止策に加え、経営および組織風土の問題に関しても抜本的な施策を進めていくとしている。また再発防止策の実行や継続にあたっては、弁護士などの外部専門家を含むメンバーで構成される「『三つの誓い』改革推進部(仮称)」がサポートするとともに、四半期ごとに国土交通省へ報告し、内容を公表していくという。
報告書は30ページにわたるので、巻末の一覧表がわかりやすかった。個人的に目に留まったのは、内部通報制度の改善、従来比で約1.4倍の開発スケジュールの確保、法規認証室人員の6~7倍の増員などの項目だ。いずれも、2023年12月20日に第三者委員会の調査報告書(参照)で指摘された、「ミラ イース」の成功が契機となった、開発の短期化、安全性能担当部署の人員削減、「できないが言えない」企業風土などに対する、真摯(しんし)な回答だと思えた。
それとは対照的に評価をしづらいのが、親会社のトヨタ自動車とともに2024年2月13日に発表した、再生へ向けた新体制だ(参照)。松林 淳会長と奥平総一郎社長は同年3月1日付で退任。会長のポストは廃止し、社長には現在トヨタで中南米本部の本部長を務める井上雅宏氏が就任。副社長はダイハツ出身の星加宏昌氏が引き続き務めるとともに、レクサス電動化推進PJT担当でトヨタ自動車九州の副社長を兼務する桑田正規氏が新たに就任することになった。また非常勤取締役として、認証実務の経験が豊富なトヨタ カスタマーファースト推進本部の柳 景子氏も就任することになっている。
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改革のもとでダイハツの役割はどう変わる?
読者のなかには、このタイミングで人事のニュースというと、2024年1月に日本航空(JAL)が発表した、鳥取三津子氏の次期社長内定を思い出す人も多いはずだ。JAL初の女性社長ということで話題になったそちらと比べると、ダイハツの人事はいまひとつわかりづらい。僕を含めて多くの人は、南米からやってきた井上次期社長がどういう人かくわしく知らないわけで、どういう反応をしていいかわからないというのが正直なところだろう。
さらに言えば、鳥取氏はJALに吸収された東亜国内航空の客室乗務員出身。ダイハツの現場で働いていた人がトヨタの社長になるようなものだ。トヨタとダイハツも、今回の新体制で「主権を現場に取り戻す」ことを掲げているが、新社長は現職の奥平氏に続き、ダイハツではなくトヨタからの人選になった。それに、軽自動車を中心とするダイハツのユーザーは女性の比率が高いと想像できるわけで、たとえば現場で頑張ってきた女性を抜てきしたほうが、これまでとの違いを鮮明に打ち出せたのではないだろうか。
もっとも、井上次期社長も長年中南米事業の構造改革に取り組んできており、現場のメンバーと徹底的に対話をして物事を前に進めてきたリーダーだという。南米の人々と日本人とではマインドが違うだろうから、控えめな日本人の気質をくみ取った対話になってほしい。
改革の中身に話を戻すと、新人事の発表会でトヨタの佐藤恒治社長は、「ダイハツは軽自動車に軸を置いた会社と定め、海外事業については企画・開発・生産をトヨタからの委託に変更する方向で、詳細の検討を進めていく」と語った。こうなると、2017年1月に発足した「新興国小型車カンパニー」がどうなるのか気になる。そこでは新興国向け小型車の製品開発は、基本的にダイハツが担当することになっていたからだ。トヨタもからむ話なので、新年度に具体的な話があるのかもしれない。
ただ、次期社長が販売畑、新任の副社長が生産畑の人というのは、トヨタの佐藤社長の方針と一致する。現社長の奥平氏は「トヨタ・カローラ」の開発責任者などを含めた人物だが、そうしたメンバーが新しい人事に見られないことからも、小型車の開発に関わる業務は少なくなり、生産と販売に注力した会社になることが想像できる。
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ダイハツならではのモビリティーの提案に期待
ほかに今後の事業に関連する発表としては、ダイハツがトヨタ、日野自動車、いすゞ自動車、スズキとともに参画していたCJPT(コマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジーズ)からの脱退を申し入れ、承認されたことが挙げられる。CJPTは、輸送業界が抱える課題の解決やカーボンニュートラル社会の実現を目的に設立された合弁会社だが、日野がエンジン不正で除名させられるなど、いささか落ち着かなかった。とはいえ、その日野も約1年後に復帰したという前例がある。CJPTはトヨタとダイハツ、スズキが共同開発中の軽商用電気自動車にも関わっており、ベース車両を提供するダイハツがCJPTから抜けたままプロジェクトが進むとは考えにくい(参照)。日野と同様、時機を見て復帰という流れになるかもしれない。
もうひとつ個人的に注目したのは、トヨタの佐藤社長が“ラストマイルモビリティー”に触れたことだ。
ダイハツはかつてツバサ工業という二輪メーカーをグループ内に持ち、1970年代には原付バイクの「ソレックス」や「ハロー」を手がけていた。ソレックスはフランスのモペッドのライセンス生産、ハローは英国BSAのモデルを参考に開発された三輪スクーターだ。オリジナルのソレックスやハローの現物に乗ったことがある筆者にとってはうれしいひとことだし、ダイハツの立ち位置にも合っている。
2023年秋のジャパンモビリティショーでは、トヨタやスズキが、生まれたばかりの特定小型原付のカテゴリーを想定した三輪や四輪のコンセプトモデルを出展していたことが記憶に新しい。今の窮状から立ち直った暁には、庶民派なイメージを持つダイハツならではの、自分たちのキャラクターを生かしたモビリティーの提案に期待したい。
(文=森口将之/写真=トヨタ自動車、webCG/編集=堀田剛資)
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森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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