フェラーリの次世代プラント完成! 新厩舎で生まれる「100%電動の跳ね馬」を予想する
2024.07.15 デイリーコラム電動車限定の工場にあらず
なんとも思わせぶりなネーミングである。「e-building(e-ビルディング)」。先日、フェラーリが竣工(しゅんこう)式を行った新しい生産ファクトリーの名前のことだ。
その場所はかつてフェラーリのテストカーが出入りするパパラッチの指定席というべき門前の一帯で、ワークスF1パイロット御用達のカートショップなどがあった。そのあたりをまるっと買収し、電動モデルの開発と生産拠点がつくられようとしている。2、3年前からそう聞いていたから、なおさらこんなふうに思っていた。
「新しい工場は電動モデル専用だろう」と。
けれども先日、マラネッロのファミリーデーに合わせて開催された竣工式において明かされた事実はそう単純な話ではなかった。実に70%のエリアは全く新しい組立工場であり、フル電動モデル(BEV)やプラグインハイブリッドモデル(PHV)はもちろん、なマルチラインであるという。
フェラーリCEOのベネデット・ヴィーニャ氏によれば、「“e”にはエレクトリック(electric)のみならず、環境(environment)や進化(evolution)、そしてエネルギー(energy)といった意味合いも含まれている」ということらしい。つまり、次世代マラネッロファクトリーのあるべき姿を実現しただけ、というわけだ。
2022年に発表されたマラネッロの「マルチエネルギー戦略」によれば、2026年までにラインナップの6割をBEVおよびPHVにし、2030年までにはBEV 4割、PHV 4割にもっていくと宣言されている。現在はその目標に向かって着々と進行しているというわけで、生産能力1万台を超えるとうわさの新工場が、現在のアッセンブリー工場に取って代わることは間違いない。
現在使われている工場は、今後ますます増えていくであろう、特別オーダー品(テーラーメイド)や、フューオフ&ワンオフモデルの生産にあてられることだろう。
想像を超えてこそフェラーリ
注目すべきは、マラネッロが「将来的な開発を含めて、電動化に関わる技術を新しい建物であるe-ビルディングのなかで完結したい」と考えていることだ。その意味するところは実にシンプル。電動パワートレインもまた“フェラーリらしく”なるだろう、ということである。
今後のマラネッロ製ロードカーは、基本的にPHVが中心となっていく。フル電動モデルも早晩追加される。すでにモデル概要は決まっているようで、その価格もまた現在の12気筒モデル相当といううわさだ。いったいどんなモデルになるのだろうか?
完全に臆測にはなるけれど、ふつうに考えるとそれは豪華でラグジュアリーなグラントゥーリズモだ。ロールス・ロイスがBEVの「スペクター」で“らしさ”を体現したように、フェラーリもまた新型BEVでマラネッロ産らしい4シーターGT、つまり「GTC4ルッソ」の後継となるようなモデルをローンチする。
そこまで想像して(誰でもできる)、はたと気づいた。マラネッロはカスタマーやメディア、クルマ好きの期待や想像を良いほうに“裏切る”のが得意なブランドであったことを。常に人を驚かせ、喜ばせることが彼らの真骨頂。だとすればフル電動第1弾は誰もが思ってもみなかったモデルになるのではないか? BEVでもフェラーリであることを世界に強烈に、しかも見ただけでアピールできるようなモデル……。
ひと目見てフェラーリだとわかるカテゴリーは何か? 歴史的にみればそれはロングノーズ&ショートデッキのGTだ。発表されたばかりの「12(ドーディチ)チリンドリ」の生産台数は思ったよりも少なくなりそうだから、フル電動モデルの生産が本格化すると予想される2027年に“タッチ交代”はあり得る。
もうひとつ考えられるのは、今、フェラーリを好んで買っている年代にとって最もしっくりする形、リアミドシップスタイルの可能性だ。重いバッテリーをエンジンの代わりに置けるリアミドレイアウトはBEV向きでもある。息をのむほど美しくグラマラスなスタイルを持つ背の低いモデル、「296」よりいっそう華やかなスタイルはどうだろうか?
果たしてマラネッロはどんなふうに驚かせてくれるのだろう。今から楽しみでならない。
(文=西川 淳/写真=フェラーリ、MCA/編集=関 顕也)

西川 淳
永遠のスーパーカー少年を自負する、京都在住の自動車ライター。精密機械工学部出身で、産業から経済、歴史、文化、工学まで俯瞰(ふかん)して自動車を眺めることを理想とする。得意なジャンルは、高額車やスポーツカー、輸入車、クラシックカーといった趣味の領域。
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