ライバルよりここがスゴイ! 「マツダCX-80」のアドバンテージを徹底検証する
2024.08.30 デイリーコラムライバルは意外と多い
みんな大好き、マツダの新型車! ……というわけで、いま『webCG』をはじめとする自動車メディアは、概要が公開されたばかりの「マツダCX-80」の話題で持ちきりだ。
CX-80は教科書的に説明すると、後輪駆動プラットフォームの「ラージアーキテクチャー」でつくられた、ナローボディーの3列シートSUVで……ってなことになるのだが、簡単に言えば「CX-60」の車体を延長して3列シート化したモデル。Bピラーより前は基本的にCX-60と同じで、ホイールベース/車体を延ばしたパッケージングになっている。「CX-5」と「CX-8」の関係だと思えばいいだろう。
このコラムのたくらみは、そんなCX-80の国内デビューを祝して、「3列シートSUVのライバル比較」をしようってわけ。何気に激戦区だったりするのは、クルマ事情に詳しい読者の皆さまならきっとご存じだろう。
ちなみに、ここで言う「CX-80のライバル」とは、全長5m以内の3列シートモデルで、価格帯がCX-80の予想価格(正式価格はまだ公開されていない)である400万円~700万円前後のクルマとしよう。具体的には、全長4660mmで3列車の価格が427万1300円~497万2000円である「日産エクストレイル」をはじめ、「三菱アウトランダーPHEV」(全長4710mmで559万0200円~630万4100円)、そして「トヨタ・ランドクルーザー“250”」(全長4925mmで545万円~735万円)や「トヨタ・ランドクルーザー“300”」(全長4950~4985mmで550万円~770万円)あたりが該当することになる。「ランクル系は毛色が全然違うじゃろが!」というクレームは受け付けませんのであしからず。価格はいずれも3列車のもので、2024年8月時点で設定されている特別仕様車やカスタマイズモデルも含むものだ。
輸入車としては全長4640mmで627万円~690万円(AMGモデルは別枠なので除く)の「メルセデス・ベンツGLB」や、偶然にも全長が4640mmと同じで586万6000円~611万6500円の「プジョー5008」なんかも射程圏内に入ってくるだろう。余談だけど、GLBってイメージより大きいね。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
車内空間に見る「CX-80」の優位性
そんなライバルと比べた場合、自信をもってCX-80がナンバーワンといえるのが3列目の居住性。足を置く場所やひざ前のスペース、そして乗車姿勢と、さまざまな見地で見ても、全長5m以下のSUVでは最高の実用性だ。日本で手に入るSUVで、CX-80を超える3列目の持ち主となると、全長5mを大きく超える「キャデラック・エスカレード」あたりになってくる。とはいえ、絶対的な居住性では「ホンダ・ステップワゴン」やそのライバルといったミニバン勢が上を行くので、過剰な期待は禁物だけど。
実はCX-80がライバルたちに勝るのは3列目だけじゃない。2列目のひざまわり空間(1列目と2列目の距離)もライバルを超えている。2列目にゆったりと座りたいというニーズでも、CX-80はライバルに対してアドバンテージがあるのだ。そのうえで、2列目のセパレートシート(左右が独立したシート)や、上級タイプに備わるセンターコンソール、電動調整機能なんかもCX-80だけのアイテム。3列目だけでなく2列目の居住性、そして上級感においても、ライバル不在といっていいだろう。
上級感といえば、「プレミアムブランドかと思う」と言われるほどのインテリアのつくり込みも、ライバルを超えている部分。特にスゴいのがナッパレザーのシートを組み合わせる「エクスクルーシブモード」以上のグレードで、(価格的にライバルとはいえないけれど)レクサスあたりを持ってくれば勝負になるけれど、メルセデス・ベンツGLBも含めて上記ライバルをリードしていることは断言できる。お世辞抜きに、輸入車なら1000万円級のクオリティーといっていい。……あれ? もしかしてCX-80ってスゴくないか?
拡大 |
拡大 |
拡大 |
意外と短く、意外と細い?
パワートレインを見ても、普通のガソリンエンジンこそないものの、6気筒のディーゼルエンジンがあり、そこにモーターを組み合わせたマイルドハイブリッドがあり、さらに(CX-80の正式スペックは未公表だが同じユニットを積むCX-60では)システム出力327PSを誇るプラグインハイブリッドも用意。ディーゼルの燃費はライバルのガソリン車を大きく超えるし、動力性能でもCX-80を超えるのはランクル“300”くらいだろう。
たしかに、ランクルのような悪路走破性はCX-80にはないし、オンロードで考えてもエクストレイルの「e-4ORCE」やアウトランダーPHEVの「S-AWC」みたいな前後モーター駆動ならではのムリやり曲がる異次元感覚はない。けれど、後輪駆動やそれベースの4WDによる“アクセルを踏み込みながら曲がる素直な感覚”に、何事にも代えがたい爽快感があることは記しておこう。
もしかして、目立った特徴だけでなく、トータルで見てもCX-80に死角なしか? 突っ込む余地があるとすれば、「日本の道路事情(特に駐車場)に対してデカすぎやしませんか?」ってことくらいだが、実は全長は、街を普通に走る「トヨタ・アルファード/ヴェルファイア」の現行型より短いほどだし、全幅のほうはランクル“250”より90mmも狭い。みんなが「小さくて運転しやすい」と言って喜んでいる「ポルシェ・マカン」よりもナローなほどである。そういう視点で見れば、たいしたボディーサイズではないのだ(たぶん)。今どきは車両周囲360度を映してくれるカメラもあるしね。
えっ? 乗り心地が気になる?? それは試乗リポートがアップされるまで、しばしお待ちを! きっと期待していいんじゃないかな。……CX-60のときに、いろいろあったから。
(文=工藤貴宏/写真=マツダ、日産自動車、三菱自動車、トヨタ自動車、メルセデス・ベンツ日本/編集=堀田剛資)
◇◆こちらの記事も読まれています◆◇
◆マツダが3列シートの新型SUV「CX-80」を発表 2024年秋の発売を予定
◆乗る人すべてを笑顔にしたい 「マツダCX-80」開発者インタビュー
◆【画像・写真】マツダCX-80 XD Sパッケージ/CX-80 XDハイブリッド エクスクルーシブモダン/CX-80 XDハイブリッド プレミアムモダン(75枚)
◆【画像・写真】マツダCX-80 XDハイブリッド エクスクルーシブスポーツ/CX-80 XDハイブリッド プレミアムスポーツ(47枚)

工藤 貴宏
物心ついた頃からクルマ好きとなり、小学生の頃には自動車雑誌を読み始め、大学在学中に自動車雑誌編集部でアルバイトを開始。その後、バイト先の編集部に就職したのち編集プロダクションを経て、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。別の言い方をすればプロのクルマ好きってとこでしょうか。現在の所有車両は「スズキ・ソリオ」「マツダCX-60」、そして「ホンダS660」。実用車からスポーツカーまで幅広く大好きです。
-
高齢者だって運転を続けたい! ボルボが語る「ヘルシーなモービルライフ」のすゝめ 2025.12.12 日本でもスウェーデンでも大きな問題となって久しい、シニアドライバーによる交通事故。高齢者の移動の権利を守り、誰もが安心して過ごせる交通社会を実現するにはどうすればよいのか? 長年、ボルボで安全技術の開発に携わってきた第一人者が語る。
-
走るほどにCO2を減らす? マツダが発表した「モバイルカーボンキャプチャー」の可能性を探る 2025.12.11 マツダがジャパンモビリティショー2025で発表した「モバイルカーボンキャプチャー」は、走るほどにCO2を減らすという車両搭載用のCO2回収装置だ。この装置の仕組みと、低炭素社会の実現に向けたマツダの取り組みに迫る。
-
業界を揺るがした2025年のホットワード 「トランプ関税」で国産自動車メーカーはどうなった? 2025.12.10 2025年の自動車業界を震え上がらせたのは、アメリカのドナルド・トランプ大統領肝いりのいわゆる「トランプ関税」だ。年の瀬ということで、業界に与えた影響を清水草一が振り返ります。
-
あのステランティスもNACS規格を採用! 日本のBEV充電はこの先どうなる? 2025.12.8 ステランティスが「2027年から日本で販売する電気自動車の一部をNACS規格の急速充電器に対応できるようにする」と宣言。それでCHAdeMO規格の普及も進む国内の充電環境には、どんな変化が生じるだろうか。識者がリポートする。
-
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット― 2025.12.5 ハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。
-
NEW
ホンダ・プレリュード(前編)
2025.12.14思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「ホンダ・プレリュード」に試乗。ホンダ党にとっては待ち望んだビッグネームの復活であり、長い休眠期間を経て最新のテクノロジーを満載したスポーツクーペへと進化している。山野のジャッジやいかに!? -
アストンマーティン・ヴァンテージ ロードスター(FR/8AT)【試乗記】
2025.12.13試乗記「アストンマーティン・ヴァンテージ ロードスター」はマイナーチェンジで4リッターV8エンジンのパワーとトルクが大幅に引き上げられた。これをリア2輪で操るある種の危うさこそが、人々を引き付けてやまないのだろう。初冬のワインディングロードでの印象を報告する。 -
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(4WD)【海外試乗記】
2025.12.12試乗記「ノイエクラッセ」とはBMWの変革を示す旗印である。その第1弾である新型「iX3」からは、内外装の新しさとともに、乗り味やドライバビリティーさえも刷新しようとしていることが伝わってくる。スペインでドライブした第一報をお届けする。 -
高齢者だって運転を続けたい! ボルボが語る「ヘルシーなモービルライフ」のすゝめ
2025.12.12デイリーコラム日本でもスウェーデンでも大きな問題となって久しい、シニアドライバーによる交通事故。高齢者の移動の権利を守り、誰もが安心して過ごせる交通社会を実現するにはどうすればよいのか? 長年、ボルボで安全技術の開発に携わってきた第一人者が語る。 -
第940回:宮川秀之氏を悼む ―在イタリア日本人の誇るべき先達―
2025.12.11マッキナ あらモーダ!イタリアを拠点に実業家として活躍し、かのイタルデザインの設立にも貢献した宮川秀之氏が逝去。日本とイタリアの架け橋となり、美しいイタリアンデザインを日本に広めた故人の功績を、イタリア在住の大矢アキオが懐かしい思い出とともに振り返る。 -
走るほどにCO2を減らす? マツダが発表した「モバイルカーボンキャプチャー」の可能性を探る
2025.12.11デイリーコラムマツダがジャパンモビリティショー2025で発表した「モバイルカーボンキャプチャー」は、走るほどにCO2を減らすという車両搭載用のCO2回収装置だ。この装置の仕組みと、低炭素社会の実現に向けたマツダの取り組みに迫る。








































