現行「クラウン」シリーズなんてまだまだ!? 昭和時代のクルマのてんこ盛りのボディーバリエーション
2024.11.20 デイリーコラム4タイプくらいは序の口
国産メーカー各社のサイトを眺めていて……ラインナップの絶対数の少なさもさることながら、一部を除いて同じ名を持つモデルのボディーバリエーションがほぼ消滅していることに、いまさらながら気づいた。
一部というのはトヨタの「カローラ」「クラウン」「センチュリー」、そしてスズキの「ワゴンR」である。カローラを例にとれば「カローラ」(セダン)に「カローラ スポーツ」(ハッチバック)、「カローラ ツーリング」(ワゴン)、「カローラ クロス」(クロスオーバーSUV)がそれぞれ異なるボディーを持っているので、4種のバリエーションがある。フリートユース向けとして併売されている旧型の「カローラ アクシオ」(セダン)と「カローラ フィールダー」(ワゴン)を加えれば6種類となるが、これはちょっと話が違うだろう。
「クラウン」も同じく4種類、すなわち「クロスオーバー」「スポーツ」「セダン」「エステート」(未発売)なので、現行モデルでは最多のボディーバリエーションが4種類となるわけだ。このうちセダンは駆動方式/プラットフォームから異なるので単なるバリエーションとは言い難いという見方もあるが、それはともかく、昔は4種類くらいならば少なくない数のモデルが抱えていたはずだ。もっとも、私の言うところの昔とは、多くの読者諸氏にとっては相当な昔であろう昭和時代の話ではあるのだが。
では、具体的に昔のモデルはどれだけのボディーバリエーションをそろえていたのか、検証してみよう。
さすがトヨタの看板モデル
まずは現在も最多のボディータイプを抱えるカローラから見ていこう。1966年10月に初代が発売された時点では、ボディーは2ドアセダンのみだった。翌1967年に4ドアセダンと4ナンバー(商用登録)の3ドアバンを追加し、さらに1968年には「スプリンター」のサブネームを持つ2ドアクーペが加わって4種類となった。
1970年に登場した2代目ではそれらに5ドアバンが加わり5種類となる。1974年にフルモデルチェンジした3代目では、2代目から双子車として独立したスプリンターとの差別化が図られ、クーペモデルはカローラがBピラーのない2ドアハードトップ、スプリンターが2ドアクーペとなった。
つまりこの時点では2代目と同じ5種類だったのだが、1976年には3ドアハッチバックが「リフトバック」の名で加わり、さらに1977年にはスプリンター専用だった2ドアクーペをカローラにも(同時にスプリンターにもカローラ専用だったハードトップを)用意して、計7種類(うちバン2種)まで膨れ上がったのだった。
1979年に世代交代した4代目では、2ドアクーペが3ドアハッチバッククーペに代わったものの7種を引き継いだ。そして1982年に5ドアバンのボディーを流用した、カローラとしては初となる5ナンバーの乗用ワゴンが加わったのだが、そのワゴンは翌1983年にルーフを高めた専用ボディーとなった。これを別種とカウントすると計8種類のボディーをそろえていたことになるのだ。
その後、5代目では5ドアハッチバックや派生車種である3/5ドアハッチバックの「カローラFX」が加わったが、逆に2ドアセダンなど消えたモデルもあるので8種類には達しなかった。また後年の「カローラ セレス」(4ドアハードトップ)はともかく、「カローラ スパシオ」や「カローラ ルミオン」などボディーバリエーションとは言い難い派生車種が存在した時代も同様だった。
ロング版も登場した「日産サニー」
かつてはカローラのライバルだった日産の「サニー」はどうだったかというと、カローラより半年早く1966年4月に初代がデビューした時点では2ドアセダンと3ドアバンの2種類だった。追ってトラック、4ドアセダン、2ドアクーペが加わって5種類になるのだが、お分かりのようにライバルにはなかったのがトラック。名称はトラックでも、キャビンと荷台が一体の乗用車と同じモノコックボディーのピックアップなので、ボディーバリエーションに含めるのは問題ないだろう。
1970年にフルモデルチェンジした2代目サニーでは、バンが3ドアから5ドアに代わるが、後に3ドアも復活。また1971年には既存の1.2リッター直4 OHVのA12型エンジン搭載の「1200」シリーズに加えて、1.4リッター直4 SOHCのL14型エンジン搭載の「エクセレント」シリーズが登場する。このエクセレントは4ドアセダンとクーペのみだったが、A12より長いL14を収めるためホイールベースを40mm延ばし、フロントオーバーハングも延ばしてノーズは170mmも長くなっていた。これらを別ボディーとカウントすると、計8種類となった。
1973年にサニーは3代目に進化するが、トラックは2代目のまま継続販売された。最終的に1994年に生産終了となるまで20年以上にわたるロングセラーとなるのだが、通常のサニーの3代目への世代交代と前後してロングボディーが加えられた。これを別種とすると、2代目サニーには計9種類ものボディーが存在したことになる。
コストにおおらかだった時代
ボディーのバリエーションが多かったのは大衆車だけではない。日産の「ブルーバード」との“BC戦争”と呼ばれた激しい販売合戦を制して、トヨタ車として初めてベストセラーカーとなった1.5リッター級のファミリーセダンだった3代目「コロナ」。1964年に4ドアセダンと4ナンバーの3ドアバン、シングル/ダブルのピックアップという4種類でデビュー。翌1965年に日本初となる2ドアハードトップ、次いでこれまた日本初となる5ドアハッチバックを「5ドアセダン」の名で追加。さらに1966年に5ドアバンを加えて計7種をそろえるに至ったのだった。
日本では、戦後のモータリゼーションの黎明(れいめい)期である1950年代中ごろから1980年代初頭くらいまでは、乗用車といえどもライトバンなどの商用車のバリエーションは必須に近かった。庶民にとってマイカー、それも乗用車など夢だった時代に、税金や保険などの維持費は乗用車より割安ながら数人分の座席を備えた貨客兼用車であるライトバンは、中小の商店主や工場主といった初期のモータリゼーションを支えたユーザーにとって頼もしい存在だった。
いっぽうメーカーにとっても、乗用車だけで開発や生産にかかるコストを償却するのは厳しかったため、派生モデルである商用車をラインナップすることは欠かせなかった。また乗用車でも2ドアセダンなどは単体での台数は見込めなくとも、かつてメーカーが複数の販売チャンネルを抱えおのおのに向けた兄弟車を用意していたのと同様に、グロスで販売台数が増えるならばつくり分けの手間やコストは大目に見られていた。そうした理由から、多くのボディーバリエーションが存在していたのだ。
だが所得水準が向上し、クルマの普及が進むにつれて乗用車と商用車は分化していき、ライトバンなどのバリエーションは減少していく。そしてバブル崩壊以降、景気低迷が続いた“失われた30年”の間にユーザーの嗜好(しこう)が変化し、乗用車はミニバン、そしてSUVへと背の高いモデルが主流となった。生産合理化の要求もどんどん厳しくなっていき、まずはクーペなどの実用性の低いモデルから、次いでワゴンというように台数の出ないモデルが続々と消えていったのだ。そしてついにはセダンやハッチバック、すなわち車種自体が消滅してしまったモデルも少なくないというわけなのだ。
そうした状況となってしまった今、セダンをベースとする、基本的に同じ顔を持つモデルのボディーバリエーションが10種類近くも存在した時代があったなんて、若い人たちには信じられないだろうなあ。
(文=沼田 亨/写真=トヨタ自動車、日産自動車、TNライブラリー/編集=藤沢 勝)
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沼田 亨
1958年、東京生まれ。大学卒業後勤め人になるも10年ほどで辞め、食いっぱぐれていたときに知人の紹介で自動車専門誌に寄稿するようになり、以後ライターを名乗って業界の片隅に寄生。ただし新車関係の仕事はほとんどなく、もっぱら旧車イベントのリポートなどを担当。
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