ディフェンダー110 X-DYNAMIC HSE P300e(4WD/8AT)
推しの子 2026.04.20 試乗記 本格クロスカントリービークルの「ディフェンダー」にプラグインハイブリッド車(PHEV)の「P300e」が登場。電気の力を借りて2リッターターボとしては格段にパワフルになった一方で、カタログ燃費はなかなか悲観的な数値を示している。果たしてその仕上がりは?電動走行するディフェンダー
質実剛健なワークホース、というより粗削りで武骨なプロ用クロスカントリービークルだった先代から、ラグジュアリーなプレミアムSUVに大変身を遂げたのが現行ディフェンダーである。日本導入当初(2019年末に先行予約モデルを限定発売、翌年から標準モデルを導入)は“インジニウム”と称する2リッター4気筒直噴ターボのみだったが、今や3リッター直6ディーゼルターボ+マイルドハイブリッドもV8ガソリン+スーパーチャージャーも用意されており、さらにはV8ツインターボから最高出力635PSを生み出す「オクタ」というモンスターまでラインナップされている。ボディーも3ドアの「90」、ロングホイールベース5ドアの「110」、ホイールベースは110と同じ(3020mm)ながら、全長(リアオーバーハング)が330mm長い3列シート(2列もある)の「130」と幅広いモデルをそろえている。
発売以降細かな改良や仕様変更は毎年のように行われてきたが、現行型では初のマイナーチェンジとうたう2026年モデルのディフェンダーのなかで、最も注目されるのがディフェンダー初のPHEV、P300eである。兄貴分の「レンジローバー」や「レンジローバー・スポーツ」には既に3リッター直6ターボのPHEVも存在し、ディフェンダーに積まれている定評ある3リッター直6ディーゼルターボもマイルドハイブリッドシステム付きだが、ディフェンダーとしては初めてのプラグインハイブリッドシステムは4気筒2リッターのインジニウムガソリンターボに駆動用モーターを組み合わせている。
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なかなかの俊足
PHEVのP300eは、2リッター4気筒ガソリンターボから224PS/4500-6000rpmの最高出力と350N・m/1750-4500rpmの最大トルクを発生。それに142PSと278N・mを生み出すモーターを加えたシステムの最高出力と最大トルクは300PSと625N・mという。6気筒ディーゼルターボMHEVの「D350」には若干及ばないスペックだが、試乗車の「X-DYNAMIC HSE P300e」の0-100km/h加速は7.6秒、最高速は191km/hというから、車重2640kgで全長ほぼ5m、全幅2mのSUVとしては十分すぎるほどの俊足だ(同じグレードのD350は6.4秒と191km/h)。
実際、動きだしは素早い。4WD制御の「テレインレスポンス2」とは別に、「ハイブリッド」「EV」「セーブ」の3種類のパワートレインモードを選べるが、EVモードでなくても普通に走る限り基本的にスタートは電動であり、マイルドハイブリッドより格段に強力なモーターのおかげで低速域はスイッと俊敏に加速するし、中間加速のレスポンスも鋭い。高速域になるとさすがにちょっと加速は鈍るが、エンジンが始動する際のショックやノイズも抑えられており、エンジンそのものも6気筒ほどではないものの、滑らかに健康的にトップエンドまで回る。エンジンがかかった途端に興ざめ、という類いのハイブリッドではない。
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PHEV推しの思惑
ただしPHEVとはいえ燃費を最重視したモデルではないようだ。WLTCモード燃費は9.3km/リッターというもので、MHEVのD350の10.5km/リッターには及ばない。実際に高速道路をクルーズ中に車載燃費計を見てもせいぜい9km/リッター台だった。これでもかつての「ランドローバー」を考えれば驚くほどの進歩だが、おそらくこのPHEVはCO2排出量を少しでも減らすための手段とみるべきだろう。
ご存じのようにEUのEV化の歩みは遅くなっているとはいえ、CO2平均排出量を基にしたペナルティーは厳しくなる一方だ。ディーゼルやV8エンジンを生き延びさせるためにも、電動走行距離に応じた優遇措置があるPHEVを投入、拡販する必要があるというわけだ。このX-DYNAMIC HSE P300eで1091万円という車両価格(同じボディーの同じグレードでD350は1129万円)にも、PHEVを推したいという戦略的な意図がうかがえる。ちなみに容量15.4kWh(海外仕様のデータ)のリチウムイオン電池を積むP300eのEV走行換算距離は53km(WLTCモード)、普通充電にのみに対応しており、7kWの出力だと0%から満充電までおよそ2時間半とされている。
一見しただけでは分からないが、マイナーチェンジでヘッドライトとフロントバンパーまわりのデザインが若干変更されており、テールランプもフラッシュサーフェス化されたうえにスモークタイプとなった。室内ではセンターのタッチスクリーンが13.1インチサイズに大型化され(これまでは11.4インチ)、よそ見をすると警告されるドライバーモニターカメラも装備されている。PHEV化の影響は荷室以外には見当たらない。リチウムイオン電池を荷室床下に搭載するためにフロアが若干盛り上がっており、容量はD350の786~1875リッターに対して696~1759リッターとやや減少している。110ボディーは7人乗り仕様も選べるが、P300eは5人乗りのみである。
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ロングドライブが楽しい
ディフェンダーも含めたランドローバー各車に共通する美点は、オンロードでの乗り心地が素晴らしいことだ。本格的なオフロード走行性能を備える“クロスカントリービークル”のディフェンダー(最大渡河水深は900mmもあることを忘れてはいけない)は、少なくとも車高調整付きエアサスペンションに可変ダンパーを備えるモデルであれば(P300eはエアサスペンション仕様のみ)、ゴツゴツした突き上げもピョコピョコとしたピッチングを見せることもなく、文字どおりフラットに快適にロングドライブをこなせる。ゴツいトレッドパターンを持つ、しかも20インチのオールテレインタイヤ「グッドイヤー・ラングラー オールテレインアドベンチャー」を履いていたにもかかわらず、ロードノイズもエンジン音も気にならないレベルだ。大きめの段差ではたまにドシンという、いかにも重そうなタイヤの動きが伝わってくることがあるが、この種のクルマとしては依然としてベストといっていい。
オープンロードを走る限りまったく鈍重な感じがしないのがディフェンダーの不思議なところである。山道を飛ばすなどという場面を除けば、むしろ身軽といってもいいのは、低回転から十分なトルクがリニアに湧き出すことと、レスポンスよく滑らかな8段ATのおかげだろう。ボディー全周を確認できるカメラを備えるとはいえ、さすがに街なかでは持て余す巨体だが、狭い道や駐車場を気にしないで済む人にとっては、とにかく快適に遠くまで移動できるディフェンダーは、しかも戦略的な値づけのP300eは非常に魅力的に映るはずだ。そうはいっても導入初期のディフェンダー90は約500万円からあったのに(2026年モデルの最廉価版は110のガソリン4気筒ターボで約900万円)、と昔を懐かしむ人もいるだろうが、あの「ジープ・ラングラー」でさえ今や800万円を超えている。この装備と性能を考えればむしろ安いと納得せざるを得ない時代なのである。
(文=高平高輝/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝/車両協力=ジャガー・ランドローバー・ジャパン)
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テスト車のデータ
ディフェンダー110 X-DYNAMIC HSE P300e
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4945×1995×1970mm
ホイールベース:3020mm
車重:2640kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:224PS(165kW)/4500-6000rpm
エンジン最大トルク:350N・m(35.7kgf・m)/2000-4500rpm
モーター最高出力:142PS(105kW)/3650rpm
モーター最大トルク:278N・m(28.4kgf・m)/1000-3700rpm
システム最高出力:300PS(221kW)
システム最大トルク:625N・m(63.7kgf・m)
タイヤ:(前)255/60R20 113H XL M+S/(後)255/60R20 113H XL M+S(グッドイヤー・ラングラー オールテレインアドベンチャー)
ハイブリッド燃料消費率:9.3km/リッター(WLTCモード)
充電電力使用時走行距離:53km
EV走行換算距離:53km
交流電力消費率:--km/kWh
価格:1091万円/テスト車:1327万9394円
オプション装備:ボディーカラー<タスマンブルー>(0円)/3ゾーンクライメートコントロール(7万1000円)/エアクオリティーセンサー(1万円)/空気清浄システムプラス<PM2.5フィルター付き>(6万2000円)/MERIDIANサラウンドサウンドシステム(31万3000円)/WiFi接続<データプラン付き>(3万8000円)/クリアサイトインテリアリアビューミラー(12万3000円)/20インチ“スタイル5095”ホイール<ダイヤモンドターンド、グロスダークグレイコントラスト>(11万7000円)/ヘッドアップディスプレイ(12万1000円)/フロントセンターコンソール急速クーラーボックス(3万9000円)/トレッドプレート<メタル、イルミネーション、「DEFENDER」スクリプト付き>(4万3000円)/スペアホイールロック<5スポーク>(1万8000円)/ホイールロックナット(1万円)/コールドクライメートパック(11万3000円)/オフロードパック(21万1000円)/エクステンデッドブラックエクステリアパック(18万1000円)/ドライバーアテンションモニター(4万2000円)/アダプティブオフロードクルーズコントロール(6万9000円)/40:20:40分割式リアシート<ヒーター、センターアームレスト付き>(4万5000円) ※以下、販売店オプション ドライブレコーダー(6万0280円)/ディプロイアブルサイドステップ一式(68万3114円)
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:2292km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:227.5km
使用燃料:29.9リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:7.6km/リッター(満タン法)/7.8km/リッター(車載燃費計計測値)

高平 高輝
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