ボルボEX90プラス ツインモーター パフォーマンス(4WD)
電動化世代のボルボらしさ 2026.07.22 試乗記 ボルボのフル電動SUV「EX90」が上陸。3列7人乗りのキャビンを有する圧倒的なサイズや空力性能を磨き上げた滑らかなボディー、継続的なアップグレードに対応する最新の電子プラットフォームと、新たなフラッグシップモデルにふさわしいトピックが並ぶ。果たしてその走りやいかに。新世代ボルボのフラッグシップBEV
ボルボ・カー・ジャパンが2026年7月8日に国内導入を発表した新型BEV、EX90(参照)。モジュラープラットフォーム「SPA(スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャー)」の進化版となる「SPA2」を用いた3列7人乗りのフルサイズSUVであり、また、これまでのECU(電子制御ユニット)をひとつに集約し車両全体の機能を統合制御する次世代コアコンピューティングシステム「HuginCore」を搭載したボルボ初の本格的なSDV(ソフトウエアディファインドビークル)であるなど、その中身は相当に先進的だ。
今回ロングドライブに連れ出したのは、システム最高出力680PS、同最大トルク870N・mを誇る最上級グレード「EX90プラス ツインモーター パフォーマンス」。東京・青山の「ボルボスタジオ東京」を出発し、目指すは緑深い日光。帰路は金精峠を越えて沼田へと抜ける、往復約400kmの行程である。
空力性能を磨いたフラッシュサーフェスデザインのEX90プラス ツインモーター パフォーマンスは、ボディーサイズが全長×全幅×全高=5035×1965×1745mm、ホイールベースは2985mmである。数値だけを追いかければ相当な大きさをイメージするが、実車を前にすると無駄な贅肉(ぜいにく)が削(そ)ぎ落とされ、前後オーバーハングが極めて短くデザインされているため、引き締まったスタイリッシュさが際立つ。日本上陸は前後してしまったが、末っ子のBEV「EX30」は、2022年11月に発表されたこのEX90の流れをくむ内外装デザインが特徴である。
ユニークなのは、イグニッションオンや夜間の作動時にメカニカルな動きを見せるヘッドランプシステムだ。最新世代のボルボを印象づける「トールハンマー」の水平ラインが上下に展開し、ヘッドランプの発光部が現れるそのシステムは、先進性を視覚的にも強くアピールしてくる。
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ロングドライブの疲れが少ない
ドアを開けると、そこはまさに北欧風の上質なプライベートラウンジだ。14.5インチサイズの縦型センターディスプレイをダッシュボードのセンターに配置。スイッチ類を徹底的に排除したシンプルでクリーンなインテリアだが、本革シートやインストゥルメントパネルの精緻なインレイなど、ボルボらしいクラフトマンシップと高い質感は健在である。カラーコーディネートのセンスのよさには相変わらず感心する。
ドライバーズシートに腰を下ろすと、メーターパネルがステアリングコラムと連動してチルトする機構に気づく。どのような体格のドライバーでも、ステアリングの影にメーターが隠れることがない。さらにボルボ初となる電動チルト&テレスコピック機構により、理想的なドライビングポジションがピタリと決まる。ただ、フットレストの位置だけはやや足の置き場としておさまりが悪く、今後の改善を期待したい部分ではある。
この日は初夏の陽気。本革シートに備わるシートベンチレーションを作動させると、優しく背中とお尻を冷やしてくれた。年々夏場の環境が厳しくなることを考えれば、間違いなく重宝する快適装備だ。
渋滞する首都高を抜け、東北自動車道を北上する。EX90のキャビンは、驚くほど静かだ。サイドの遮音ガラス(ラミネートガラス)が効果的に風切り音やロードノイズをシャットアウトしており、BEVならではの静粛性がさらに引き立てられている。乗り心地もしなやかそのもので、フロントに採用されたFSDダンパー(Frequency Selective Damping=周波数応答型ダンピング)が、荒れた路面からの入力をスマートにいなしていく。
この圧倒的な静かさとフラットな乗り心地の恩恵は、疲労の少なさに直結する。これまで数多くのグランドツアラーを走らせてきたが、そのなかにあっても、断然疲れが少ないと紹介できるレベルだ。
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狭い峠道は得意なステージではない
日光宇都宮道路からいろは坂にアプローチし、しばしタイトなワインディングロードを上る。おそらく観光を目的としているのであろう先行車両が連なる状況下では、流れに身を任すしかなく、EX90のパフォーマンスを確かめるには至らない。急な勾配をものともしないパワーは頼もしく、まだまだ余裕しゃくしゃく。ペースは上がらなかったが、昼過ぎには中継地点である中禅寺湖の湖畔に到着した。
しばしの休憩の後、いよいよEX90の実力を試すべく、金精峠を目指してステアリングを握る。ツインモーターのレスポンスとパワーは強烈で、巨体をものともせず緩い上り坂を猛然と加速する。しかし、調子に乗ってスピードを乗せすぎると、タイトコーナーの入り口で速度を合わせるのが難しくなる。
基本はアンダーステア傾向である。それに電子制御デバイスが介入して車線をトレースさせようとする電制と物理のせめぎあいがステアリングを通じて伝わってくる。しかし、ブレーキが間に合わない。止まらない。タイトなコーナーが連続する峠道に入ると、EX90はその2710kgというヘビー級の車重をいやでも乗り手に意識させる。
パワーがあるからといって、飛ばしすぎは禁物だ。狭い峠道はEX90が得意なステージではない。「タイヤのグリップ力が足りない?」とは、横に座るカメラマン氏の感想だが、これだけの重量をタイヤだけに任せるのは気の毒だ。四輪の接地感やシャープ過ぎないハンドリングは、オンロードにおけるフラッグシップSUVの振る舞いとして申し分ないと感じたが、物理法則を十分に理解したうえでこの有り余るパワーを高速クルージングの余裕として使うのがフルサイズ電動SUVの正しい作法なのかもしれない。
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424kmを走行し電力消費率は5.08km/kWh
金精峠を越え、片品、川場を経由して沼田ICから関越自動車道に乗る。EX90プラス ツインモーター パフォーマンスの一充電走行距離(WLTCモード)は650km。他のBEVのように余裕をもって実質的な航続距離をその7掛けと見積もれば約455kmとなり、今回のルートを追加充電なしで東京まで走り切るには精神的なマージンが心もとない。そこで関越道の赤城高原SAに立ち寄り、急速充電を行うことにした。
最終目的地まで帰れる分だけをサクッと継ぎ足すと割り切って、充電をスタート。結果、わずか10分の充電でバッテリー残量は41%から62%へと回復。これだけの充電量があれば、都内までは十分に、そして精神的にも余裕を持って帰り着くことができる。
バッテリーの容量をフルに、あるいは、急速充電の制限時間いっぱいまで無理に充電しようとせず、高出力な充電器を賢く使って、10〜15分ほどで必要分だけをミニマムにエネルギーを補給する。こうした割り切りをストレスなくBEVに乗る工夫と考えることができれば、EX90の長距離走行適性は、決して低くはない。もちろんこれまでどおり一回の充電リミットである30分をフルに使い、所用を済ませてから出発してもいい。
圧倒的に快適で安定感に満ちた高速道路での走り、極上の静粛性、そして乗員がくつろげるラウンジテイストのキャビン、レスポンスに優れたインフォテインメント。これらが織りなす移動の心地よさは、電動化世代を迎えてもボルボらしさとして浸透していく……はずである。工夫と割り切りで、BEVライフはもっと自由度がアップするかもしれない。ちなみに今回の試乗では、省エネ走行を一切意識することなく高速道路と峠道を自由気ままに424km走行し、電力消費率は5.08km/kWhであった。
(文=櫻井健一/写真=佐藤靖彦/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
ボルボEX90プラス ツインモーター パフォーマンス
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5035×1965×1740mm
ホイールベース:2985mm
車重:2710kg
駆動方式:4WD
フロントモーター:非同期電動機
リアモーター:永久磁石同期電動機
フロントモーター最高出力:299PS(220kW)
フロントモーター最大トルク:390N・m(39.7kgf・m)
リアモーター最高出力:381PS(280kW)
リアモーター最大トルク:480N・m(48.9kgf・m)
システム最高出力:680PS(500kW)
システム最大トルク:870N・m(88.7kgf・m)
タイヤ:(前)265/40R22 108H/(後)295/35R22 108H(ピレリ・スコーピオン)
一充電走行距離:650km(WLTCモード)
交流電力量消費率:180Wh/km(WLTCモード)
価格:1399万円/テスト車=1417万9750円
オプション装備:なし ※以下、販売店オプション ボルボ・ドライブレコーダー360<工賃含む>(18万9750円)
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:1672km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(6)/山岳路(3)
テスト距離:424.0km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:5.08km/kWh

櫻井 健一
webCG編集。漫画『サーキットの狼』が巻き起こしたスーパーカーブームをリアルタイムで体験。『湾岸ミッドナイト』で愛車のカスタマイズにのめり込み、『頭文字D』で走りに目覚める。当時愛読していたチューニングカー雑誌の編集者を志すが、なぜか輸入車専門誌の編集者を経て、2018年よりwebCG編集部に在籍。
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