日産エクストレイル20GT(4WD/6AT)【試乗記】
もうセダンには戻れない 2010.08.09 試乗記 日産エクストレイル20GT(4WD/6AT)……361万2000円
マイナーチェンジに伴い、ディーゼルモデルに待望のATが加わった「エクストレイル」。街中での試乗で感じたのは……。
6AT仕様の追加が目玉
発表から丸3年を目前にして、「エクストレイル」が2010年7月にマイナーチェンジを受けた。フロントグリルとヘッドランプのデザインが変わって顔つきが“ラギッド”になり、インテリアもシートの素材が見直され、燃費や航続距離が表示される情報ディスプレイがメーターパネルに追加されるなど、ひととおりの変更がボディの内外に施されている。
その中でも最大の見どころは、2リッター直4ディーゼルエンジンを搭載する「20GT」に、6段ATを搭載するモデルが加わったことだろう。このエンジンは日本の「ポスト新長期」排出ガス規制に世界で初めて適合したディーゼルとして、エコカーといえばハイブリッド一色の日本でもそれなりに話題になった。しかし6段MTしか用意されなかったことが災いしたのか、最近は存在感が薄れていたことは否めない。日産にとっては、このATモデルの発売で、ようやく日本における“クリーンディーゼル元年”になったのではないだろうか。
トルクコンバーターが付けば、トルクの増幅作用が期待できる。そうなると当然ドライブフィールが変わってくると思われるが、エンジン自体のスペックは、MTとATで違いはない。どちらも173ps/3750rpmと36.7kgm/2000rpmである。車重の差は30kg。燃費についてはカタログの10・15モード値で比較すると、6MTが15.2km/リッターであるのに対して6ATは14.2km/リッターと、約7%悪化している(JC08モードだと約3%の悪化にとどまる)。車両価格は5万2500円高の313万9500円。
回して乗るディーゼルエンジン
最近のヨーロッパのディーゼル乗用車は、中型クラス以上になるとエンジンノイズやバイブレーションの遮断が優れているものが多く、室内ではあのディーゼル特有の「ガラガラ……」という音がしない(気にならない)ことが珍しくない。うっかりしていると、ガソリンエンジンと間違ってしまいそうなほど洗練されているものもある。
しかしその点、エクストレイルは古典的で、健康的に「ガラガラ……」(いや「カリカリ……」ぐらいか)というノイズを室内に伝えてくる。決してイヤミではなく、このクルマをガソリンエンジン搭載車と取り違える人はいないだろう。しかしエンジンの回り方はとてもガソリン車的で、4000rpmまで軽々と吹けあがる。4500rpmのレッドゾーンを超えても勢いが衰えないので、むちゃを承知で一回だけそのまま引っ張ってみたら、5500rpmまでいったところで回転リミッターが作動した。
ここまで回るなら、たしかにATのマニュアルモードは有効な装備かもしれない。かつてディーゼルはエンジンを高回転まで引っ張って乗るものではなく、ワンテンポ早めにシフトアップして、潤沢なトルクに身を任せて走るものだった。しかしエクストレイルの場合は、数年前に6MTを試乗した時にも感じたことだが、とにかくよく回りたがるのだ。それが気持ちいいものだから、ドライバーは気が付くとガソリンエンジンのつもりで運転している、という具合なのである。
低速トルクが力強くなった
もっともそれは、言い換えるとディーゼルにしてはトルクがやや不足しているということでもあった。特にターボトルクが盛り上がる2000rpm以下が不足気味に感じられた。スロットル操作に対してトルクの立ち上がりが遅れるので、都市部の遅い交通の中でサッと素早いレーンチェンジを決める、などという場面がちょっと苦手だったのである。
しかし先述のとおり、トルコンによるトルクの増幅作用が加わったため、エンジンスペックは同じでありながら低速域のトルクがだいぶ太く感じられる。街乗り派にとって、日常的に体感することができるAT化最大の恩恵はこれであろう。このトルクを利用してエンジンを回さない運転を心がければ、燃費の落ち幅もそれなりに抑えられるのではないだろうか。
高い着座位置がもたらす視界の良さ、サルーンも顔負けのフカフカなシート、さらにはATを採用したことでたくましくなった低速トルクと、「20GT」は格段に街中性能を上げた。なるほど、これに慣れてしまうと、セダンに戻れなくなる気持ちもわからないではない。
(文=竹下元太郎/写真=高橋信宏)

竹下 元太郎
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