日産エクストレイル ロッククリークe-4ORCE(4WD)
みんなの思いを背負って 2026.02.04 試乗記 「日産エクストレイル」に新たなカスタマイズモデル「ロッククリーク」が登場。専用のボディーカラーや外装パーツが与えられ、いかにもタフに使い倒せそうな雰囲気をまとっているのが特徴だ。高速道路とワインディングロードを中心に400km余りをドライブした。軽快さがいい感じ
見た目はゴツイが、ドライビングフィールの第一印象は乗用車的で軽快である。なんで軽快に感じるのか? たまさかこの直前まで「レクサスRZ550e“Fスポーツ”」に乗っていたこともある。それでは参考にならん。と思われる読者もいらっしゃるでしょうけれど、御殿場まで乗ってきた編集部のF氏の感想も、「軽快で、いいですよ」というものだった。
試乗車のエクストレイル ロッククリークの車重は車検証で1870kg。同クラスのSUVのハイブリッドの4WDモデルは、例えば新型「トヨタRAV4」は1700kgちょっと、「スバル・フォレスター」は1700kg台半ば、「ホンダZR-V」は1600kg台である。100kg以上も重い理由は定かではないものの、ひとつにはホイールベースが2705mmと、ライバルより長めで、ボディーがちょっと大きい。ということはある。そのぶん、後席の居住空間はゆとりがある。
でもって、100%電気自動車(BEV)のレクサスRZ550e“Fスポーツ”より270kgも軽い。おまけに発電にVCターボを用いる「e-POWER(イーパワー)」の前輪用モーターは最高出力204PS、最大トルク330N・mを発生する。ロッククリークはAWD、日産でいうところの「e-4ORCE(イーフォース)」専用だから、後輪を駆動するモーターも備えており、こちらは136PS、195N・mを生み出す。最大トルクを瞬時に発揮できるモーター駆動なのだから、内燃機関駆動以上の軽快感を持っているのも当然なのだ。
モーターの要求に必死に応えるVCターボ
レクサスとの比較で申し上げれば、RZ550eの20インチに対して、ロッククリークは19インチと、タイヤ&ホイールがひと回り小径なこともある。どっしりしたRZとは異なり、こちらはバネ下がやたらバタバタする。路面の凸凹に対してサスペンションが一生懸命動いている。それでも比較的フラットな姿勢をたもてるのはe-4ORCEの前後モーターのトルク配分とブレーキ制御が黒子となって働いているからだろう。
BEVのレクサスRZより剛性感が低いことも軽快さにつながっているように思う。どっしり、しっとりのRZに対して、エクストレイルには乾いたサクサク感がある。ブリヂストンのスタッドレスの当たりの柔らかさも、マイルドな乗り心地に貢献しているはずだ。
山道の登りで全開にすると、エンジン音がいささか興ざめであることは否めない。モーターのトルクが早めにピークに達し、天井につかえている感もある。1.5リッター直列3気筒のVCターボはけなげにモーターが要求する発電量に応えるべく、いつもより多めに回っているのに……。世界初の量産可変圧縮比エンジンたるVCターボは最高出力144PSを4400-5000rpmで、最大トルク250N・mを2400-4000rpmで生み出す。144PSと250N・mの内燃機関で、フロントだけで204PSと330N・mを発生するモーターのためにがんばっているのだ。
あくまでタフギア“感”
サスペンションはやや柔らかめで、うねった路面だとボディーがあおられる。そのぶん、コーナーでは自然なロールを見せる。ヒラリヒラリと軽快に。こういうときもe-4ORCEはひと知れず奮闘しているはずだ。ドライバーが落ち着いていられるのは、ステアリングに伝わる振動が少ないから、ということもあるかもしれない。もちろんこれも、モーター駆動だからである。
2025年秋、日産エクストレイル(T33型)初のマイナーチェンジを機に登場した新グレードのロッククリークは、見た目はゴツいけれど、運転しての感覚は乗用車的、というのは、それはそうなんである。ロッククリークと同時に発表された「AUTECHスポーツスペック」と「NISMO」同様、日産モータースポーツ&カスタマイズ(NMC)が手がけるカスタムカーなのに、NMCの匠(たくみ)ドライバーによるチューニングは施されていないからだ。ロッククリークの最大の目玉は初代(T30型)以来のDNAである「タフギア」感を強めた内外装にある。山道ではそこがちょっと残念。と思ったのですけれど、自分も含め、多くのひとが毎日山道を走るわけでなし。フツーに走っているときの静かさ、快適さこそ、e-POWERの味わいどころである、と思うべきなのだ。実際、筆者は御殿場から東京までの1時間半ほどドライブしたのに、ほとんど記憶がない。嫌なところ、神経に引っかかるところがまるでないからだと思う。
なお、ロッククリークのベースは、エクストレイルの真ん中のグレード「X e-4ORCE」で、シートは2列か3列かを選ぶことができる。試乗車は2列シートで、専用色の「キャニオンベージュ×スーパーブラック」の2トーンをまとっている。筆者の目にはノーズのシルバーの3連スロットがイカして見える。これらは冷却のためではなく、単なるメッキの飾りにすぎないけれど、自動車にとって飾りは『飾りじゃないのよ涙は』というヒット曲の主張とは異なり、大切なデザイン上の要素である。それはもう、「ランボルギーニ・ミウラ」のまつ毛とかBMWのキドニーグリルとかの例を持ち出すまでもない。
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どうした「eペダルステップ」!?
専用フロントバンパーや19インチの専用アルミホイール、内装ではステアリングホイール、パッド類のステッチに用いられたラバレッド(lava=溶岩)というオレンジ色の差し色も個性化に貢献している。
最後に「eペダルステップ」について触れておきたい。ワンペダル感覚のドライブを実現する、モーター駆動車ではよくあるモードの一種で、このワンペダルを箱根で楽しんでみよう。と思って試してみたら、ドキッとした。アクセルペダルから足を離せば、回生ブレーキによって最大0.2Gの減速度が発生するはずなのに、全然効かない!? 慌ててブレーキペダルを踏んでみたらブレーキペダルのストロークがない!? これはいかん。とeペダルの機能を解除することで難を免れた。長い下り坂で電池が満充電になるとお腹いっぱいになって回生ブレーキが働かなくなるらしい。長い下り坂でeペダルを使ってはいけないのだ。ご注意ください。
燃費は都内~箱根往復で9.8km/リッターと、VCターボ搭載の第2世代e-POWERは依然、高速燃費を苦手にしている。さらなる改良を期待したい。ホンダのe:HEVのように高速走行時はエンジン直結にするのが近道ではあるまいか。ハイブリッド時代はもうちょっと長く続きそうだし……。
要改善点はあるにしても、限られた資源のなか、NMCはがんばっていると筆者は思う。南無がんばれ日産本体。世界中のファンが祈っている。
(文=今尾直樹/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝/車両協力=日産自動車)
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テスト車のデータ
日産エクストレイル ロッククリークe-4ORCE
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4690×1840×1720mm
ホイールベース:2705mm
車重:1870kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.5リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:144PS(106kW)/4400-5000rpm
エンジン最大トルク:250N・m(25.5kgf・m)/2400-4000rpm
フロントモーター最高出力:204PS(150kW)/4501-7422rpm
フロントモーター最大トルク:330N・m(33.7kgf・m)/0-3505rpm
リアモーター最高出力:136PS(100kW)/4897-9504rpm
リアモーター最大トルク:195N・m(19.9kgf・m)/0-4897rpm
タイヤ:(前)235/55R19 101Q/(後)235/55R19 101Q(ブリヂストン・ブリザックVRX3)
燃費:--km/リッター
価格:475万6400円/テスト車=537万8052円
オプション装備:ロッククリーク専用ボディーカラー<キャニオンベージュ×スーパーブラック 2トーン>(9万3500円)/インテリジェントアラウンドビューモニター<移動物検知、3Dビュー機能付き>+NissanConnectインフォテインメントシステム+車載通信ユニット+ETC2.0ユニット<ビルトインタイプ>+USBタイプC電源ポート<フロント2個、リア2個>+100V AC電源<1500W、ラゲッジルーム>+プロパイロット緊急停止システム<SOSコール機能付き>+SOSコール(33万7700円) ※以下、販売店オプション 日産オリジナルドライブレコーダー<フロント+リア>(10万1812円)/オプションウィンドウはっ水12カ月<フロントウィンドウ1面+フロントドアガラス2面はっ水処理>(1万3640円)/ラゲッジトレイ(1万7800円)/「ROCK CREEK」デュアルカーペット(5万7200円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:1410km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:401.5km
使用燃料:41.0リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:9.8km/リッター(満タン法)/10.3km/リッター(車載燃費計計測値)

今尾 直樹
1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。
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