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第129回:日本のカーデザインに足りないもの・欠けているもの(後編) ―プロポーションの進化と「駄作」の消失に見る、日本車の現在地―

2026.09.23 カーデザイン曼荼羅 渕野 健太郎清水 草一
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レクサスが擁する大型のラグジュアリーSUV「LX」。渕野氏いわく、このクルマには、日本のカーデザインに見るひとつの傾向が表れているというのだが……。
レクサスが擁する大型のラグジュアリーSUV「LX」。渕野氏いわく、このクルマには、日本のカーデザインに見るひとつの傾向が表れているというのだが……。拡大

今や欧州と立場が逆転? 世界的に見ても高い水準にあるという日本のカーデザインだが、そこには本当に足りないものはないのか? 今後、さらなる発展を望むうえで必要なものとはなにか? カーデザインの識者と、日本の自動車デザインの“今”を考えた。

※今回の内容は、2026年8月24日に開催した「ぶしつけ御免! 人気連載『カーデザイン曼荼羅』公開収録&交流会」の内容を編集したものです。

(前編に戻る)

渕野「カーデザインの評論などで“塊感”という言葉が出てきたら、ラグビーボールを思い描いてください。断面形状が円形で、前後の縁が中心に向かって収束していて……」 
(写真:Unsplash/Wilson Stratton)
渕野「カーデザインの評論などで“塊感”という言葉が出てきたら、ラグビーボールを思い描いてください。断面形状が円形で、前後の縁が中心に向かって収束していて……」 
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渕野「“踏ん張り感”については、例えばチーターですかね」 
ほった「そういえばマツダも、『魂動』デザインの開発に際しては、ネコ科の動物をモチーフのひとつに挙げていましたね」
渕野「“踏ん張り感”については、例えばチーターですかね」 
	ほった「そういえばマツダも、『魂動』デザインの開発に際しては、ネコ科の動物をモチーフのひとつに挙げていましたね」拡大
レンジローバーファミリーのミドルレンジを担う「ヴェラール」。デビューは2017年と、必ずしも新しいクルマではないが、そのデザインは今なお先鋭的だ。
レンジローバーファミリーのミドルレンジを担う「ヴェラール」。デビューは2017年と、必ずしも新しいクルマではないが、そのデザインは今なお先鋭的だ。拡大
ほった「クルマの軸が明瞭で、しかも顔もお尻もがっつり丸められてるんですよね」 
渕野「後ろから見ても、車体の下部がリアの中心へと収束している。これほどラグビーボール的なプロポーションを持つクルマは、ほかにないでしょう」
ほった「クルマの軸が明瞭で、しかも顔もお尻もがっつり丸められてるんですよね」 
	渕野「後ろから見ても、車体の下部がリアの中心へと収束している。これほどラグビーボール的なプロポーションを持つクルマは、ほかにないでしょう」拡大
渕野「フロントクオータービューで見ると、シルエットが台形で、かつボディーのアウトラインがきれいにタイヤにかかっているでしょう。これも踏ん張り感を演出するキモなんですよ」
渕野「フロントクオータービューで見ると、シルエットが台形で、かつボディーのアウトラインがきれいにタイヤにかかっているでしょう。これも踏ん張り感を演出するキモなんですよ」拡大

プロポーションに対する意識が甘い?

渕野健太郎(以下、渕野):いよいよ今日の本題、「日本車のデザインに足りないもの」についてお話したいと思います。

webCGほった(以下、ほった):ついに来ますか。

渕野:はい、あえて絞り出した課題です(笑)。

あくまで時たまですけど、日本車のデザインは、「プロポーションよりもデザインモチーフを優先させる」ことがあるんですよね。

清水草一(以下、清水):全体より細部を優先させる、みたいな感じかな?

渕野:そうです。ここでいうプロポーションとは、“塊感”と“踏ん張り感”の2つです。塊感というのは、ラグビーボールのような強い芯が感じられることです。(スクリーンに写真を写す)この「レンジローバー・ヴェラール」みたいに。

清水:まずラグビーボール。

ほった:普通のボールじゃクルマになりませんからね。

清水:「スズキ・ツイン」くらいか(笑)。

渕野:ヴェラールのシルエットを見ると、ルーフラインだけじゃなくボディーの下側もなんとなくそれに沿っている。そして真ん中の軸の部分に、ドアのピーク面がズドーンとあるわけです(写真参照)。これで一体感が生まれて、塊感が出ているんです。

フロントクオーターから見たときも、真ん中にすごい芯がある。このクルマは、顔まわりもパンって張っていて、全体に沿った丸さが感じられるかなと思います。そのようにして、ラグビーボール的なプロポーションが完成しているわけです。このクルマのデザインは、本当にスゴいですよね。

清水:なるほど。

渕野:続いて“踏ん張り感”ですけど、例えばチーター。チーターは顔や体が小さくて、足が長いですよね。言葉にすると的確な表現が難しいのですが、要は踏ん張り感というのはこれだと思っていて、それをクルマでも表現しなきゃいけない。

ほった:チーターでいう足の長さが、クルマではタイヤの存在感になるわけですね。

渕野:ヴェラールを見ると、ボディーとタイヤでキレイにシルエットを連動させることで、踏ん張り感をしっかり出しています。

レクサスLXに見る日本車の傾向

渕野:この2点を踏まえて、次の写真を見てください。清水さんの大好きな「レクサスLX」です。

清水:この顔大好きですよ! このグリルはほんとにすごい。

ほった:小沢仁志ばりの顔面凶器ですね。

渕野:自分もLXがダメと言ってるわけではないんです。担当されたデザイナーがこれをデザインしたときは、「四角いボリューム」「力強いフェンダー」「大胆な顔まわり」「高級感」「唯一無二の個性」みたいなことを意図したんだと思います。

ほった:まさにそんな感じですね。

渕野:ただ、このLXを「メルセデス・ベンツGLS」「レンジローバー」「ジープ・グランドチェロキー」あたりと並べてみましょう。さっき言った塊感や踏ん張り感に注目すると、明らかにLXだけ違いますよね。

ライバルは大きな塊感があって、タイヤもしっかり踏ん張っている。レンジローバーはその最たるもので、そこだけに注力しているって言ってもいいぐらいです。斜め前からだと、リアのオーバーハングなんて全く見えません。実際にはお尻はすごく長いのに。それで踏ん張って見えるわけです。グラチェロも高いところに強い軸が通っているし、GLSも全体のイメージはラグビーボールに近い。

一方、LXは、ちょっとこれだけ違う感覚です。まずはタイヤが小さく見える。すごくフェンダーがでかいのと、リアのコーナー部があまり絞り込まれていないことなどが原因です。

清水:LXはエラが張ってることに意義があるって感じですから!

渕野:もうひとつ興味深いのはグリルです。例えばGLSを見ると、ボディーの断面がそのままグリルにつながったようなプロポーションでしょう。ほかもそうです。でもレクサスは真逆ですよ。

ほった:造形とは無関係にグリルだけ貼り付けたような。

渕野:それを個性にしてはいるんですけど、LXに関してはあまりにその主張が強くて、プロポーションとしては邪魔になっている。

清水:LXは顔ありきですからね。「顔だけ見てましょう!」みたいな。

ほった:とにかく、LXはこういうあたりが「プロポーションよりもデザインモチーフを優先させている」っていうわけですね。

上から順に、「レクサスLX」「メルセデス・ベンツGLS」「ジープ・グランドチェロキーL」「レンジローバー」。
上から順に、「レクサスLX」「メルセデス・ベンツGLS」「ジープ・グランドチェロキーL」「レンジローバー」。拡大
渕野「『レンジローバー』は、本当にプロポーションに対する執念がスゴいですよね。あんなにリアオーバーハングが長いのに、この角度で見たら、まったくお尻が見えない」
渕野「『レンジローバー』は、本当にプロポーションに対する執念がスゴいですよね。あんなにリアオーバーハングが長いのに、この角度で見たら、まったくお尻が見えない」拡大
「レクサスLX」のフロントクオータービュー。「レンジローバー」などと比べると、コーナーの絞り込みが小さいために、タイヤからボディーがはみ出して見える。またドアの下方、車体下部も内巻きにせず、そのままストンと落としている感じで、“塊感”はあまりない。
「レクサスLX」のフロントクオータービュー。「レンジローバー」などと比べると、コーナーの絞り込みが小さいために、タイヤからボディーがはみ出して見える。またドアの下方、車体下部も内巻きにせず、そのままストンと落としている感じで、“塊感”はあまりない。拡大
フロントグリルのグラフィックも、ボディーの形状からすると脈絡のないもので唐突感があるものだが……。 
清水「まぁ『LX』は、この顔ありきのクルマですから!」
フロントグリルのグラフィックも、ボディーの形状からすると脈絡のないもので唐突感があるものだが……。 
	清水「まぁ『LX』は、この顔ありきのクルマですから!」拡大

日本とヨーロッパの逆転現象

ほった:要約すると、プロポーションに対する意識の甘さが「日本のカーデザインに欠けていること」という理解でよろしいでしょうか?

渕野:そうですね。ただ、このLXにしても、登場したのはもう結構前なんですよね?

ほった:現行型の発表は2021年10月ですね。

渕野:もっと新しい「レクサスGX」を見ると、以前のレクサスはフロントグリルのグラフィックがバーンって出るようなデザインだったのに対して、そうじゃなくなってきているのが分かります。

LXは踏ん張り感を顔のグラフィックで表現していた。それが、より新しい車種になると、実際にタイヤをしっかり目立たせていて、グリルのほうはそうでもなくなっています。踏ん張り感をタイヤで表現するようになっている。

ということで、最近は日本車も、よりプロポーションにこだわってきているんじゃないかと思います。

ほった:デザインの王道に進んでいるわけですね。

清水:小手先も大事だよ(笑)。GXの顔は物足りないと思うなぁ。

渕野:そういう意見もあるんでしょう。一部のヨーロッパ車は、日本車とは逆の方向に進んでいますよね。例えば「BMW X5」(その1、その2)。旧型・新型を見比べると、やっぱりプロポーションへのこだわりは旧型のほうが大きいと思うんですよ。新型はフェンダーのボリュームが強すぎるし、リアもそんなに絞られていない。ヨーロッパ車のほうが、逆にプロポーション重視のデザインから外れたものになってきている。

清水:以前の日本車みたいになってきてるわけですか。

渕野:そうですね。10年ぐらい前までの日本車みたいに、グラフィックを重要視して、プロポーションが少し崩れたモデルが増えていると思います。

ほった:これについては、“顔が命”の清水さん的には、わが意を得たりなんじゃないですか?

清水:いやいやいや。欧州車ファンとしては、最近のモデルにはかなり残念なのが増えていると思うよ。小細工に走ってるんだよね。日本車は逆で、大胆かつ本質に迫ろうとしてる……。

ほった:さっきと言ってることが逆ですがな(笑)。

渕野:でも、自分の感覚でもそうですね。

ほった「プロポーションがいい/悪いというか……。そもそも『レクサスLX』って、グラフィックがコテコテしていてフェンダーやボンネットの隆起もスゴいから、その下の“素のボディー”がどんな形をしているのか、いまいち分からないんですよね」
ほった「プロポーションがいい/悪いというか……。そもそも『レクサスLX』って、グラフィックがコテコテしていてフェンダーやボンネットの隆起もスゴいから、その下の“素のボディー”がどんな形をしているのか、いまいち分からないんですよね」拡大
2023年6月に世界初公開された「レクサスGX」。各部のグラフィックはいささか煩雑だが、フェンダーをしっかり張り出させるなど、車体形状そのものでプロポーションのよさを表現するようになった。
2023年6月に世界初公開された「レクサスGX」。各部のグラフィックはいささか煩雑だが、フェンダーをしっかり張り出させるなど、車体形状そのものでプロポーションのよさを表現するようになった。拡大
先代にあたる4代目「BMW X5」(上)と、先日発表されたばかりの5代目X5(下)。 
清水「僕は新型のほうがイイと思うけどなぁ」 
ほった「好みの違いはありましょうが、新型のほうが頭でっかちの尻でっかちになったのは事実でしょう」
先代にあたる4代目「BMW X5」(上)と、先日発表されたばかりの5代目X5(下)。 
	清水「僕は新型のほうがイイと思うけどなぁ」 
	ほった「好みの違いはありましょうが、新型のほうが頭でっかちの尻でっかちになったのは事実でしょう」拡大
2026年7月に発表されたばかりの、アウディのフルサイズSUV「Q9」。 
清水「最近は欧州車でも、グラフィック頼りのクルマが増えて……」 
ほった「“顔が命”の清水さんでも、最近の欧州車はやっぱりNGなんですね」
2026年7月に発表されたばかりの、アウディのフルサイズSUV「Q9」。 
	清水「最近は欧州車でも、グラフィック頼りのクルマが増えて……」 
	ほった「“顔が命”の清水さんでも、最近の欧州車はやっぱりNGなんですね」拡大

デジタルが押し進めたデザインの進化と画一化

清水:20年くらい前まで、日本のカーデザインって凡庸なのばっかりだったじゃないですか。どうしてこんなに日本車から駄作がなくなったんですかね? AIですか?

渕野:これまでやってきた感覚から話しますと、一番の理由は“デジタル”だと思います。

例えば『YouTube』などの媒体で、海外メーカーのデザインプロセスであったり、スケッチであったり、あるいはクルマそのものの動画が、自由に見られるようになりましたよね。だいたい20年ぐらい前から。それが大きなきっかけだった。

あるいは、3Dでそれぞれのクルマを並べて、客観的に検討できるようにもなりました。海外のクルマを3Dスキャンでデータ化して、こちらがデザインしたものとVR空間に並べることができるんです。それで「ここが足りない、ここがいい」といった検討が、ものすごくしやすくなった。この2つが大きいかな。

中国でカッコいいクルマがポンポン出てきているのも、そういうことかなと思います。

清水:そうすると、次はもう中国に追い越されるということですね。これは防ぎようがない?

渕野:そういう可能性もなくはないと思います。一番そこに危機感を持っているのが、ヨーロッパのメーカーなのでしょう。なんとか今までと違うものを出そうとして(「BMW 7シリーズ」の写真を示しつつ)……こういう風になってるのかもしれない。

清水:小手先の巨大グリルとか!(笑)

デザイン開発の現場では、先進的なデジタル技術が積極的に取り入れられており、多くのメーカーが3DスキャンおよびVRを活用した、開発・評価システムを導入している。
デザイン開発の現場では、先進的なデジタル技術が積極的に取り入れられており、多くのメーカーが3DスキャンおよびVRを活用した、開発・評価システムを導入している。拡大
デジタル技術の革新は、日本車のデザインが欧州車をキャッチアップするのに大いに貢献したが、それは他国のメーカーにも言えることだ。うかうかしていたら、今度は日本車が中国車に追い落とされるかもしれない。写真は2026年1月に欧州で発表された「ジーカー7GT」。
デジタル技術の革新は、日本車のデザインが欧州車をキャッチアップするのに大いに貢献したが、それは他国のメーカーにも言えることだ。うかうかしていたら、今度は日本車が中国車に追い落とされるかもしれない。写真は2026年1月に欧州で発表された「ジーカー7GT」。拡大
超巨大キドニーグリルで注目を集める、最新の「BMW 7シリーズ」。このデザインも、追い上げてくる新興メーカーを迎え撃つための、苦闘の結果なのかもしれない……。
超巨大キドニーグリルで注目を集める、最新の「BMW 7シリーズ」。このデザインも、追い上げてくる新興メーカーを迎え撃つための、苦闘の結果なのかもしれない……。拡大

愛すべき駄作の消失に思う

ほった:話を日本のカーデザインに戻しますけど、清水さん的には、今の日本車にはナニが足りないと思いますか?

清水:今、日本車のデザインに一番足りないのは「駄作」だと思う。本当に駄作がなくなった。多様性が失われた。カーマニア的には寂しいんですよ、ボロカスに言える対象がないんですから。まず「日産マーチ」がなくなったでしょ。

ほった:ずいぶん前に生産終了しましたね。

清水:「三菱ミラージュ」もなくなった。「トヨタ・パッソ/ダイハツ・ブーン」もなくなった。それが日本に残る貴重な3大駄作だった(笑)。凡庸な、面のぶったるんだ安物感満点のデザイン。それが全部なくなった。

渕野:それ、貴重ですか?(笑) 自分は一概に駄作とは言いませんし、やっぱりそれなりにコンセプトがあってのデザインだったとも思いますけど。

ほった:変なデザインを容認できる環境がなくなりつつあるのも、日本のカーデザインの課題ってことですかね。

渕野:清水さんが言われてることは分かります。ただ、今はもう遊んでる場合じゃないんですよ、自動車メーカーは。一車種コケたら会社が終了ってぐらい、ギリギリのところでやってますから。どのモデルでも、それなりに収益を上げないといけない。

ほった:モデル数も絞られてるし、失敗してる余裕はないんですね。

渕野:そういうことです。

清水氏が「日本車最後の駄作」と語る3台。上から順に「トヨタ・パッソ」(2016-2023年)、「日産マーチ」(2010-2022年)、「三菱ミラージュ」(2012-2023年)。
清水氏が「日本車最後の駄作」と語る3台。上から順に「トヨタ・パッソ」(2016-2023年)、「日産マーチ」(2010-2022年)、「三菱ミラージュ」(2012-2023年)。拡大
ちなみに、清水氏が語る日本車史上最高のダメデザインは、三菱の「ミラージュディンゴ」(特に前期型)とのこと。ご世間の評判もイマイチだったようで、モデルライフは1999年~2002年と短命に終わった。
ちなみに、清水氏が語る日本車史上最高のダメデザインは、三菱の「ミラージュディンゴ」(特に前期型)とのこと。ご世間の評判もイマイチだったようで、モデルライフは1999年~2002年と短命に終わった。拡大
渕野「今は、新車がコケたら会社が傾くような時代ですからね。よくも悪くも、ちゃんとしたものしか世に出せないんですよ」
渕野「今は、新車がコケたら会社が傾くような時代ですからね。よくも悪くも、ちゃんとしたものしか世に出せないんですよ」拡大

いびつなプロポーションもひとつの個性?

清水:そういう意味だと、今の日本車はデザインもよくてちゃんと売れているから、正しい道を行っているのか。でも、それでもまだ、例えば超高級車の分野だと、日本車はたいていルックスが……。いやまぁ、超高級車自体が日本にはほとんどありませんが。

ほった:ようやくトヨタが「センチュリー」でそこに挑もうって段ですからね。ショーカーのクーペはともかく、センチュリーのSUVとかを見ると……。

清水:練習量が全然足りないね。

渕野:それはあると思います。スーパーカーとかにしても、急に「やれ」って言われても、それはなかなか難しい。

清水:幅広くしてペッタンコにして、でっかいタイヤをつけておけば自動的にカッコよくなるはずなのに、なかなかそういうのはつくれないんですね。

渕野:今はフェラーリでさえ、「それ?」っていう感じがちょっとしますしね(笑)。

清水:全然ですね。私の個人的な意見としても。

ほった:フェラーリでさえそうなんだから、日本車が本格的にラグジュアリーカーやスーパーカーに挑戦し始めたら、清水さんの求める駄作がボンボン輩出されるかもしれませんよ(笑)。そして渕野さん、そろそろお時間です。

渕野:今回の話をまとめると、日本のカーデザインっていうのは、最初に話したように「創造性の豊かさ」が強みだと思います。一方で、プロポーションをやや犠牲にする傾向にはあったのですが、それも今ではずいぶん減ってきている。

ではこの現状はどうなのだというと、「多様性に寛容」なことの表れだと思うんですよ。日本のメーカーだけじゃなくて、日本人そのものがそうだと思います。街を見たら、ミニバンがいて、軽のトールワゴンがいて、スポーツカーがいて、セダンがいて、こんなにバリエーションが幅広いのは日本ならではです。それだけクルマの形に対して寛容なんですね。今回、ここで話す内容を考えていたら、プロポーションがやや崩れたクルマがあることすら、それ自体が日本車ならではの個性なんじゃないかっていうふうにも思えてきました。

っていうことで、おしまいです(笑)。

ほった:これが日本のカーデザインの現在地であるということで。皆さん、長時間ありがとうございました(拍手)。

(語り:渕野健太郎、清水草一、webCG堀田剛資/まとめ=清水草一/写真=BMW、JLR、アウディ、トヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業、マツダ、三菱自動車、メルセデス・ベンツ、Unsplash、newspress、webCG/編集=堀田剛資)

「ジャパンモビリティショー2025」で発表された、センチュリーのコンセプトモデル。トヨタは、センチュリーを超高級車ブランドへと格上げするつもりのようだが……。
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お値段2700万円の「センチュリー(SUV)」のデザインがこちら。 
清水「うーむ。天下のトヨタとはいえ、このジャンルではまだまだ練習不足ということか……」
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ほった「でもスーパーカーの分野については、意外と心配していないんですけどね。『マツダRXビジョン』とか……」 
清水「それ、発売してないじゃん」
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ほった「清水さんが絶賛していた、『日産ハイパーフォース』なんてのもありますが」 
清水「だから、発売してないじゃん!」
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清水「日本のスーパースポーツの正否に関しては、ひとまずはトヨタの『GR GT』や『レクサスLFAコンセプト』の市販版がどうなるかだね」
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2026年8月24日に開催した、「ぶしつけ御免! 人気連載『カーデザイン曼荼羅』公開収録&交流会」の様子。来場された皆さま、本当にありがとうございます。そして本稿を読んで興味を持たれた方、次回があったら、ぜひご参加くださいませ。
2026年8月24日に開催した、「ぶしつけ御免! 人気連載『カーデザイン曼荼羅』公開収録&交流会」の様子。来場された皆さま、本当にありがとうございます。そして本稿を読んで興味を持たれた方、次回があったら、ぜひご参加くださいませ。拡大
渕野 健太郎

渕野 健太郎

プロダクトデザイナー兼カーデザインジャーナリスト。福岡県出身。日本大学芸術学部卒業後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)にカーデザイナーとして入社。約20年の間にさまざまなクルマをデザインするなかで、クルマと社会との関わりをより意識するようになる。主観的になりがちなカーデザインを分かりやすく解説、時には問題定義、さらにはデザイン提案まで行うマルチプレイヤーを目指している。

清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

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