第345回:10秒ごとの快感
2026.09.28 カーマニア人間国宝への道顔よりもデカさで勝負
担当サクライ君からメールが来た。
「今度、日産の新型『エルグランド』にお乗りいただけますが、ご興味ございますか?」
愛車候補としては興味ゼロだが、カーマニアとしては興味大アリなので、「あるある~」と返信して当日を待った。
その夜。わが家に横づけされたエルグランドは、やっぱりデカかった。
オレ:デカいね!
サクライ:デカいです。「アルファード」よりも背が高く幅が広いです。
オレ:顔の迫力で負けるぶん、デカさで勝負ってことだね!
サクライ:そういうことでしょうか。
私はまず助手席に乗った。高級ミニバンは、ドライバーとしてよりも、パッセンジャーとして乗るのが吉な乗り物だからである。
助手席で味わうエルグランドは、うわさどおり静かだし、乗り心地がよくて快適だった。いろんな試乗記(参照)に書いてあるとおり、走りに関してはアルファードに勝っているかもしれない。
首都高に乗り、代々木PAで交代。運転席に収まり、いよいよ試乗開始だ。
走りだした瞬間から、「これはイイ!」という確信が湧いた。
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首都高では10台に1台がアルファード
1.5リッター直3ターボで発電する第3世代「e-POWER」は実にスムーズ。前後2つのモーターは余裕のトルクを生み、アルファードの「THS(トヨタ・ハイブリッド・システム)」が安っぽく思えるほど、高級感に満ちていた。
シャシーもしっかりしていて、コーナリングがピシッと決まる。ドライブモードを「スタンダード」から「コンフォート」に切り替えると、ロールが大きくなってコーナリングがピシッと決まらなくなり、「スポーツ」にすると、今度は乗り心地がいまひとつになったが、ひたすらスタンダードモードで走り続ければオッケーだ。
サクライ:このクルマ、アルファードより少し背が高くて、上から見下ろせるんですよ。
オレ:そうなの?
サクライ:ほら、あそこにアルファードがいるでしょう。あれを見下ろせます。
確かにエルグランドの運転席からは、アルファードをほんのちょっと見下ろすことができた。このテの高級ミニバンにとって、どっちが高いところに座っているかは重要。エルグランドのオーナーは、アルファードの隣を走るたびに、優越感を得られる仕組みである。
オレ:でもさ、デザインではかなり負けてるよね。
サクライ:そうですか? 僕はこっちのほうが好きですけど。あそこにもアルファードがいるからよく見ましょう。
オレ:考えてみると、首都高ってものすごくアルファードが多いね!
サクライ:ものすごく多いですね。
オレ:10台に1台はアルファードって感じだね!
サクライ:それくらいはいるかもしれません。
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エルグランドには大いに価値がある
世の中がアルファードだらけなのは知っていたが、エルグランドに乗っていると、あらためてその事実に呆れた。多い! あまりにも多い! そこらじゅうアルファード! 東京にはハイヤーやら社用車やら宮内庁御料車やらのアルファードも多いので、本当の本気で10台に1台くらいアルファードという印象だ。つまりアルファードの海である。
その海をエルグランドで渡る。こっちのほうが走りはいいし、着座位置もほんのちょっと高い。そして希少性は30万倍だ(いまのところ)。デザインでは負けるが、現時点でのカーマニア的な総合評価は、エルグランドの圧勝だ。
オレ:サクライ君、もし仮にいま、アルファードかエルグランドのどっちかを買わなきゃならないなら、カーマニアとしては絶対エルグランドだね!
サクライ:そうですね。
オレ:エルグランドに乗れば、アルファードの大群と戦う孤高の戦士になれるもん!
サクライ:同感です。
オレ:しかもしかも、アルファードとすれ違うたびに、ひそかな優越感に浸れるんだから、10秒に1回くらい気持ちイイよ!
サクライ:すごいですね。
オレ:もちろん1mmも欲しくないけど!
サクライ:僕もです。
1mmも欲しくないけど、エルグランドには大いに価値があることを痛感した夜だった。
追伸
辰巳PAからの帰路、2列目シートに座ったら、前方視界を巨大なモニター(オプション)に塞がれて、クルマ酔いしてしまいました。カーマニアには前方視界が命。こんなもん付けないでくれ~。
(文=清水草一/写真=清水草一、webCG/編集=櫻井健一/車両協力=日産自動車)
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清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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