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第345回:10秒ごとの快感

2026.09.28 カーマニア人間国宝への道 清水 草一
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顔よりもデカさで勝負

担当サクライ君からメールが来た。

「今度、日産の新型『エルグランド』にお乗りいただけますが、ご興味ございますか?」

愛車候補としては興味ゼロだが、カーマニアとしては興味大アリなので、「あるある~」と返信して当日を待った。

その夜。わが家に横づけされたエルグランドは、やっぱりデカかった。

オレ:デカいね!
サクライ:デカいです。「アルファード」よりも背が高く幅が広いです。
オレ:顔の迫力で負けるぶん、デカさで勝負ってことだね!
サクライ:そういうことでしょうか。

私はまず助手席に乗った。高級ミニバンは、ドライバーとしてよりも、パッセンジャーとして乗るのが吉な乗り物だからである。

助手席で味わうエルグランドは、うわさどおり静かだし、乗り心地がよくて快適だった。いろんな試乗記(参照)に書いてあるとおり、走りに関してはアルファードに勝っているかもしれない。

首都高に乗り、代々木PAで交代。運転席に収まり、いよいよ試乗開始だ。

走りだした瞬間から、「これはイイ!」という確信が湧いた。

2026年7月に発売された日産の新型「エルグランド」。最新モデルは4世代目にあたり、2010年に3代目が登場して以来、16年ぶりの全面改良となる。
2026年7月に発売された日産の新型「エルグランド」。最新モデルは4世代目にあたり、2010年に3代目が登場して以来、16年ぶりの全面改良となる。拡大
新型「エルグランド」のラインナップはエントリーグレード「X e-4ORCE」と上級グレード「G e-4ORCE」の2タイプ。今回は車両本体価格が757万9000円の後者に試乗した。
新型「エルグランド」のラインナップはエントリーグレード「X e-4ORCE」と上級グレード「G e-4ORCE」の2タイプ。今回は車両本体価格が757万9000円の後者に試乗した。拡大
水平基調のインストゥルメントパネルに置かれた14.3インチの大画面統合型インターフェイスディスプレイや、木目調パネルと一体化したシームレスな静電式スイッチ、2本スポークのステアリングホイールなどが目を引くコックピット。
水平基調のインストゥルメントパネルに置かれた14.3インチの大画面統合型インターフェイスディスプレイや、木目調パネルと一体化したシームレスな静電式スイッチ、2本スポークのステアリングホイールなどが目を引くコックピット。拡大
新型「エルグランド」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4995×1895×1975mm(「プロパイロット2.0」装備車の全高は1970mm)。ライバル車「トヨタ・アルファード」よりも45mm幅が広く、40mm車高が高い。
新型「エルグランド」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4995×1895×1975mm(「プロパイロット2.0」装備車の全高は1970mm)。ライバル車「トヨタ・アルファード」よりも45mm幅が広く、40mm車高が高い。拡大
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首都高では10台に1台がアルファード

1.5リッター直3ターボで発電する第3世代「e-POWER」は実にスムーズ。前後2つのモーターは余裕のトルクを生み、アルファードの「THS(トヨタ・ハイブリッド・システム)」が安っぽく思えるほど、高級感に満ちていた。

シャシーもしっかりしていて、コーナリングがピシッと決まる。ドライブモードを「スタンダード」から「コンフォート」に切り替えると、ロールが大きくなってコーナリングがピシッと決まらなくなり、「スポーツ」にすると、今度は乗り心地がいまひとつになったが、ひたすらスタンダードモードで走り続ければオッケーだ。

サクライ:このクルマ、アルファードより少し背が高くて、上から見下ろせるんですよ。
オレ:そうなの?
サクライ:ほら、あそこにアルファードがいるでしょう。あれを見下ろせます。

確かにエルグランドの運転席からは、アルファードをほんのちょっと見下ろすことができた。このテの高級ミニバンにとって、どっちが高いところに座っているかは重要。エルグランドのオーナーは、アルファードの隣を走るたびに、優越感を得られる仕組みである。

オレ:でもさ、デザインではかなり負けてるよね。
サクライ:そうですか? 僕はこっちのほうが好きですけど。あそこにもアルファードがいるからよく見ましょう。
オレ:考えてみると、首都高ってものすごくアルファードが多いね!
サクライ:ものすごく多いですね。
オレ:10台に1台はアルファードって感じだね!
サクライ:それくらいはいるかもしれません。

夜の首都高を快走する新型「エルグランド」。シャシーもしっかりしていて、コーナリングがピシッと決まる。駆動方式は4WDで、フロントモーターは最高出力205PS、最大トルク330N・mを、リアモーターは同136PS、同195N・mを発生する。
夜の首都高を快走する新型「エルグランド」。シャシーもしっかりしていて、コーナリングがピシッと決まる。駆動方式は4WDで、フロントモーターは最高出力205PS、最大トルク330N・mを、リアモーターは同136PS、同195N・mを発生する。拡大
クロームメッキを使わないフロントフェイスを特徴とする新型「エルグランド」。日本におけるフルサイズミニバンの絶対王者「アルファード」が迫力ある顔で勝負するなら、こちらはボディーのデカさで勝負か。
クロームメッキを使わないフロントフェイスを特徴とする新型「エルグランド」。日本におけるフルサイズミニバンの絶対王者「アルファード」が迫力ある顔で勝負するなら、こちらはボディーのデカさで勝負か。拡大
日本伝統の組子をモチーフとしたリアコンビランプは、フロントフェイスと対になるデザイン。「く」の字型に折れ曲がって見えるリアエンドも最新モデルの特徴といえる。
日本伝統の組子をモチーフとしたリアコンビランプは、フロントフェイスと対になるデザイン。「く」の字型に折れ曲がって見えるリアエンドも最新モデルの特徴といえる。拡大
最高出力140PS、最大トルク228N・mの発電専用となるZR15DDTe型1.5リッター直3エンジンに、モーターとインバーター、ジェネレーター、減速機、増速機をモジュール化した5-in-1ユニットを組み合わせた第3世代の「e-POWER」を搭載する。
最高出力140PS、最大トルク228N・mの発電専用となるZR15DDTe型1.5リッター直3エンジンに、モーターとインバーター、ジェネレーター、減速機、増速機をモジュール化した5-in-1ユニットを組み合わせた第3世代の「e-POWER」を搭載する。拡大

エルグランドには大いに価値がある

世の中がアルファードだらけなのは知っていたが、エルグランドに乗っていると、あらためてその事実に呆れた。多い! あまりにも多い! そこらじゅうアルファード! 東京にはハイヤーやら社用車やら宮内庁御料車やらのアルファードも多いので、本当の本気で10台に1台くらいアルファードという印象だ。つまりアルファードの海である。

その海をエルグランドで渡る。こっちのほうが走りはいいし、着座位置もほんのちょっと高い。そして希少性は30万倍だ(いまのところ)。デザインでは負けるが、現時点でのカーマニア的な総合評価は、エルグランドの圧勝だ。

オレ:サクライ君、もし仮にいま、アルファードかエルグランドのどっちかを買わなきゃならないなら、カーマニアとしては絶対エルグランドだね!
サクライ:そうですね。
オレ:エルグランドに乗れば、アルファードの大群と戦う孤高の戦士になれるもん!
サクライ:同感です。
オレ:しかもしかも、アルファードとすれ違うたびに、ひそかな優越感に浸れるんだから、10秒に1回くらい気持ちイイよ!
サクライ:すごいですね。
オレ:もちろん1mmも欲しくないけど!
サクライ:僕もです。

1mmも欲しくないけど、エルグランドには大いに価値があることを痛感した夜だった。

追伸
辰巳PAからの帰路、2列目シートに座ったら、前方視界を巨大なモニター(オプション)に塞がれて、クルマ酔いしてしまいました。カーマニアには前方視界が命。こんなもん付けないでくれ~。

(文=清水草一/写真=清水草一、webCG/編集=櫻井健一/車両協力=日産自動車)

体圧分布に優れる「ゼログラビティーシート」を全席で採用。2列目シートは、シートバック全体に加えて上部のみでもリクライニング可能な中折れタイプとなっている。足元も広く、キャビンは実に快適な空間に仕上げられている。
体圧分布に優れる「ゼログラビティーシート」を全席で採用。2列目シートは、シートバック全体に加えて上部のみでもリクライニング可能な中折れタイプとなっている。足元も広く、キャビンは実に快適な空間に仕上げられている。拡大
22スピーカーの「BOSEプレミアムサウンドシステム」を搭載。「映画館にいるような音響効果」がうたわれる。迫力ある低音と、包み込まれるようなサウンドを楽しむことができた。写真はフロントのヘッドレストスピーカー。
22スピーカーの「BOSEプレミアムサウンドシステム」を搭載。「映画館にいるような音響効果」がうたわれる。迫力ある低音と、包み込まれるようなサウンドを楽しむことができた。写真はフロントのヘッドレストスピーカー。拡大
12.8インチ液晶モニターをフロントシートのヘッドレスト後方に配置する「シートバックパーソナルリアモニター」は、左右セットで26万1000円となるオプションアイテム。
12.8インチ液晶モニターをフロントシートのヘッドレスト後方に配置する「シートバックパーソナルリアモニター」は、左右セットで26万1000円となるオプションアイテム。拡大
新型「エルグランド」は、ライバルの「アルファード」よりも走りがいいし着座位置もほんのちょっと高い。そのうえ希少性は30万倍(いまのところ)。押し出しの強さやシェアでは負けるが、現時点でのカーマニア的な総合評価は、エルグランドの圧勝だ。
新型「エルグランド」は、ライバルの「アルファード」よりも走りがいいし着座位置もほんのちょっと高い。そのうえ希少性は30万倍(いまのところ)。押し出しの強さやシェアでは負けるが、現時点でのカーマニア的な総合評価は、エルグランドの圧勝だ。拡大
清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

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