日産ムラーノ250XV(FF/CVT)【ブリーフテスト】
日産ムラーノ250XV(FF/CVT) 2010.03.02 試乗記 ……397万2150円総合評価……★★★★
4WDモデルのみだった「日産ムラーノ」に、FFモデルが登場。個性派SUVの走りは、駆動方式によってどんな違いを見せるのか? 上級「XV」グレードで試した。
“ファミリーカー”の白眉
この「日産ムラーノ」は、アメリカ市場からの帰国仕様車である。SUVといえど「必ずしも4WDでなくとも用途にかなう」というユーザーは多く、たしかに“背の高いセダン”だと思って使えば、ファミリーカーとしてむしろ使いやすい内容を備えている。
そう、ファミリーカーだからといって、背が低くなければならないことはない。広い室内や使いやすさなどが優先されるつくり――とりわけその視点の高さは、女性でも運転しやすく、外がよく見えるから子供たちからも歓迎されよう。ときに心ない高性能車などに威嚇されそうなシチュエーションでも物怖じする必要のない重量級の体躯があれば、安心も広がるというものだ。
だからこのボディに加えて、走行感覚が軽快で、購入費や維持費も安くあがれば万々歳である。それが、新たに追加されたFFモデルだ(ベース価格は300万円を切るし、10・15モード燃費は11.6km/リッター)。4WDでなくともFFであれば、多少の降雪でもFRより走りやすいし、持ち前のロードクリアランスが味方してくれる。詳細は後述するとして、生活臭の感じられるミニバンとは一線を画する、このボディスタイリングも魅力のひとつだ。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
ムラーノは、日産のクロスオーバーSUV。初代は2002年に北米でデビュー。当初日本導入の予定はなかったが、彼の地での人気に推されて日本でも2004年に発売。2代目となる現行型は、それからちょうど4年を経た2008年9月に日本で発売された。
初代は基本コンポーネンツを「マキシマ」ベースとし、エンジンは3.5リッターV6(VQ35DE)/2.5リッター直4(QR25DE)を搭載。随所にフェアレディZのパーツを使い、意匠も共通化したことで、上手なコストダウンとスタイリッシュさの両方を手に入れた。
対する2代目は、エンジンはV6/直4ともに初代のものを引き継ぎつつその内容を磨き、デザインもムラーノの個性を強調するものに。“アーバンSUV”として、さらなる洗練が図られた。
2010年1月には、2.5リッター車限定でFFモデルも追加された。
(グレード概要)
2.5リッター直4モデルは、FFの「250XL/XV」と4WDの「250XL FOUR/XV FOUR」、計4車種をラインナップ。3.5リッターV6モデルは4WDの「350XV FOUR」のみとなる。
それぞれ、“XL”がベーシックグレードとなっており、上級の“XV”グレードはさらに、ガラスルーフ、ルーフレール、本革シート(前席ヒーター付き)、プラズマクラスターイオンフルオートエアコンといった装備がプラスされる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
最近のSUVの例にもれず、全くの乗用車感覚。計器類は大きく見やすいし、空調関
連の操作パネルなど中央の操作部分も馴染みやすい。決して豪華ではないが、高級SUVらしい上質な仕上がりで、ゆったりとくつろげる雰囲気がある。サイズを持て余している感覚はない。テールゲートの開閉や一度倒したリアシートの復元を前席から電動スイッチで行えるなど、快適装備も充実している。
(前席)……★★★★
フロントシートはたっぷりしたサイズで、ホールド性は上々。FFながら、4WDとの共用ボディゆえセンター部の張り出しはやむをえないが、足元の余裕は十分。
フェンダーの盛り上がりの“峰”が(ちょっと)見えて、前方の眺めも良好。ボディ左側の死角をカバーするための、左サイドミラーにある小鏡も有効。それより前方、左前輪まわりを映すサイドブラインドモニターまで完備している。ルーフはガラスサンルーフがあるため、高さが少々犠牲になるが頭上空間は十分確保されている。
(後席)……★★★★
リアシートは2段階のリクライニング可能。スプリット式ゆえ、左右の角度を違えれば段差を利用して横方向にも寄り掛かれる。足元の空間も広く、座面も高く、眺めよし。低い場所にもぐり込んだようなセダンの後席にくらべると、はるかに明るく開放的だ。
そのうえ、高いがゆえに外から覗き込まれるような不安感もない。むしろセダンの後席より快適。ルーフは高く、しかもずっと後方まで伸びている。この部分の余裕からセダンの後席より満足が得られるのだろう。
(荷室)……★★★
とくに広い感覚はなく、積載量に関しては並だ。
内装の仕上げは上質。両サイドに備わるスイッチひとつでシートバックを倒し、ハッチバックのように荷室を広げることも可能。フラットなフロアは、ボードの一部をめくり上げて仕切り板とし、小荷物を安置することもできる。コンビニ程度のちょっとした買い物などに便利だ。ハッチゲートは電動開閉式で、バックビューモニターも備わる。
![]() |
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
4気筒ながら、音や振動に減点するところはない。アイドリングも静粛。CVTは元気な発進加速と、静かな巡航を約束する。昔あった「ヒューン……」というような機械的ノイズはほとんど気にならなくなった。パワーも不足なく、1630kgと軽く仕上がったボディを軽快に加速させる。4WDに特別な執着がなければ、このFFモデルこそ「ムラーノ」の美点を生かした買い物といえる。
![]() |
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
姿勢は終始フラットで、安定感ある乗り味。視点は高く、コーナーも見極めやすい。シャシー剛性は高く、路面の荒れた部分を強行突破したところで華奢な印象はない。
パワーステアリングの操舵力は軽めで、路面感覚もまずまず。4WDモデルより80kg軽い車体の動きは軽快そのもの。軽荷重で乗っても、リアだけ軽いといった尻軽な印象もなく、安定性は良好だ。重心の高さは、そこにロールセンター高を近づけたことで不安がより解消されている。
乗り心地という点では、後席は速度が上がると前席より足まわりからの音がこもり気味。前後席で乗り心地の差は少ない方か。
(写真=高橋信宏)
【テストデータ】
報告者:笹目二朗
テスト日:2010年2月12日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2010年型
テスト車の走行距離:--km
タイヤ:(前)235/65R18(後)同じ(いずれも、ブリヂストンDUELER H/P)
オプション装備:カーウイングスHDDナビゲーションシステム&BOSEサウンドシステム+ETCユニット+ステアリングスイッチ+オートスピードコントロール(40万2150円)/リモコンカラードドアミラー+テレスコピックステアリング+パーソナルドライビングポジションメモリーシステム+リモコン可倒式リアシート+リモコンオートバックドア(13万6500円)/特別塗装色グレイッシュブロンズ(4万2000円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(5):高速道路(5)
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--

笹目 二朗
-
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
-
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
-
NEW
トヨタ・カローラ クロスGRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】
2025.10.21試乗記「トヨタ・カローラ クロス」のマイナーチェンジに合わせて追加設定された、初のスポーティーグレード「GRスポーツ」に試乗。排気量をアップしたハイブリッドパワートレインや強化されたボディー、そして専用セッティングのリアサスが織りなす走りの印象を報告する。 -
NEW
SUVやミニバンに備わるリアワイパーがセダンに少ないのはなぜ?
2025.10.21あの多田哲哉のクルマQ&ASUVやミニバンではリアウィンドウにワイパーが装着されているのが一般的なのに、セダンでの装着例は非常に少ない。その理由は? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
NEW
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
NEW
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。