日産ムラーノ350XV FOUR(4WD/CVT)/250XL FOUR(4WD/CVT)【試乗記】
がんばれキリギリス!! 2008.11.12 試乗記 日産ムラーノ350XV FOUR(4WD/CVT)/250XL FOUR(4WD/CVT)……458万1150円/354万5850円
そのカッコよさゆえか、北米市場専用モデルのはずが世界的ヒット作となった日産の初代「ムラーノ」。2代目となる新型は、デザインもパフォーマンスもさらなる進化を遂げていた。
あなたはアリ派? それともキリギリス派?
最近知ってびっくりしたのが、イソップ物語の『アリとキリギリス』の結末部分は日本だけのオリジナルだった、という事実。「冬に食べ物がないキリギリスをかわいそうに思ったアリが食べ物を与えた」というストーリーは、“日本仕様”なのだという。
じゃあ“ヨーロッパ仕様”はどうかというと、いくつかのバリエーションがあるらしい。「夏に歌っていたんだから、冬は踊れば?」とアリがキリギリスを冷たく突き放すバージョンもあれば、餓死したキリギリスをアリが食べちゃう(!)という、日本人的にはあり得ないストーリーが語り継がれる地域もあるらしい。
日本にイソップが導入される時に、それじゃあんまりだ、子どもはひいちゃうというので儒教的なアレンジが施されたということだ。なんでこの話を思い出したかといえば、新型ムラーノがちょっとキリギリスっぽいと思えたからだ。
別にムラーノを悪く言っているわけじゃない。むしろ逆で、グリーンスパンさんが「1世紀に一度の津波」と表現するこんなご時世だからこそ、歌って踊って世の中を明るくしてくれるクルマが必要ではないでしょうか。新型ムラーノと、そのオーナーになるみなさんにはぜひガンバってほしい。子どもの頃、キリギリス支持派だった自分は切にそう願うわけです。
地盤は引き継げたか?
2008年9月29日に登場した、2代目となる新型日産ムラーノのデザインは大変だったろうと思う。2002年に北米市場に投入された初代ムラーノはそのカッコが「超クール!」と評価され、年間6〜8万台の大ヒット。だったらうちの国にも入れてくれって話になり、世界80カ国で計50万台が販売されることになった。日本にも、2004年から導入されている。
世界的に支持された初代ムラーノの造形、この地盤を受け継ぐ2代目には、大きく路線変更するわけにもいかず、かといって古臭くなってもいけないという、絶妙のバランスが求められた。
日産のデザイナーは、うまくやったと思う。初代のフォルムを踏襲してムラーノというブランドをアピールしつつ、少しモダンになり、少しギラリとし、少しアグレッシブになり、少し高く見えるようになった。結果として新しモノ感と存在感がきちんとある。
ムラーノ、デュアリス、そしてエクストレイルに日本未導入のインフィニティFXやEX……、日産は背の高いクルマのデザインが得意だ。特にエコや合理性にばかり目が行く昨今、キリギリス的なムラーノの造形はひときわ目を惹く。
乗り込むと、4年前に初めてムラーノのインテリアに接した時の驚きが甦った。あの時は、本アルミをふんだんに使った内装デザインが新鮮だった。大筋では初代の流れをくむ新型のインテリアは、そういった新鮮な驚きこそないけれど、肌が触れる部分の樹脂や繊維の手触りがよくなっている。冬の時代が迫っているのにこういう贅沢をしているのは、ある意味エライ。
ムラーノのウリはデザインだから、そこが洗練されている時点で合格なのかもしれない。と言いつつも、走らせてみてもムラーノは初代からさらに洗練されていた。
拡大
|
拡大
|
拡大
|
アメリカでは女性ユーザーのほうが多いという事実
新型ムラーノの日本仕様には、3.5リッターのV型6気筒エンジン搭載モデルと、2.5リッターの直列4気筒エンジン搭載モデルがラインナップされる。どちらもCVTとの組み合わせで、フルタイムの4駆システムを備える。今回はオフロードで試乗するチャンスはなかったけれど、ムラーノの4駆システムはその走破性が高く評価されるエクストレイルが搭載するのと同じ「ALL MODE 4×4-i」である。
このようにエンジン排気量の大小が用意される場合、往々にして「小排気量モデルのほうがバランスがいい」と評価される。けれど、ムラーノに関してはV6のほうがいいと思った。ゆったり余裕をもって走るという、クルマのコンセプトに合っているのだ。
直4モデルの軽快なハンドリングや爽快な乗り心地も捨てがたい。けれど、個人的にはよりしっとりとした乗り心地と豊かなトルクを備えたV6モデルに一票。市街地でしずしずと走っている限りにおいては、どちらも静かで乗り心地のよいクルマであることは記しておきたい。
静かといえば、新型ムラーノは従来型より吸音材を3割増量して静粛性向上に努めたという。というのも、アメリカ市場では女性ユーザーのほうが多く、「もっと静かに」という要望がかなりあったというのだ。それに応えるために、リアのホイールハウス内にも吸音材を貼って騒音低下を図った。このクラスのSUVとしては異例の措置だという。たしかにその効果はあって、車内は非常に静かだ。
贅沢は素敵だ
華やかな外観に、ラクシュリーな乗り心地、そしてゆとりある走行性能に快適な室内。後席に座ってみると、レッグルームにはかなり余裕がある。ホイールベースこそ従来型から変わらないけれど、ニースペースは20mmほど広くなっているという。
つまり、ムラーノは“贅沢は素敵だ”的なクルマだ。もともと、ええかっこしぃなクルマだったけれど、ええかっこに磨きがかかった。
本稿執筆時点では日経平均株価が9000円前後と大変なことになっているわけです。不況だ不況だで、自分も含めてみんな、心が縮こまり、知らず知らずに、無難に目立たぬようジミ(?)な行動をとっている。ま、それが正解なのかもしれないけれど、それだけじゃ世の中つまらない。
ムラーノみたいにパッと目立つクルマに乗って、クルマに負けないようお洒落をして、オプションのBOSEで元気のいい音楽でも聴きながら出かけるような剛気な人間でありたいと思うのですが、いかがでしょう? あるいは、バブル入社世代特有の戯言なのでしょうか?
(文=サトータケシ/写真=郡大二郎)

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
-
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】 2026.1.17 BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。
-
マツダCX-60 XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.1.14 「マツダCX-60」に新グレードの「XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ」が登場。スポーティーさと力強さ、上質さを追求したというその中身を精査するとともに、国内デビューから3年を経た“ラージ商品群第1弾”の成熟度をチェックした。
-
カワサキKLX230シェルパS(6MT)【レビュー】 2026.1.13 その出来には“セロー乗り”も太鼓判!? カワサキのトレイルバイク「KLX230シェルパ」に、ローダウン仕様の「シェルパS」が登場。安心の足つき性で間口を広げた一台だが、実際に走らせてみると、ストリートでも楽しめるオールラウンダーに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツC220dラグジュアリー(FR/9AT)【試乗記】 2026.1.12 輸入車における定番の人気モデル「メルセデス・ベンツCクラス」。モデルライフ中にも年次改良で進化し続けるこのクルマの、現在の実力はいかほどか? ディーゼルエンジンと充実装備が魅力のグレード「C220dラグジュアリー」で確かめた。
-
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(FF/CVT)【試乗記】 2026.1.10 日産の軽スーパーハイトワゴン「ルークス」がフルモデルチェンジ。「見えない危険が……」のテレビCMでお茶の間をにぎわせているが、走る、曲がる、止まるをはじめとしたクルマ全体としての仕上がりはどうか。最上級グレードをテストした。
-
NEW
クルマの乗り味の“味”って何だ?
2026.1.20あの多田哲哉のクルマQ&A「乗り味」という言葉があるように、クルマの運転感覚は“味”で表現されることがある。では、車両開発者はその味をどう解釈して、どんなプロセスで理想を実現しているのか? 元トヨタのエンジニア、多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
プジョー208 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】
2026.1.20試乗記「プジョー208」にマイルドハイブリッド車の「GTハイブリッド」が登場。仕組みとしては先に上陸を果たしたステランティス グループの各車と同じだが、小さなボディーに合わせてパワーが絞られているのが興味深いところだ。果たしてその乗り味は? -
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。






























