第383回:スピード! スピード!! スピード!!!
緊急記者会見 ホンダの社長はなぜ今変わった?
2009.03.02
小沢コージの勢いまかせ!
第383回:スピード! スピード!! スピード!!!緊急記者会見 ホンダの社長はなぜ今変わった?
プリウスは本来ホンダが出すべきだった!?
ご存じだとは思うけど、先日突如ホンダの青山本社で社長交代記者会見が行われた。当日朝にFAXがきて、午後に記者会見と、緊急も緊急。ちなみにF1撤退記者会見もそんな感じでした。
俺が一番印象に残ったのは、新社長の伊東専務の口から何度も出た「スピード」という言葉だ。もちろんNSXのラップタイムがすごいとか、インサイトが速いなんて話ではなく、「開発のスピード」であり、「経営のスピード」、であり「思考のスピード」のこと。
具体的には「お客様が求めている商品をいかに素早く投入するか−−(中略)−−(開発の)スピードを上げていくのが自分の責務だと思っている」(伊東)、「お求めやすい、環境性能に優れた商品を、スピーディに提供」(伊東)、「厳しい1、2年を切り抜けるために、即決、即断、スピーディでコンパクトな経営陣に」(福井)というもの。
サッカー元日本代表監督のオシムじゃないけど、走るスピード、判断のスピードの改革なのだ。
先日知り合いの編集者が言ってたけど、「プリウスだってホントはホンダが先に出すべきだったでしょう」という説はまさにその通り。今、インサイトが好評で大人気を博しているが、5人乗りの実用車として考えると、そもそも1997年登場の初代プリウスに対して実に12年遅れ。1970年代にいち早くCVCCエンジンを出してアメリカの過激な排ガス規制「マスキー法」に対応した同社としては、世界初の量産ハイブリッドは、自身が出したかったに決まっているのだ。
その点だけで「スローなところがあったかも……」(伊東)という部分はあるし、ここで満足してたらホンダは間違いなく終わる。5月に新型プリウスが出て、激安旧型プリウスの併売攻撃にどう対応するのか? スピーディな思考が楽しみだ。
一方、なぜ“今”なのかについては「2008年11月以来の厳しい状況だが、方向性の判断はしたし、その後の加速力を考えるとむしろいいタイミングなのでは……」という福井社長の考えどおりでしょう。
伊東新社長は現在55歳。まだまだパワーも体力もあるだろうし、今の苦境をガムシャラに乗り切ろう! と考えていることがよくわかる。
福井社長による伊東評は一言「タフ」。求められているタイプの人が、今まさに現れたのだ。
若さでガムシャラに乗り切れ!
F1撤退の話ともからむけど、やっぱりいまどき量産メーカーがモータースポーツをやってる場合ではないと思う。みんなが求める商品を、素早く作ってナンボなのだ。
ま、最近のF1にしろ、MotoGPにしろ、その手は自動車メーカーとはほとんど関係がない“興業”だという気がしていたんだよね。とくにF1なんてのは実際の運営は全く別の外人部隊がやってたわけで、昔みたいに量産車開発陣が片手間にできるようなことじゃ、とっくになくなってる。
ホント、ホンダが今F1をやるんだったら、現在メーカーと技術研究所を分けて組織しているように、完璧に“ホンダ自動車競争株式会社”と分けて、独立採算制にするくらいじゃないとダメでしょう。で、昔のF1監督の桜井さんが社長に就任するくらいのノリでね。
もしくはポルシェのように、量産車ベースのツーリングスポーツカーだけを造って、それをプライベーターに適正価格で提供して、ルマンやGT選手権に出て活躍して貰うと。
それが今の自動車メーカーにとっての正しいモータースポーツへの関わり方、あるべき姿なんじゃないでしょうか? 小沢はそう思っております。
ちなみに伊東新社長は、ホンダのモータースポーツを役員レベルで担当したことはあっても、実際にF1の開発やMotoGPマシンの開発を担当したことはないらしい。有名なのは、NSXのアルミボディの開発だそうで、つまり“量産畑”出身なのだ。歴代の有名社長の多くがモータースポーツに深く関わる人だっただけに、この人が選ばれたのは面白い。
年末のF1撤退会見から迷走ムードが多少残ってた気がするが、こうやって量産畑の社長を迎えて体制を一新すると、目的がさらに明確になった気がする。
新社長によれば「今後は毎年のように(話題になる)クルマを提供したい」とのこと。今後のホンダのがんばりを祈りたい!
(文と写真=小沢コージ)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
-
第454回:ヤマダ電機にIKEAも顔負けのクルマ屋? ノルかソルかの新商法「ガリバーWOW!TOWN」 2012.8.27 中古車買い取りのガリバーが新ビジネス「WOW!TOWN」を開始。これは“クルマ選びのテーマパーク”だ!
-
第453回:今後のメルセデスはますますデザインに走る!? 「CLSシューティングブレーク」発表会&新型「Aクラス」欧州試乗! 2012.7.27 小沢コージが、最新のメルセデス・ベンツである「CLSシューティングブレーク」と新型「Aクラス」をチェック! その見どころは?
-
第452回:これじゃメルセデスには追いつけないぜ! “無意識インプレッション”のススメ 2012.6.22 自動車開発のカギを握る、テストドライブ。それが限られた道路環境で行われている日本の現状に、小沢コージが物申す!?
-
第451回:日本も学べる(?)中国自動車事情 新婚さん、“すてきなカーライフに”いらっしゃ〜い!? 2012.6.11 自動車熱が高まる中国には「新婚夫婦を対象にした自動車メディア」があるのだとか……? 現地で話を聞いてきた、小沢コージのリポート。
-
NEW
アウディSQ5スポーツバック(4WD/7AT)【試乗記】
2025.11.8試乗記新型「アウディSQ5スポーツバック」に試乗。最高出力367PSのアウディの「S」と聞くと思わず身構えてしまうものだが、この新たなSUVクーペにその心配は無用だ。時に速く、時に優しく。ドライバーの意思に忠実に反応するその様子は、まるで長年連れ添ってきた相棒かのように感じられた。 -
MINIジョンクーパーワークスE(FWD)【試乗記】
2025.11.7試乗記現行MINIの電気自動車モデルのなかでも、最強の動力性能を誇る「MINIジョンクーパーワークス(JCW)E」に試乗。ジャジャ馬なパワートレインとガッチガチの乗り味を併せ持つ電動のJCWは、往年のクラシックMiniを思い起こさせる一台となっていた。 -
新型「日産エルグランド」はこうして生まれた! 開発のキーマンがその背景を語る
2025.11.7デイリーコラム日産が「ジャパンモビリティショー2025」に新型「エルグランド」を出展! およそ16年ぶりにフルモデルチェンジする大型ミニバンは、どのようなクルマに仕上がっており、またそこにはどんな狙いや思いが込められているのか? 商品企画の担当者に聞いた。 -
ジャパンモビリティショー2025(ホンダ)
2025.11.6画像・写真「ジャパンモビリティショー2025」に、電気自動車のプロトタイプモデル「Honda 0 α(ホンダ0アルファ)」や「Super-ONE Prototype(スーパーONE プロトタイプ)」など、多くのモデルを出展したホンダ。ブースの様子を写真で詳しく紹介する。 -
ジャパンモビリティショー2025(マツダ・ビジョンXコンパクト)
2025.11.6画像・写真マツダが「ジャパンモビリティショー2025」で世界初披露したコンセプトモデル「MAZDA VISION X-COMPACT(ビジョン クロスコンパクト)」。次期「マツダ2」のプレビューともうわさされる注目の車両を、写真で詳しく紹介する。 -
ジャパンモビリティショー2025(マツダ)
2025.11.6画像・写真「ジャパンモビリティショー2025」で、コンセプトモデル「MAZDA VISION X-COUPE(ビジョン クロスクーペ)」と「MAZDA VISION X-COMPACT(ビジョン クロスコンパクト)」、新型「CX-5」を初披露したマツダ。車両とブースの様子を写真で紹介する。






























