トヨタ・パッソセッテG(FF/4AT)/ダイハツ・ブーンルミナスCXエアロ(FF/4AT)【試乗速報】
勢力図を塗り替えるか? 2009.01.21 試乗記 トヨタ・パッソセッテG(FF/4AT)/ダイハツ・ブーンルミナスCXエアロ(FF/4AT)……210万2500円/245万4350円
トヨタ、ダイハツで共同開発された、コンパクトな3列シート車「パッソセッテ」「ブーンルミナス」がデビュー。最新ミニミニバンの実力やいかに?
ミニバンっぽさが薄い
ベースになっている「パッソ/ブーン」と同じく、ダイハツ主導で開発され、トヨタにもOEM供給される3列シートのコンパクトミニバンが、「トヨタ・パッソ セッテ/ダイハツ・ブーン ルミナス」である。このカテゴリーはダイハツにとって、かつて「アトレー7」のようなモデルもあったものの、事実上は初参入。トヨタには「カローラスパシオ」や「シエンタ」のような先例もあるが、それらよりもミニバンっぽさの薄い、スタイリッシュで気軽に乗れるモデルを欲していたということで、当初ダイハツが進めていた企画に相乗りするかたちで開発が進められたそうである。
たしかにその外観は、ホイールベースの長さこそ目立っているものの、すっきりシンプルにまとめられている。低い全高、ヒンジ式のリアドアも、そんな印象に繋がっているのかもしれない。凝り過ぎたスタイリングの多い最近のトヨタ車の中では異色な感もあるし、かといってダイハツ色が強いわけでもないのは、やはり共同開発ゆえか。ダイハツの開発陣曰く、「素の状態はトヨタ寄り、エアロパーツ付きはダイハツ寄りの雰囲気」ということだが、なるほどそんな感じがしないでもない。いずれにせよミニバン的な生活感、ある種のとっつきにくさが薄めなのが特徴と言えそうだ。
ブラウンとベージュのツートーンでコーディネートされた試乗車のインテリアも、雰囲気は上々である。全体にクオリティは悪くないし、センターメーターやオーディオ周辺のデザインも凝っていて、安っぽさを感じさせないのが嬉しい。ドアミラーが三角窓を邪魔しないよう後ろ寄りに付いているおかげで、視界だって悪くない。
インテリアは好印象
フロントシートはベンチタイプ。オーソドクスな形状だが、しなやかなクッションには案外コシもあって、短時間の試乗の印象としては、掛け心地には満足できた。
特等席は2列目だ。シートは左右分割して最大150mmのスライドと20度のリクライニングが可能。コンパクトカーらしからぬ余裕を満喫できる。ヘッドレストが3人分ちゃんと用意されているのも評価したいが、シートベルトは中央席は2点式でしかない。後席シートベルト着用は義務なのだから、今や2点式はナシだろう。
3列目に座るには2列目シートを前に出す必要がある。しかし2列目を自分自身が座れるギリギリの位置に設定しても、3列目では膝下が2列目シートバックに密着してしまう。足下フロアをえぐるなど工夫はされているのだが、やはり全高の低さは補えていない。スライドドアではないということも含めて、やはり3列目はたまにだけ使うものという設定なのだ。
普段、荷室として使う時には、3列目はヘッドレストを外して背もたれを前倒しできるし、左右分割式の2列目も倒せば前後長1810mmのフラットなスペースを生み出すこともできる。シートアレンジの範囲はこれだけと簡素だが、実際の使い勝手を考えれば、煩雑になるより余程いい。
そんなふうに全般に印象は悪くないインテリアだが、ガッカリしたのはパッソ セッテのベースグレード「X」で、サイド&カーテンエアバッグがオプションとなることだ。トヨタは昨年のイスト以降、新登場モデルにはすべてこれらを標準装備化すると宣言していたはず。どんな理由を並べられようと、トヨタが率先してそんなことをやっているようでは先行きは暗い。
ちなみにブーン ルミナスも、これは全車オプション。サイド&カーテンエアバッグの代わりとして、ミュージックサーバー機能付きのオーディオが標準装備となるそうである。
乗り心地の良さが印象的
走りっぷりは、際立ったなにかがあるわけではないが、おおむね不満のない出来映えと言える。3名乗車で市街地を中心に走行した限り、4段ATとの組み合わせとなる1.5リッターエンジンの力は十分。7人乗れば物足りなさもあるだろうが、致命的なほどではない。むしろ強化してほしいのは、いったんある程度の制動力が立ち上がった後の踏み増しに、今ひとつリニアに応えてくれないブレーキのほうだ。
印象的なのは、乗り心地の良さである。カッチリとしたボディとしなやかなサスペンションのマッチングは良く、路面が多少荒れていようが快適さをキープする。特に、実はミニバンが苦手としがちな2列目は、直接的なショックが伝わってこず、安楽そのもの。一方、3列目は突き上げが大きいが、後輪の真上に座っているだけに、仕方のないところだろう。
2008年下半期、国内でもっとも多くの台数を売り上げたのは「ホンダ・フリード」だったという。今や多くの人がミニバンの便利さを知っており、手放せないと思っているが、一方でサイズはそれほど大きくなくていいと思っているということだろう。見た目も機能も、よりミニバンらしく3列目までしっかり座れるフリードとは狙いが微妙に異なるとはいえ、市場では間違いなく競合するはずだ。いや、こちらの2台は価格も、サイド&カーテンエアバッグ付きのモデルでもフリードよりはかなり抑えられているだけに、あるいは大きな勢力図の塗り替えも起こるかもしれない。
(文=島下泰久/写真=高橋信宏)
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島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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