日産ムラーノ250XL FOUR(4WD/CVT)【ブリーフテスト】
日産ムラーノ250XL FOUR(4WD/CVT) 2008.12.08 試乗記 ……351万4350円総合評価……★★★
代はかわれど、エクステリアで個性を主張し続ける「日産ムラーノ」。肝心の走りはどうなのか? 2.5リッターのベーシックグレードで、その実力を試した。
姿カタチはいいけれど
ひと目みて、欧州仕様の「ホンダ・シビック・タイプR」に通じる、サイバーな日本車デザインを感じた。さらにじっくり見てみたら、そのなかに美しさも潜んでいることを発見した。初代よりもさらにこだわったという二代目のアピアランス。ムラーノは“デザインコンシャスなアーバンSUV”という地位を不動のものにしたのではないかと思える。
ただし、そのプレミアムな外観とは裏腹に、乗り味には疑問が残る。今回試乗したのはベースグレードに当たる250XL FOUR。詳しくは後述するが、まとまり過ぎた外観(?)と走りの釣り合いが、なんだかとれていないようなのだ。
それ以上に、ガソリン価格の乱高下や金融危機など、経済事情の激変したこのご時世に、SUVが北米で生き残れるかということのほうが心配だが。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
ムラーノは、日産のクロスオーバーSUV。2002年に北米でデビュー。当初日本導入の予定はなかったが、彼の地での人気に推されて日本でも2004年に発売。2代目も同様に、北米デビューを経て日本でも販売が開始された。
初代は基本コンポーネンツを「マキシマ」ベースとし、エンジンは3.5リッターV6(VQ35DE)/2.5リッター直4(QR25DE)を搭載。随所にフェアレディZのパーツを使い、意匠も共通化したことで、上手なコストダウンとスタイリッシュさの両方を手に入れた。
対する二代目は、エンジンこそ初代を踏襲するものの、V6/直4共にその内容をさらに進化させ、デザインはムラーノ・オリエンテッドになった。アーバンSUVとして、さらなる洗練を得たといえるだろうか。
(グレード概要)
グレードは2種類。ベーシックモデルとなる今回の試乗車250XL FOURと350XL FOURは、サイドブラインドモニター、バックビューモニター、本革ステアリング/シフトノブといったアイテムを標準装備する。350XV FOUR/250XV FOURはそこにハロゲンフォグランプ付きフロントバンパーや本革シート(前席ヒーター付き)、ガラスルーフ、ルーフレール、235/65R18インチタイヤ&アルミホイール(18×7.5J)などがプラスされる。
【車内と荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
外観に対してシンプルにまとめられたインテリア。とはいえ純国産モデル然とした内外装のギャップはなく、いい意味ですっきりとしている。空調/オーディオのスイッチ類はコンパクトにまとめられるが、ダイヤルはクリック感もあって使いやすい。逆にナビはボタンに書かれた文字が大きく、非常に視認性が良い。従来のスティック式ではなく、ダイヤル&タッチパネル式となったためにカーソル移動などの操作がしやすいのもマル。筆者は2007年モデルの「フェアレディZ バージョンNISMO」に乗っているのだが、新型ナビの処理速度には驚いた。これならストレスフリーだ。
(前席)……★★
広くて高い視界がここち良いムラーノ。それを支えるシートは厚みがあり、ファーストコンタクトからドライバーをふっかりと包み込んでくれる。しかし腰部分のサポートまで沈み込んでしまうので、長距離ドライブには不向きだ。上級モデルXV FOURの本革シートにランバーサポートやヒーターが付くというのも納得。弟分のSUV「デュアリス」とは対照的な、アメリカンラクシャリー志向のシートである。
(後席)……★★
図体の割に座面長が短く、直立姿勢を強いられるのが意外だった(筆者の身長は171cm)。リアサスペンションのロール剛性はこの手のSUVにしては高められているようで、後部座席に座っても車酔いしないのは良い。これができていないSUVは、ごまんとある。だがクッション豊かなフロントシートに比べてリアは実に普通な作りで、お尻にゴロゴロと低周波系のノイズやハーシュネスを感じてしまうのがもったいない。サイドサポートがないので、ホールド性もいまひとつ。お客さんも一応乗せられる、といった感じだろうか。
(荷室)……★★★★
トランクルーム左右のレバーを引くだけでワンタッチで倒すことができ、復帰スイッチを押すと電動で起きあがるリヤシートは感動的。これだけで欲しくなってしまいそう。広いラゲッジに対して幅720×奥行き296×深さ50mmのラゲッジボックスが飛び出し、ネット付きで荷物を支えてくれるのも日本車ならではの気配り。ハッチは当然、挟み込み防止機能付きの電動バックドアとなっている。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
フリクション低減と熱効率の向上を果たしたという2.5リッターのQR25DEエンジンだが、エクストロニックCVTとの組み合わせによって、少々騒がしく聞こえてしまうのが残念。追い越し加速をかけるために使うのであろう「SPORTSモード」ではエンジン回転数が高くなり過ぎ、少々うるさい。6段のマニュアルモードは、小排気量の2.5リッターにこそ付けるべきだと感じた。ただしエンジン自体は熟成が進んでいる。数値ばかりを追い求めて「洗練された」とするエンジンにありがちな(?)、実用トルクの落ち込み感もない。直列4気筒らしいトルクで2トン級のボディを立派に走らせてくれるのだ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★
フロントはオーソドックスなマクファーソン・ストラット式だからか、派手な見た目の割に、地味なハンドリング。鼻先が軽いのは良いが、キャスター角が強くついたような、タメのないフロントの応答性は“街なか専用”という感じがする。
伸び側を規制することでロール時の浮き上がりを抑えるリバウンドスプリング内蔵のショックアブソーバーは、バンプ側の減衰力を柔らかくすることで乗り心地を確保したための対策というのが本音で、キビキビとしたハンドリングを狙ったためのものではない。よって大筋北米では喜ばれそうな乗り心地なのだが、「デュアリスのようなヨーロピアンハンドリングはキャラじゃない」というにせよ、もう少ししっとりとしたライントレース性があっても良いのでは? と思う。少しばかり北米っぽすぎる。日本独自の味付けをしても、「バンザイ!」と喜ばれることだろう。
対してリアマルチリンク式サスペンションの追従性は高い。それがアンバランスになってドライバーに違和感を与えることは全くないだけに、なおさらフロントサスの味付けは残念。この時代に“ハンドリング・ヲタク”的な見解がどこまで通用するのか、ビミョーではあるが。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:山田弘樹
テスト日:2008年11月4日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2008年型
テスト車の走行距離:6228km
タイヤ:(前)235/65R18(後)同じ(いずれも、ブリヂストン DUELER H/T)
オプション装備:カーウイングスHDDナビシステム+ETCユニット+ステアリングスイッチ+オートスピードコントロール(28万350円)/リモコンオートバックドア&リモコン可倒式リアシート(電動復帰タイプ)(8万4000円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1):高速道路(9)
テスト距離:1558km
使用燃料:162リッター
参考燃費:9.62km/リッター

山田 弘樹
ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。
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