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第39回:「ミラノデザインウィーク2008」(後編)
思わず「やられたーッ!」シトロエン型フランスパン登場

2008.05.07 マッキナ あらモーダ! 大矢 アキオ
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第39回:「ミラノデザインウィーク2008」(後編)思わず「やられたーッ!」シトロエン型フランスパン登場

「スマート」&「プリウス」がウヨウヨ

(前編からのつづき)
ミラノでは2008年1月から市中心部への自動車乗り入れが有料化された。いわゆるロードプライシング制である。ドライバーは自分のクルマの欧州排ガス基準レベル(ユーロ)に応じて1日2〜10ユーロのカードを購入する仕組みだ。カードの名前は「エコパス」という。
ただしユーロ3以降のガソリン車とユーロ4以降のディーゼル車、ハイブリッド車等には適用されない。つまり低公害の新型車は対象とならない。

街では以前にも増して「スマート」や「トヨタ・プリウス」が目立つようになった。ついでにいうとハイブリッド車に関しては国や州の購入補助があることから、プリウスはミラノのタクシーの間でもあっという間に広まった。

一方、1960年代からカドルナ駅前で革雑貨店を営むミラネーゼによれば、「ロードプライシング制が始まって、一般車が少なくなり、お客さんも減ってしまった」と言う。市電をはじめ公共交通機関がイタリアの中では発達しているミラノだが、今までクルマ移動に慣れっこになった人たちはなかなかステアリングを離せないようだ。彼らは続々完成する郊外の大型店舗にシフトしてしまったのだろう。

フィリップ・スタルク先生を運ぶ専用「MINI」。
フィリップ・スタルク先生を運ぶ専用「MINI」。 拡大

各メーカーがあの手この手

そんな風景描写はさておき、ミラノで行なわれた2008年デザインウィークのリポート後編は自動車ブランド関連の参加である。

今年もウィークのオーガナイザーである『インテルニ』誌のオフィシャルカーとなったのは「MINI」だ。フィリップ・スタルク、ロス・ラヴグローヴなど来場する著名デザイナー各氏の名前を書いたミニに、ご本人を乗せて移動する企画である。

ドライバーは主に地元のデザイン学生によるアルバイトだ。休憩時間に聞いてみると「普段にこやかキャラの○×△氏は、意外に寡黙でキンチョーしたっす」などと、本音をぶちまけてくれるのが面白かった。

対するフィアットは「チンクエチェント」で攻めた。ポルタ・ガリバルディ駅近くに「500ポップアップ・ストア」と題した、夏までの期間限定グッズショップをオープン。市内各地でチンクエチェントを題材にしたポップアートを展開した。

一方、レクサスのエキシビジョンは4年めを迎えた。
2005年には劇場内で「LF-A」のモデルを人工霧で包み、2006年には十数万本のファイバー線で「LS」のモデルを取り巻いた。そして2007年は太陽の照り返しが眩しい銀色の葉を敷き詰めた上に「LS600h」のモデルを置く、という毎年さまざまなアプローチで、「レクサス+作品」の世界を展開してきた。

今年の会場はというと、一転してネロ=つまり黒い空間となった。
カナダ生まれのデザイナー佐藤オオキ氏率いるデザインオフィス「nendo」をコラボレーション・アーティストに迎えたものだ。
球体オブジェや、「LF-Xh」のモデル脇に吊るされたポリプロピレンの柱状オブジェは、いずれもダイヤモンドの結晶構造をモティーフにしたものという。

またダイヤモンド・チェアと名づけられた椅子は、プロトタイプ機・3次元CADデータ、粉末状ナイロンのレーザー硬化、さらには部材断面の綿密な変化といった技術の集大成だ。スタッフによれば、日ごろ自動車製造で関係ある日本企業の協力も得ているという。
このあたりのハイテク感は、回数を重ねたことによってこちらのデザインウォッチャーにも徐々に理解されているようである。とくにカーデザイナー志望学生にとって、レクサスは密かな「参拝ポイント」になりつつあるようだ。

レクサスの会場「ムゼオ・デッラ・ペルマネンテ」。
レクサスの会場「ムゼオ・デッラ・ペルマネンテ」。 拡大
ハイテクを駆使して造られたオブジェが並ぶ「純」の空間。(写真=トヨタ自動車)
ハイテクを駆使して造られたオブジェが並ぶ「純」の空間。(写真=トヨタ自動車) 拡大
ダイアモンド・ピラーの奥に「LF-Xh」のモデルが。(写真=トヨタ自動車)
ダイアモンド・ピラーの奥に「LF-Xh」のモデルが。(写真=トヨタ自動車) 拡大

マルにトヨタもぜひ

シトロエンはデザインウィークに合わせて、コンテストを催した。
「C-Design」コンテストと名づけられたそれは、「シトロエンのパーツを用いたり、テーマにするのが条件だ。
グランプリには「C3プルリエル」のピラーや「C4ピカソ」のリアシートを用いた「そり」が選ばれ、考案者のO.ボツィロフ氏に1万ユーロ(約162万円)が贈呈された。

またF.コスタクゥルタ氏によるシトロエンのダブルシェブロン・マークをかたどったバゲットも佳作に選ばれた。
シトロエン=おフランス=パンという、誰もが考えそうでやらなかった三段論法ネタである。思わず「やられたーッ!」と声を上げてしまったが、ぜひシトロエンのファンイベントで限定販売してほしいものである。

ボクなどはすでに、レクサスの「マルにL」や「マルにカタカナでトヨタ」のパンも欲しくなってきた。どこかの心あるエンスーパン屋さん、ぜひ挑戦してみませんか? もしかしたら社員食堂への大量納入の道も開けるかも。責任持てませんけど。

(文=大矢アキオ Akio Lorenzo OYA/写真=トヨタ自動車、Citroen Press、大矢アキオ)

C-Designコンテストの首席「シトロエンそり」。(写真=Citroen Press)
C-Designコンテストの首席「シトロエンそり」。(写真=Citroen Press) 拡大
佳作のバゲット「シトロエット」。(写真=Citroen Press)
佳作のバゲット「シトロエット」。(写真=Citroen Press) 拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、24年間にわたってリポーターを務めている。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。

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