クルマ好きなら毎日みてる webCG 新車情報・新型情報・カーグラフィック
【スペック】全長×全幅×全高=4450×1993(サイドミラー含む)×1640mm/ホイールベース=2905mm/車重=1205kg/駆動方式=FF/1.5リッター直4 8バルブディーゼル(70ps/4000rpm、16.3kgm/1700rpm)(欧州仕様車)

ダチア・ロガンMCV 1.5 dCi(FF/5MT)【海外試乗記】

売れるにはワケがある 2008.04.02 試乗記 沼口 高幸 ダチア・ロガンMCV 1.5 dCi(FF/5MT)

世界中で大ヒットしたという、ルノー系の“激安カー”「ダチア・ロガン」。ワゴンタイプの「MCV」を駆って、実際のクオリティを検証した。
【webCG】クルマを高く手軽に売りたいですか? 車一括査定サービスのおすすめランキングを紹介!

安っっっすい!

ルノーの子会社「ダチア」から、「ロガン」が“5000ユーロカー”として発表された2004年、真っ先に思い出したのは「クライスラー・ネオン」だった。

ネオンは、アメリカ市場に急進する日本車と韓国車に対抗するため作られたコンパクトセダンだ。当時の価格は9000ドル。「100万円カー」とも呼ばれた。
日本でも大々的に売り出されたが、アメ車らしくない(?)コンパクトで平凡な外観で、装備はシンプル。コストダウンを徹底して行い無理が出たのか、クオリティではなみいる日本車や韓国車に足元にも及ばなかったのを記憶している。「安かろう、悪かろう」の典型的なクルマになってしまったのは残念だった。

ロガンは、もともとルーマニア、ロシア、モロッコ、コロンビアなど、発展途上の自動車マーケット向けのクルマだった。5人乗りサルーンながら、それぞれの国での販売価格は5000ユーロ(発表当時の邦貨換算で約67万円)を想定して作られた。低価格を実現する為に労働力の安い地域で組み立て、プラットホームは「クリオ」、ギアボックスは「メガーヌ」、エンジンは「カングー」と、パーツの多くを他のルノー車から流用。原材料そのものも安い国から購入し、その予定“低”価格を実現した。
欧州市場向けには、エアバックとABSが標準装備されるため7400ユーロと割高になるが、それでも、他メーカーのライバルに対して2000ユーロ以上安い。

初期のモデルは、8バルブの直4ガソリンユニットを搭載。75psの1.4リッターと90psの1.6リッターのみだったが、現在は上級モデルとして、1.6リッターに16バルブの105psモデル、さらに、1.5リッターディーゼルdCiを2種類(70psと85ps)ラインナップする。ディーゼル仕様は、カタログ値19.6〜21.7km/リッターの好燃費を謳う。

燃費がポイント

今回試乗したのは、ワゴンタイプの「ロガン MCV(Multi Convivial Vehicle)1.5 dCi」だ。2006年のパリサロンで発表され、まずルーマニアで発売、2007年からはメジャーな欧州各国でも販売されるようになった。サルーンより270mm長いホイールベースで、ミニバン並みの3列シートに7座を配置し、多彩なシートアレンジを実現した。ロードクリアランスも10mm高くなり、悪路にも備える。

モダン&シンプルとでもいうべきロガンのフロントマスクは、発売当初から変わらない。これは、頻繁にモデルチェンジをせずコストを抑えることを念頭にデザインされた結果だ。

70psのディーゼルエンジンは、元々「ルノー・カングー」に積まれたものだ。商業車としても有名なカングーのエンジンだけに、トルクも太く、実用レベルでは不足ない走りを見せる。ただ、メガーヌから流用したギアボックスとのマッチングはいまひとつ。伸びが足りず、たとえば高速での合流や追い越しでもう少し車速が欲しい時に不満が残る。
一方で、高速道路など100km/hプラスの速度でクルージングするなら20km/リッター以上、市街地でも18km/リッターの好燃費が得られた。ガソリン高のご時世にはうれしい値だ。
なお、実際に運転した際の最高速は158km/h。流れが速い欧州の高速道路でも問題なく走れる。

操作性さえよければ……

室内空間に目をやれば、スイッチレイアウトが普通のクルマと大きく異なるのに驚かされる。コストダウンのためか、電気系のトラブルを避けるためか、すべてがセンターコンソールに集中している。
たとえば、パワーウィンドウのスイッチはドア側ではなくセンターコンソールのオーディオ下にある。電動ミラーは、サイドブレーキの真下。これらスイッチ類の使い勝手が向上するだけでも、ロガンの株は大きく上がるだろう。残念だ。

ルーフが高く、乗り込んだ瞬間に広く感じられる室内は、ロガンの売りのひとつ。ただ3列目への乗り降りは、かなり難しい。「MINIクーパー・クラブマン」のような観音開きのドアはコスト上望めないが……シートを倒すだけで十分通れるスペースがないのは、「クリオ」のプラットフォームがベースである以上いたしかたのないところだろうか。さらに3列目は、フロアが高く足元がかなり窮屈。家族でドライブするときは、夫婦が1列目、2列目はおじいちゃん&おばあちゃん、3列目に子供達……というのが、理想的な乗車順になろう。

肝心のラゲッジ容量は700リッター。シートアレンジによって最大2350リッターまで拡大できるのは大きな魅力。積載重量も100kgと、このクラスの標準値80kgを上まわるのが嬉しい。

かような「ロガンMCV」の価格は、フランス国内で8900〜1万2890ユーロ。2007年12月にデビューした「クリオ・スポーツツアラー」(1.2リッターの最低価格が1万3450ユーロ)と較べても、かなり安いと言える。
日本に輸出される可能性は低いだろうが、100万円ちょっとでこれだけマルチユースに耐えるクルマを手に入れられるのは、現地の感覚でも大きなアドバンテージだ。

ここ2年でロガンは30万台以上のセールスを記録した。コストパフォーマンスでは、もはや韓国車を抜いたと言ってもいいかもしれない。5000ユーロカーの実力は、日本車とて、決して侮れないはずだ。

(文=沼口高幸/写真=野間智)

試乗記の新着記事
  • ランボルギーニ・ウルスSE(4WD/8AT)【試乗記】 2025.9.3 ランボルギーニのスーパーSUV「ウルス」が「ウルスSE」へと進化。お化粧直しされたボディーの内部には、新設計のプラグインハイブリッドパワートレインが積まれているのだ。システム最高出力800PSの一端を味わってみた。
  • ダイハツ・ムーヴX(FF/CVT)【試乗記】 2025.9.2 ダイハツ伝統の軽ハイトワゴン「ムーヴ」が、およそ10年ぶりにフルモデルチェンジ。スライドドアの採用が話題となっている新型だが、魅力はそれだけではなかった。約2年の空白期間を経て、全く新しいコンセプトのもとに登場した7代目の仕上がりを報告する。
  • BMW M5ツーリング(4WD/8AT)【試乗記】 2025.9.1 プラグインハイブリッド車に生まれ変わってスーパーカーもかくやのパワーを手にした新型「BMW M5」には、ステーションワゴン版の「M5ツーリング」もラインナップされている。やはりアウトバーンを擁する国はひと味違う。日本の公道で能力の一端を味わってみた。
  • ホンダ・シビック タイプRレーシングブラックパッケージ(FF/6MT)【試乗記】 2025.8.30 いまだ根強い人気を誇る「ホンダ・シビック タイプR」に追加された、「レーシングブラックパッケージ」。待望の黒内装の登場に、かつてタイプRを買いかけたという筆者は何を思うのか? ホンダが誇る、今や希少な“ピュアスポーツ”への複雑な思いを吐露する。
  • BMW 120d Mスポーツ(FF/7AT)【試乗記】 2025.8.29 「BMW 1シリーズ」のラインナップに追加設定された48Vマイルドハイブリッドシステム搭載の「120d Mスポーツ」に試乗。電動化技術をプラスしたディーゼルエンジンと最新のBMWデザインによって、1シリーズはいかなる進化を遂げたのか。
試乗記の記事をもっとみる
関連キーワード
新着記事
新着記事をもっとみる
車買取・中古車査定 - 価格.com

メルマガでしか読めないコラムや更新情報、次週の予告などを受け取る。

ご登録いただいた情報は、メールマガジン配信のほか、『webCG』のサービス向上やプロモーション活動などに使い、その他の利用は行いません。

ご登録ありがとうございました。

webCGの最新記事の通知を受け取りませんか?

詳しくはこちら

表示されたお知らせの「許可」または「はい」ボタンを押してください。