三菱ランサーエボリューションX GSR(4WD/6AT)【ブリーフテスト】
三菱ランサーエボリューションX GSR(4WD/6AT) 2008.03.18 試乗記 ……449万6100円総合評価……★★★★★
ハイテク装備満載のハイパフォーマンスカー、「三菱ランエボX」。伝統的なMTに追加された、2ペダルMT「TC-SST」仕様車で、その実力を試した。
パドルが光る
「ランエボ」も10代目となり、その都度改良されてきた。当然ながら「最新こそ最良」と言える。強いて言えば、ややボディサイズは大きめながら、ファミリーカーとしても使う家庭には適度な室内寸法か。顔はやや怖い感じがするけれども、「遠くからでも確認できる」という意味では肯定できる。
今回追加されたパドルシフト車は“本来の姿”であり、魅力は倍増。すなわち、「ツインクラッチSST」の変速パドルがステアリングのポストコラムに固定されており、ハンドル操舵中であっても位置を捜す必要はない。同じ場所にあることで得られる操作性のよさは、「ハンドルと一体になって回るタイプ」がいかに不便であるかを雄弁に語る。マグネシウム製のパドルは長さも位置も丁度よく、指が触れる凹面の感触も良好。薄いわりに剛性はあって、しっかりしている。
肩をしっかり固定してくれるシートとあいまって、必要な舵角をワンアクションで与えコーナリング中は左右の手を水平に保つタイプのドライバーには、特に喜ばれる。このクルマに乗れば、肩を浮かして腕を伸ばしたまま曲がるコーナリング姿勢が、いかに不確実なものかわかるはずだ。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1992年10月デビューした、三菱を代表するハイパフォーマンスモデル「ランエボ」。2007年10月1日のフルモデルチェンジで、10世代目になった。
「ギャラン・フォルティス」をベースとする車体は、全長×全幅×全高=4495(+5)×1810(+40)×1480(+30)mm(カッコ内は先代「IX」比)と大型化。最高出力は280psの据え置きながら、最大トルク(43.0kgm)は太くなった。
トランスミッションは5MTと新開発の2ペダルMT「TC-SST」(ツインクラッチ・スポーツシフトトランスミッション)から選択できる。電子制御システム「S-AWC」(スーパーオールホイールコントロール)も特徴。前後輪間の差動制限をコントロールする「ACD」、後輪を制御する「AYC」、ブレーキのロックを防止する「ABS」、4輪のブレーキ力とエンジン出力を制御する「ASC」の4つを統合制御し、シームレスなトラクションコントロールを行う。
ラインナップは、基本装備充実の一般向けグレード「GSR」と、競技ベース車両「RS」の2種類。駆動方式は4WDのみである。
(グレード概要)
テスト車は2ペダルMTを備える「TC-SST」(ツインクラッチ・スポーツシフトトランスミッション)モデル。ギアボックスは、2枚のクラッチ板を用いて素早い変速を図る、フォルクスワーゲン・グループの「DSG」(ダイレクトシフトギアボックス)に類似したもので、ハンドルポストに備わるパドルを介して変速を行う。
MTに比べて操作は単純。「誰もが安心して楽しめるハイパフォーマンスセダン」を謳う、新型ランエボならではのモデルとされる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
デザインはやや凹凸が仰々しいが、このくらい派手でも特殊なクルマとしての自覚があってよい。
回転計、速度計のメーターは見やすく、その間にあるギアポジションなど情報表示も大きな数字で読みやすい。ナビ画面(オプション)はメーター類より低く、高からず低からず。見やすい位置にある。
「TC-SST」のシフト用パドルは固定されていて長さも、ハンドルからの距離も丁度いい。触れる指の感触も良好、これならばフロアのレバーより多用したくなる。
(前席)……★★★★★
レカロシートは文句なしにイイ。座った瞬間からよく身体にフィットして接触面全部が張りつけられる感じ。肩は優しく力強く抱いてくれるし、腰もすっぽりはさまり背面への依存具合も最高。肘の部分も邪魔にならない。
ペダルやメーター部分などダッシュボードとの位置関係もよく、ヤル気を起こさせてくれる。サイドブレーキはレバー式。これが一番。
(後席)……★★★★
見た目は平凡ながら、表皮の布はすべりにくい材質。座面の後傾斜角はクッション部の硬さ配分がよく、まずまず。尻が前に逃げにくい。背面は上下寸法タップリしており、肩まで包まれ感あり。角度は寝過ぎておらず適当といえる。
ドアも、肩までしっかり隠してくれる「セダンの後席らしい落ち着き」が得られる。ただし、リアサスからの騒音はトランクで増幅されて過大、棚板に遮音材が欲しいところだ。
(荷室)……★★
GSRは燃料タンクが増量されており、55リッターの容量が確保されている。そのためか、トランクの仕切りが比較的後方にあり、荷室の容量をせばめている。
サスペンションやデフの上はこれでほぼ占領される。スペアタイアはテンパーで、フロアからデッキまでの高さがあり、通常の用途では問題ない広さが確保される。リッドはバンパー高さから開き開口部も十分。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
トルク/レスポンスともに良好。全体にローギアードな設定なので、普段の実用速度でも5速や6速で1500rpm あたりから使え、燃費にも貢献する。速度の上昇はエンジン回転に委ねられるが7000rpmまで気持ちよく吹け上がり、ターボの不自然さなく快感の一語に尽きる。
変速パドルは固定されており、使い易く瞬間燃費計を見ながら適切なギアポジションを選べる。「D」の位置であっても、パドル操作が優先されるし時間で復帰するので便利。TC-SSTの変速はスムーズで素早さも意思に叶ったものだ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★★
サスペンションからの騒音はそれなりに大きい方だが、ボディの姿勢はフラットであるし、G的にも不快なレベルではない。シートは微振動をよく和らげてくれる。子供も酔いにくいだろうから、ファミリーカーとしても問題なさそうだ。ステアリングはレスポンスに優れ、気持ちよく旋回体制に入れる。
いたずらに機械が先行したり、逆に動きを緩和させるような機構は働かず、あくまでも自然な感覚でドライバーの意思が尊重されるのは、最良の美点だ。
(写真=高橋信宏)
【テストデータ】
報告者:笹目二朗
テスト日:2008年2月5〜7日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2008年型
テスト車の走行距離:9325km
タイヤ:(前)245/40R18(後)同じ(いずれも、ヨコハマ・アドバンA13)
オプション装備:ハイパフォーマンスパッケージ(21万円)/スタイリッシュエクステリア(5万2500円)/BBS社製アルミホイール(21万円)/7インチワイドモニターHDDナビ+キーレスオペレーティングシステム+オートライトコントロール+雨滴感応式フロントワイパー(27万3000円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(5):高速道路(5):山岳路(0)
テスト距離:203.6km
使用燃料:30リッター
参考燃費:6.79km/リッター

笹目 二朗
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