フォルクスワーゲンCC 1.8TSI(FF/7AT)【海外試乗記】
「パサート」は卒業 2012.02.09 試乗記 フォルクスワーゲンCC 1.8TSI(FF/7AT)フォルクスワーゲンの4シータークーペ「パサートCC」がフルモデルチェンジし、「CC」に名前を変えて登場。ワンランクアップした新型に、南仏ニースで試乗した。
昇格した「CC」
フォルクスワーゲンの「パサートCC」が、フェイスリフトを機に「フォルクスワーゲンCC」に改名した。「パサート」の最上級グレードから、パサートの上位モデルに昇格するにあたり、名前からパサートの文字を外したというわけだ。
フォルクスワーゲンには、フラッグシップサルーンの「フェートン」があり、「CC」はフェートンとパサートのギャップを埋めるモデル、という位置づけである。とはいっても、フェートンが存在感を示す市場はそう多いわけではなく、日本を含め、多くの国ではこのCCが事実上のフラッグシップサルーンになる。そういう意味では、CCはとても重要な役割を担うクルマなのだ。
そもそもCCは、2008年にパサートの派生モデルとして登場したスタイリッシュな“4ドアクーペ”。低いルーフにサッシュレスドアなど、まさにクーペのようなスタイルを採用したパサートCCだが、その一方で「コンフォートクーペ(CC)」の名前どおり、クーペとは一線を画する後席の居住性と広大なトランクを確保することで、従来のセダンユーザーを取り込むことに成功している。「ニッチ市場がひとつのセグメントになった」というフォルクスワーゲンの言葉は決して大げさではない。
高級車の条件
そんなパサートCCが、CCに変身するうえで開発陣が重視したのは、上級クラスにふさわしいデザインと快適性だという。全長×全幅×全高=4802×1855×1417mmのボディーは、全長が少し短くなった以外は旧型と基本的に同じサイズ。ドアパネル、ルーフ、そして、前後フェンダーもパサートCCと共通だ。
一方、一新されたフロントマスクは、ヘッドライトを水平のグリルで結んだ最新のフォルクスワーゲンデザインとなり、パサートCCとは対照的に、押しの強い印象に仕上げられた。個人的には旧型の“すまし顔”が好きだったが、高級車の貫禄を出すにはこのくらいは必要か? リアは丸っこいテールランプが水平基調になり、フロントとのバランスがとれたデザインになった。
インテリアは、これまた水平基調のダッシュボードを含めて、旧型のデザインを受け継いでいるが、使われている素材がグレードアップされたようで、以前にも増して上質な印象を受ける。
快適性については、遮音性の高いフロントガラスを採用したことに加えて、車線維持を助けるレーンアシストと、車線変更時の安全性を高めるサイドアシストを統合したサイドアシストプラスなど、ドライバーサポート機能を充実。ベンチレーション機能が付くスポーツシートもオプションで用意され、高級車にふさわしい快適なドライビング環境を提供する。
これもまたダウンサイジング
CCにはガソリンとディーゼルのエンジンがそれぞれ3種類ずつ用意される。ガソリンは、1.8リッターと2リッターの直列4気筒TSI(直噴ターボ)、そして、3.6リッターのV6直噴エンジン。このうち日本に導入されそうなのは、160ps/4500-6200rpm、25.5kgm/1500-4200rpmの「1.8TSI」と7段DSGの組み合わせだ。駆動方式はFFになる。
現在、日本で販売されているパサートCCが2リッターと3.6リッターだから、パワートレインに限ればダウングレードということになるが、いまやパサート/パサートヴァリアントが1.4リッターTSIを搭載することを考えると、今回の判断もまた燃費向上を狙った“ダウンサイジング”の一環ということになる。
さっそく走らせると、0.2リッターのダウンサイジングなどなんのその、フォルクスワーゲンのTSIらしく、低中回転域でトルクを充実させた1.8リッターエンジンは、1.5トンはあるはずのボディーを事もなげに前に進める。DSGが7段ということで、より低いギア比で発進できるのも好都合だ。
走りだすと、瞬く間にシフトアップを繰り返し、2000rpmくらいにエンジン回転を保ちながら、街中、そして、ハイウェイをクルージングしていた。エンジンを低回転に保つうえに、遮音性が向上したおかげでキャビンは静か。エンジンを回してやれば、4000rpmを過ぎたあたりから多少力強さにかげりが見えるが、それでもスムーズで十分なトルクを発生することに変わりはない。
乗り心地がいいのも、CCの印象を良くしている。試乗車には電子制御ダンパーが付く「アダプティブシャシーコントロール(DCC)」が備わっており、ノーマルモードを選んでおけば実に快適で、姿勢変化の少ない動きに保たれる。さすがにオプションの19インチを履いたモデルではタイヤのドタバタを感じたが、18インチ以下なら高級車にふさわしく快適で、それでいて、フラット感に満ちた乗り心地が味わえるのだ。
ということで、パサート/パサートヴァリアントの兄貴分として、十分胸を張れる実力を手にしたフォルクスワーゲンCC。日本には2012年の夏ごろに導入される予定で、現行の「パサートCC 2.0TSI」(497万円)に対してさらに装備を充実させながら、価格の上昇を避けるべく、フォルクスワーゲン・グループ・ジャパンでは調整を進めているという。
パサート/パサートヴァリアントはよくできたクルマだが、あまりに真面目すぎて……という人には、ゆとりが感じられるこのCCが魅力的に見えるに違いない。
(文=生方聡/写真=フォルクスワーゲン・グループ・ジャパン)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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