三菱ギャラン・フォルティス SPORT NAVI PACKAGE(FF/CVT)【試乗記】
期待高まる新型車 2007.09.12 試乗記 三菱ギャラン・フォルティス SPORT NAVI PACKAGE(FF/CVT)……250万9500円
2007年8月23日にデビューした、三菱の新型セダン「ギャラン・フォルティス」。7年ぶりのニューセダンの進化を試す。
久々の新型セダン
「ギャラン・フォルティス」は、7年振りという三菱にとって久々の4ドアセダンの新型車である。当面はこれで「ランサー」から「ディアマンテ」まで幅広いユーザー層をカバーすることになろう。ちなみにギャラン・フォルティスの輸出名は「ランサー」が選ばれた。
車体はもとよりエンジンまで一新され、心機一転となったわけだが、中身の一部は先に発表されている「アウトランダー」や「デリカ:D5」などとも共用する。
搭載されるエンジンは、2リッター154ps一種。ギアボックスは6段スポーツモード付CVTが主であるが、5段MTもスポーツモデルに新設定されている。
駆動はFFと4WDがあり、4WDはセンターデフの代わりに電子制御のカプリングを備え、2WD/4WDオート/4WDロックの3モードを選択する。
外寸は全長を詰めて幅を広く採った欧州トレンドに従う。見た目の印象としては、従来のギャランよりスッキリ小型化され、顔も精悍になった。デザイン上の処理に難点を見いだすならば、ドアの断面形状などから厚み感が足りないように思えて、角々した接点処理とあいまってやや外板が薄っぺらい印象を受ける。
しかし車両重量は1370kg(CVT)であるから、軽量化には成功している。また足元は18インチの大径タイヤにより、ガッシリ支えられている感覚は上々。
基本はできた
今回は、スポーティな「SPORTS」に「NAVI PACKAGE」が付いたモデルの、CVTと5MTを試すことができた。
実際に走り出した感覚は、軽快でありながら思いのほか室内は静粛に保たれ、フリクションも少なくよく転がる。215/45R18の太く大径のタイヤ/ホイールは、乗り心地的にバネ下が重くドタバタして不利かと思ったが、危惧したほどのマイナス面は見られず、ボディやサスペンション系の剛性は十分に高いと判断できる。
操舵力は程々に軽めで直進性も応答性も特別な不満はない。回転半径5mは今どきのクルマにしては上々の首尾。ロールもよくチェックされており、バネ系を硬めて得られたものではなく、三菱車にありがちの重心高に対してロールセンターが低過ぎる感覚も薄く、サスペンションアーム類のジオメトリーや位置決めは概ね適当と思われる。
しかし「これで満点か」「自分で買ってもいいか」と自問自答すると応とはいえない。走行感覚的にはやや雑で繊細さに欠ける部分も付きまとう。これで基本はできたとしてさらなるファイン・チューニングに期待したい。
これはトランクも含む内装などの仕上げに関しても同じような感触と言え、やや粗雑な面も散見される。178万5000円から243万6000円の価格に対して相応とする見方もあるが、期待値はもう少し上にある。
1.8リッター+5MTを希望
注目の5MTギアボックスの感触は良好。短いストロークと軽い操作でコクコク気持ちよく決まる。クラッチのミートポイントは適切で踏力も軽い。国産車のMTギアボックスの中では最上のクラスに入るだろう。個人的にはギアレシオの1−2−3速をもう少し接近させてほしいところだが、実用車であるからこの辺で我慢するしかないのかもしれない。
もう一つ提案が許されるならば、エンジンのバリエーションは1.8と2.4も社内にはありそうだから、5MTのみ1.8と組み合わせれば面白いと思う。もちろん小排気量化は、最近の温暖化対策の一環として、流行に沿うもので燃費に貢献する。
MTならば2リッターCVTに動力性能的に引けをとらない。またベース車両を1.8にすることで、2リッターは上級車に見える効果もある。MTは若者の需要よりもむしろ熟年層に見直されている仕様で、必ずしもスポーティで高性能な内容ではなくとも、ドライビングの基本操作が楽しめればいいとする意見もある。
ギャラン・フォルティスの発表に先立って、自動変速マニュアルトランスミッション「Twin Clutch SST」の技術発表が行われた。今回の試乗会には間に合わなかったが、まだまだ興味深い車種も追加される予定だ。
(文=笹目二朗/写真=峰昌宏(M)、荒川正幸(A))
