三菱ギャラン・フォルティス スポーツバック スポーツ(FF/CVT)/ラリーアート(4WD/6AT)【試乗速報】
来たれ、行動派 2008.12.16 試乗記 三菱ギャラン・フォルティス スポーツバック スポーツ(FF/CVT)/ラリーアート(4WD/6AT)……255万8850円/350万9100円
「三菱ギャラン・フォルティス」シリーズに、ハッチバックボディの「スポーツバック」が加わった。さて、新しいボディ形状は、どんな変化をもたらしたのか……?
純粋にカッコいい
三菱の「ギャラン・フォルティス」にハッチバックが加わった。「スポーツバック」と呼ばれるこのモデルは、顔つきや4枚のドアまでがセダンとほぼ同じで、バックドアを含む後部のデザインのみが変更されている。開発当初から計画されていたとはいえ、コレがコンセプトの原型ではないかと思わせるほど、デザイン上のバランスは良好だ。最近流行りの「クーペのようなセダン」的でもある。
いわゆるノッチバック・セダンに対するハッチバックという、単なるボディ形式上の分類ではなく、純粋に「カッコいいクルマ」として評価されるべきモデルであろう。
ハッチバックのボディ形状は比較的小さなクルマに多いが、少し大きなサイズでも便利さは衆目の一致するところ、欧州車にはこのクラスでも普通に存在する。セダンより若向きで実用的でもあるから、行動派ユーザーには狙い目の一台といえよう。
![]() |
![]() |
車重アップも“結果オーライ”
ハッチバック化に伴う重量増加は大まかに60kg。開口部がおおきくなったことに伴うボディの補強や、バックドア自体の重さなどが主たる要因であるが、トランクの床面を2段階の高さに調節できることや、リアのシートバックを倒して1570mm×1395mmのフラットフロアを確保したことなど、ハッチバックとしての使い勝手を向上させた結果でもある。目新しいものとしては、レバーを引くだけでバックレストを倒せるワンタッチフォールディング機構なども親切な装備。
この後輪荷重の増加は、走行感覚の上でも良い方向に影響している。後輪の動きに落ちつきが加わったことで、乗り心地が良くなり静粛性も向上している。ギャラン・フォルティスそのものも、発表時から量産経験をつんで少し手が加えられている。すなわち、サスペンションはチューニングが進んでよりリファインされた。
スポーツバックには「ラリーアート」「スポーツ」「ツーリング」と3つのグレードが用意されているが、この日はラリーアートとスポーツに試乗した。横置きエンジンで前輪を駆動するのが基本ながら、ツーリングとスポーツは4WD仕様もある。こちらはスイッチひとつで切り替わる簡便型4WDで、FF/4WDオート/4WDロックの3つのポジションが選べる。
ラリーアートというのは文字通り、より本格的にドライビングを楽しむためのクルマで、エンジン・パワーも154psから240psへとアップされている。駆動方式もセンターデフ付きフルタイム4WDとなり、ギアボックスはツインクラッチの6段SST。これはフォルクスワーゲンのDSGやポルシェのPDKなどと原理的には同じ2ペダルMT式のオートマチック。現在は休止しているが、WRCでのラリー活動が再開されれば、活躍を約束された存在となろう。
ムダやムラのないクルマ
試乗は海辺の住宅地とあって、しっかりチェックできる条件ではなかったが、日常生活で大事な普段の使い勝手は良好。実用域での乗り心地や静粛性、発進停止にまつわるマナー、駐車場などでの前進後退など、不都合な部分は感じられなかった。
エンジンはパワーの差こそあれ、どちらも全域で気持ちよく吹け上がり、スッキリと身軽に回転を上下させうるタイプで、トルク/レスポンスともに申し分ない。伝統といわれるような個性を売り物にするエンジンに比べ、これはいかにもコンピューター時代の申し子らしく、無駄のない振る舞いが“新感覚”であり特徴でもある。好感度の高いエンジンだ。
ギアボックスについては、SSTの動きもスムーズで普通のトルコン感覚で乗れるし、スリップ感のないダイレクトさゆえ、エンジンそのもののレスポンスを楽しめる。ギアの選択に戸惑う感覚などはない。前進後退の作動ラグも予想レベルより少ない。もちろん左足ブレーキでも問題はなく、アクセル、ブレーキ同時に踏んでもエンジンがストールすることもない。
FF車のCVTも多少のクリープ感は作りだされており、エンジン回転と車速の関係も良好、不自然なほどエンジンが喧しく感じられることはない。SST同様にパドルを使って積極的にギアポジション(6段)を選ぶこともできるが、変速パドルはステアリング・コラム側に固定されていて、探すことなく安心して操作できる。
ハッチバック化によりボディ剛性の絶対値は低下しているが、問題になるような点は見当たらず、乗り心地も姿勢はフラットでダンピングも良好。サスペンションの動きも適切で、路面の上下変化をうまく吸収してくれる。
惜しむらくは路面のコーナー部分にあるような、ゼブラ状のペイントなどの微小変位の連続入力に対し、ブルブルとやや共振気味なところ。
お勧めはFF、ツーリングのほう。さらに上を望むならば、4WDが必要な方や本格的な走り屋には「ラリーアート」、といったところだろうか。
(文=笹目二朗/写真=峰昌宏)
