トヨタ・ヴォクシーZS(FF/CVT)【ブリーフテスト】
トヨタ・ヴォクシーZS(FF/CVT) 2007.08.29 試乗記 ……価格=312万2700円総合評価……★★★★
便利機能をさらに充実させ、2代目に進化したトヨタの新型ミニバン「ヴォクシー/ノア」。新開発エンジンを搭載した、クールな印象の「ヴォクシー」に試乗した。
正常進化
休日の高速道路、あるいはショッピングセンターのパーキングなどで、ミニバン比率が高いのはご存知のとおりだが、あらためてそのミニバンたちをチェックすると、「ヴォクシー」と「ノア」の多さは呆れるほどだ。
実際、2006年度(2006/4〜2007/3)のセールスは、モデル末期にもかかわらず、ヴォクシーが6万767台、ノアが4万9229台で、合算すると「カローラ」「ヴィッツ」に続くベスト3に入る。また、新車が登場した2007年7月は、ライバルの「日産セレナ」が6816台で7位のポジションを確保したのに対して、ヴォクシーは6854台で6位、ノアも5659台で9位、さらにこれらを合算するとトップのカローラを上回るという健闘ぶり。新車効果を差し引いても、この2台がトヨタにとっていかに重要なモデルかがわかるだろう。
激戦区を戦う人気車種だけに、使いやすさや新しさのアピールも抜かりはなく、「たまたまそういう時期だった」という“バルブマチック”の投入も、ニューモデルを盛り上げるには格好の話題。実際に乗ってみても、期待を裏切らないでき映え。個人的にはセカンド/サードシートに納得できない部分はあるが、それにしても、しばらくはその高い人気が揺らぐことはないだろう。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2001年11月、「タウンエース」「ライトエース」の後継として、3列シート8人乗りのミニバン「ヴォクシー」「ノア」が誕生した。商用車をベースとしたFRからFFの新設計プラットフォームに変更され、まったく別のクルマに生まれ変わった。2004年8月のマイナーチェンジを経て、2007年6月27日、フルモデルチェンジに至った。
2代目も、5ナンバーサイズ(上級グレードは3ナンバー)に8人乗りの3列シートという基本コンセプトで、子育て家族をターゲットにする。親しみやすい「ノア」に、クールで個性的な「ヴォクシー」という、2種類のデザイン展開も引き継がれた。
新型では、新エンジン搭載による環境性能の向上が図られ、さらにシートアレンジをはじめとする、便利機能が多く採り入れられた。
エンジンは新開発の2リッターが2種類で、それぞれにCVTが組み合わせられる。駆動方式はFFのほか、4WDモデルも用意される。
グレードは、ベーシックな「X」、その2列シート5人乗りの「TRANS-X」、豪華仕様「V」のほか、スポーティな新開発エンジンを搭載した「Z」と「ZS」が設定されている。また、「X」に快適装備を追加した「X Lエディション」と「ZS」には、7人乗りの“サイドリフトアップシート装着車”もラインナップされる。
(グレード概要)
最上級グレード「ZS」は、吸気・排気バルブタイミングを最適にコントロールするDual VVT-iと吸気バルブリフトを連続的に変化させる機構を加えた「バルブマチック」を採用した新開発エンジンを搭載。先代のエンジンに較べ、出力・燃費ともに向上している。
組み合わされるトランスミッションはCVTで、7速スポーツシーケンシャルシフトマチックというパドルタイプのシフトレバーが装着される。また、上級モデルの「Z」「ZS」は、フロントやリアのバンパーが大型化し、3ナンバーとなり、タイヤサイズも標準の195/65R15から205/60R16へアップする。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
直線的なダッシュボードに、四角いセンタークラスターと、アナログ3連のセンターメーターが配置されるのが特徴。速度計、回転計はやや高い位置にあり、ドライバーに向けられていることもあって意外に見やすい。ダッシュボード表面はつくりが丁寧で安っぽさを感じさせない。ドライバー正面に蓋付きの収納があるほか、収納スペースが豊富なのも便利だ。全体的にすっきりとした印象のデザインで、新しさも感じられるが、その新鮮さが持続するかどうか、ちょっと心配だ。
(前席)……★★★★
やや高めの座面を持つが、サイドシル部分に一段低いステップを設け、また、Aピラーにグリップが用意されるので、乗り降りには苦労しない。運転席はシートリフターが備わり、ステアリングもチルトとテレスコピック調節が可能なため、適切なポジションを得やすい。シートそのものは、ファブリックの表皮の張り具合が適度なのに加えて、ラウンドしたシートバックがドライバーの背中を優しく包み込む感じで、座り心地はなかなか快適である。
(2列目シート)……★★★
「ZS」グレードは、“ワンタッチタンブルシート”が標準で、“ロングスライドマルチ回転シート”はオプションの設定。試乗車は標準のままだが、その場合でもスライド機能はついていて、シートを一番前に出しても大人が座れるし、一番後ろなら足が組める広さが確保されている。ヘッドルームは十分すぎるほどだ。
シートは3人掛けだが、中央は狭くてクッションが硬いうえにヘッドレストがなくシートベルトも2点式と、ほぼ補助席の扱い。こういった例は日本車では珍しくないし、3ナンバーのワイドボディとはいえ基本的には5ナンバーと同じ室内に横3名座らせるのは難しいのもわかるが、(さらに全幅に余裕があるモデルまで)それが当たりまえになっているのはどうかと思う。なお、中央部は跳ね上げることで前後のウォークスルーが可能、サードシートへのアクセスは便利だ。
(3列目シート)……★★★
セカンドシートが一番後ろの位置にあっても、足元のスペースがなんとか確保されるサードシート。セカンドシートを少し前に出しさえすれば、大人でも十分な余裕だ。もちろん、ここでもヘッドルームは広い。
サードシートも3人掛けで、左または右の席でシートベルトをすると、シートクッションに収まるバックル部分があまり中央に寄っていないために(中央席のスペースを確保するためだろう)、大人には窮屈なのが気になった。ただでさえ後席のシートベルトの装着率の低さが問題なのに、装着すると窮屈なようでは困るのだ。
中央席は左右席と明確な境界がなく、そのぶんセカンドシートより座り心地はいいが、シートベルトは2点式でヘッドレストは備わらない。
(荷室)……★★★★
サードシートを利用する状態ではさほど広くない荷室だが、床下に深めの収納スペースが用意されるおかげで、見ため以上に便利に使えそうだ。
荷物が多いときにはセカンド/サードシートをアレンジすることになるが、その操作の簡単さは噂どおりだ。サードシートは、荷室側からシート下のレバーを一度引くとシートバックが倒れ、さらにもう一度引くと横に跳ね上がるというもので、操作は軽くて簡単。セカンドシートも、スライド位置が一番後ろでヘッドレストが一番下という状態であれば、シートバックを前に倒すだけでタンブルするので、こちらも操作は簡単だ。
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【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
ヴォクシーZSに搭載されるエンジンは、新開発の3ZR-FAE。吸排気ともに連続可変バルブタイミング機構「Dual VVT-i」を採用するのに加えて、吸気バルブのリフト量を連続的に変化させる“バルブマチック”を搭載したのが新しい。これはBMWのバルブトロニック同様、シリンダーに吸い込む空気の量をスロットルではなく、直接吸気バルブでコントロールするもので、パワーアップやレスポンス向上、さらに、ポンピングロス低減による燃費向上などが期待される。
“Super CVT-i”との組み合わせでは、発進時トルクコンバーターによる弱いクリープがある。動き始めてアクセルペダルを軽く踏み込むと、即座にエンジン回転は跳ね上がり、体感的には2リッター以上かと思えるほどトルクには余裕がある。その際、パワートレーンや排気系のノイズがやや大きめなのが気になった。
ちなみに、発進後、トルクコンバーターはすぐにロックアップされるので、低速でレスポンスがいいのはトルコンスリップに頼るものではなく、CVTが持つ高効率は損なわれないそうだ。
さらに回転を上げていくと、4000rpmあたりから一段とトルクが盛り上がる印象で、高速道路で追い越しをかけるような場面でも1600kg強のボディを不満なく加速させる。それで他のグレードより好燃費ということになると、このエンジンが一番のオススメか。
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(乗り心地+ハンドリング)……★★★
アタリがマイルドなタイヤのおかげもあって、乗り心地は快適でも、意外にしっかりとした印象。ミニバンならではの、前後、左右の小さな揺れはあるものの、ロールはよく抑えられていて、高速道路での直進性やフラット感も合格点だ。路面によっては、舗装の荒れを拾ったり、目地段差によるショックを伝えることもあり、とくにサードシートは前席やセカンドシートに比べて目立つが、それでも十分許容できるレベルである。
(写真=高橋信宏)
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2007年8月13日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2007年型
テスト車の走行距離:4349km
タイヤ:(前)205/60R16 92H(後)同じ(いずれも、TOYO TRANPATH J54)
オプション装備:ボディカラー(3万1500円)/S-VSC+ヒルスタートアシストコントロール+前席SRSサイドエアバッグ&全席SRSカーテンシールドエアバッグ(13万6500円)/デュアルパワースライドドア(5万2500円)/ワイドビューフロント&サイドモニター+インテリジェントパーキングアシスト+HDDナビゲーションシステム(43万500円)/ETC(1万4700円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(5):高速道路(5)
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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