新型「三菱ランエボX」、走る!(後編)
2007.08.19 自動車ニュース新型「三菱ランエボX」、走る!(後編)
アメリカやドイツのテストコースに現れた「三菱ランサー・エボリューションX」のスパイビデオ。そこから読み取れる、新型のハンドリングとパワーユニットの仕上がり具合とは?
■「S-AWC」の威力
(前編からのつづき)
過去、筆者は北米仕様の「ランサーGTS」で、ロサンゼルス郊外のワインディングを攻めたことがある。その際、「もっとリアサスが積極的に動いたほうがベターかも知れない」と思った。コーナリング中のロール量が予想以上に大きく、攻めば攻めるほど、アンダーステアになるのだ。
(攻めるのは、エボXでのお楽しみということか!?)
ちょうどその時、比較車両としてホンダ・シビック・タイプS(タイプRの開発ベース車。Rに比べ若干マイルドな乗り味)を持ち込んでいた。ホンダ車はその特性として「コーナーリング後半にリアサスが積極的に働くFF」とされ、ランサーGTSとの差がより明確に感じられた。
ランサーGTSはスポーツセダンのエントリーモデルだから、ある程度ロールさせて“乗りやすいスポーティ路線”を目指すのは当然かもしれないが……。
対するエボXは、ビルシュタインで足まわりをかため、さらにS-AWC(スーパー・オールホイールコントロール)を備える。これまでACDで、ターマック/グラベル/スノーの各モードに切り替えられた。今日はそのうえ、S-AWCでも多段階切り替えが可能(コンセプトXではステアリングスポークの左側にスイッチがある)。四輪駆動の前後トルク配分、ヨーモーメントの積極的な活用、スタビリティコントロールとABSが巧みに連動するという。
ニュルでの雨中走行ビデオを見ても、安定性の中に「動きのキレの良さ」が感じられる。また、ウィロースプリングス・ショートコースでの走行ビデオでは、旋回開始状態でアンダーが強めでないばかりか、定常旋回に入ってもヨーモーメントが過剰発生している様子はない。コーナー出口でのリアトラクションもしっかり効いている。クルマ全体を“ズッシリとした動きの一体感”が覆っているかのようだ。
また、北米ランサーGTS試乗時に最も感心したのが、ブレーキのタッチの良さだった。同車はアウトランダーから大型ブレーキを移植していたが、エボXはブレンボ採用。GTS同様のコントラブルで安心感の高いブレーキタッチを、エボXでも期待したい。
■250km/hで快適クルージングを
さて、エボX最大の注目点が「4B11」エンジンだ。アウトランダー搭載の2.4リッター(4B12/ボア×ストローク=88×97mm)を、86×86mmにして2リッター化した。
北米ランサーGTSのノンターボ「4B11」は、性能曲線を見るとビックリするほど3000rpm前後に「トルクの谷(=落ち込み)」がある。最高出力152hpのGTSの場合は、燃費を考慮してあえてこうしたセッティングにしている。エボXでは、そのトルクの谷を、ターボによるトルクの山が埋め合わせることになるだろう。そこに、TS-SST(ツインクラッチ・スポーツシフト・トランスミッション)のキレのあるレスポンスが備わるのだ。
「4B11」はアルミブロックであり、強固な鋳鉄ブロックでできた旧「4G63」のような500hp級のチューニングには適さない。4B11はここ一発のパワーより、高次元でのドライバビリティを重視することになるだろう。
ニュルなどの走行ビデオからは、けっして過激な加速は感じられず、ジェントルなスピードの伸び感を優先しているように思える。
以前、筆者はエボIXをドイツのアウトバーンで全開走行させたことがある。200km/hをオーバーすると加速が鈍り、メーター読みで最高速度の230km/h弱までジワジワと到達。BMWやメルセデスの2リッター級ディーゼルターボ車たちに抜かれるケースもあった。
エボXは最高出力300hpオーバーを狙うこともさることながら、(ドイツでリミッターがきく)250km/hでの快適クルージングが楽しめる仕様であるに違いない。
(文=桃田健史(IPN)/写真=三菱自動車)
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