三菱ランサーエボリューションVIII MR RS(6MT)【試乗記】
すぐに忘れてしまうアツさ 2004.03.31 試乗記 三菱ランサーエボリューションVIII MR RS(6MT) ……380.5万円 “ランエボ”こと「ランサーエボリューションVIII」のエンジン性能を高めた、高性能スポーツセダン「ランサーエボリューションVIII MR」。自動車好きがニンマリする面白さとは……。自動車専門誌『CG』編集局長の阪和明が乗った。
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楽しいクルマ
久しぶりに楽しいクルマに乗った。最新の「ランサーエボリューション」を箱根で走らせての印象である。何と言うか、溜飲が下がるというのか、日頃の鬱憤をすべて晴らしてくれるような痛快さ、自動車好きが思わずニンマリしてしまう面白さに充ちたクルマ。それが“ランエボ”だ。
ランエボが登場したのは1992年10月のこと。三菱が世界ラリー選手権(WRC)に打って出るにあたり、競技車のベースモデルとしてつくられた。ノーマルの「ランサー」が無味無臭といえるほど淡白な性格であるのに、ランエボはとんでもなくホットだ。4ドアセダンというボディの形態こそそのままに、中身はまったくの別モノ、操縦性、動力性能いずれも突出している。それだからこそ、走り屋の若い人はもちろん、山道大好きの“昔とった杵柄組”の一部のオジサンにも好評だった。
そのランエボも、いまでは8世代目なのだから驚きである。だから今回乗ったランエボは、「ランサーエボリューションVIII MR」というのが正式名称。MRとはミツビシ・レーシングの意だという。なんだか野暮ったいネーミングとはいえ、たしかにレーシングの名は伊達じゃない。ランエボVIII MRは素晴らしく速く、びっくりするほど曲がるのだ。
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扱いやすいエンジン
たとえば、動力性能ひとつとってもスゴイ。2リッターの4気筒ターボエンジンはパワフルかつトルクが太く(280ps/40.8kgm)、猛烈なダッシュ力を誇る。高速道路の料金所から本線に入る際、1速、2速とリミットの7000rpmまで引っ張っていけば3速にシフトアップするころには100km/hに達する。その間10秒も要しない。とてつもない駿足ぶりを示す。もちろん、たんに加速性能がいいだけではなく、このエンジン、きわめて扱いやすいことも嬉しい。
この手のクルマとしてはクラッチも軽く、2000rpm以下に回転を落とさなければ有効なトルクがもりもり湧き上がり、どの回転域でも充分以上の加速を味わえる。まったくストレスなしにぐいぐいと1360kgのボディを加速させるし、高速でのスタビリティも申し分ないから、調子に乗って飛ばしてしまうと免許証が何枚あっても足りないだろう。
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走ることのみを追求
そしてこのクルマの最大の魅力は、ワインディングロードという“スペシャルステージ”で遺憾なく発揮される。とにかくターンインの鋭さには思わず快哉を叫びたいくらい。クイっ、クイっとクルマは面白いように曲がる。わずかなロールをともないながら、狙ったラインをきれいにトレースしていくばかりか、ブレーキングによって意識的にオーバーステアにもっていくこともできる。それも大した努力なしに、スイっとテールが流れるのだから恐れ入る。それにそうなっても怖くない。まるで自分の腕が上がったかのように錯覚してしまうほどである。
「スーパーAYC」と呼ばれる進化を遂げた電子制御フルタイム4WDの真骨頂と言えるかもしれない。ブレーキの効きもよく、私のペースではフェードする場面もなく安心して飛ばせるのだ。ハンドリング・マシンとはこのクルマのことだろう。
だからといって街なかで扱いづらいこともない。クラッチにしても少々重い程度だし、ふつうに乗れる。すっぽり体を包み込んでくれるバケットシートへのアクセスもそれほど悪くない。
乗り心地はたしかに硬いが、ゴツゴツ、ビシビシというわけではない。後席に人を乗せたいとは思わないが、仮に乗せるようなことになっても、それほど申し訳ない気分にはならないはずだ。
テスト車は「RS」という競技車ベースのグレードで、もうひとつの街乗り用「GSR」のように装備は充実していない。それこそ必要最低限以下で、エアコンもパワーウィンドウも省かれている。カーナビもないからダッシュボードはシンプルなものである。それこそ走ることのみを追求したクルマ。なんとも潔いじゃないか。
ひとつだけ恥ずかしいのが外観である。リアの大きなウィングといい、ノーズのエアスポイラーといい、大人が乗るには目立ちすぎる。けれど、日曜日の早朝にひとりでこっそり箱根に向かうような使い方なら、それほど気にならないかもしれないし、だいいち、いざ走りだせば、クルマの姿カタチなんかすぐに忘れてしまうアツさがこのクルマにはある。
(文=阪和明CG編集局長/写真=清水健太/2004年3月)

阪 和明
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