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第3回:イタリアで妙な現象!? 「500」関連グッズが日用品店に並ぶワケ(大矢アキオ)

2007.08.11 マッキナ あらモーダ! 大矢 アキオ
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第3回:イタリアで妙な現象!? 「500」関連グッズが日用品店に並ぶワケ(大矢アキオ)

まだまだ見ない

2007年7月4日、新型「フィアット500(チンクエチェント)」が発表され、早くも1カ月が経ったが、ボクはいまだに路上で一般人と思われる人が運転しているのを見たことがない。

たとえ「おおッ!」と目撃しても、Provaのデカールが貼ってあったりするのだ。
Provaとは試乗車。それも顔見知りのセールスの親父が、昼休みに家までの往復に使っていたりする。

まあ、本格的デリバリーが始まるのは、夏休み明けの9月以降だから、仕方ないといえば仕方ないのだが。

「太陽の道」沿いにあるアウトレットモールで。一角に展示された新型500。
「太陽の道」沿いにあるアウトレットモールで。一角に展示された新型500。 拡大
買い物客の注目を、それなりに惹いていた。
買い物客の注目を、それなりに惹いていた。 拡大

日用品店にまで

いっぽう、ここのところイタリアの街角では、妙な現象が起きている。500関連グッズが、様々な店舗のショーウィンドウに飾られているのである。
玩具店では、新旧500ミニカーの品揃えが強化されているのはもちろん、雑誌スタンドやタバコ屋でも500のモデルが売られている。旧型500を題材にした絵を売っている画廊も発見した。
驚いたことに、近所の日用品店の店先にまで、チリトリや蚊取り線香とともに500のミニカーが並べられているではないか。

そもそもトリノでは、7月初めのフィアット500発表に合わせて、目抜き通りにある商店の店先には、新型500のパーツが飾られた。
これはフィアットがしかけたプロモーションで、街全体で500誕生祝賀ムードを醸し出すための演出だった。
幸い、その“華やぎ”効果は、バーゲン時期と相まって、それなりに商店の客足を伸ばしたようだ。

しかしトリノ以外の街で、フィアットのサポートなんぞ、あるはずがない。
なぜ街角の商店まで気合が入るのか?

書店は、軒並み関連書籍を店頭に並べている。
書店は、軒並み関連書籍を店頭に並べている。 拡大
米国人女流画家による「500のある風景」。シエナla Parpagliola画廊で。
米国人女流画家による「500のある風景」。シエナla Parpagliola画廊で。 拡大

イタリア人も買ってゆく

もちろん新型500発表に当てこんで、玩具メーカーや輸入業者が「500もの」を強化しているのは容易に想像できる。だが、それを仕入れて並べるかは、商店の判断である。
そこで、ボクが住むシエナで新聞・雑誌スタンドを営む、エマヌエレ&アレッサンドロ兄弟に聞いてみた。

「なんで500のミニカーかって? 売れるんだよ。ブラーゴ製で14ユーロのモデルが1日で3台売れる日もあるよ」
3台というと些細な数字に聞こえるが、彼らの本業は新聞・雑誌店ですから。
今イタリアは観光シーズン真っ盛りだ。500ミニカーを買ってゆくのは、イタリア土産を求める外国人観光客?
「外国人だけじゃくて、イタリア人も買ってゆくよ。それも老若男女問わないね」

新車登録台数の7割近くが外国車というイタリアで、国産フィアットのミニカーが売れているとは。

思えば、トリノショーが消滅して久しい。唯一残ったボローニャショーも新型発表の場というよりは娯楽的要素が強く、いっそのこと「セカンドライフ」の仮想空間の中でやっても済むようなムードである。
過去数年、イタリア人はクルマに覚めている感じが漂っていた。ミニカー、それも国産フィアットのミニカーなど、売れるはずがなかった。

そのイタリアでクルマグッズに人気が出始めたのは、なんとも興味深い現象である。たしかに、玩具店も頻繁に新旧の500ミニカーを仕入れているらしく、頻繁にショーウィンドーに並ぶモデルの色が変わっている。
この盛り上がり、秋以降に新型500の実車にまで繋がるのか、注意深く見守りたい。

この春、ブームに先駆けて貼り出された靴の広告。コピーは「イタリア国民の靴」。
この春、ブームに先駆けて貼り出された靴の広告。コピーは「イタリア国民の靴」。 拡大
500グッズ人気の副産物(?)。フィアット・リトモのミニカー。
500グッズ人気の副産物(?)。フィアット・リトモのミニカー。 拡大
雑誌スタンドのエマヌエレ&アレッサンドロ兄弟。
雑誌スタンドのエマヌエレ&アレッサンドロ兄弟。 拡大

エンスーに嬉しい、思わぬ波及効果

ところでこの500グッズ人気、エンスージアストにとっては、予期せぬことも起きている。
ひとつめは、フィアット系マイナー・モデルのミニカーも、店頭に充実してきたことだ。「元祖フィアット500」と一緒にいかが? というわけであろう。もちろん、そうしたモデルは、一部のマニア向け模型店では従来からチラホラ見られたが、値段は高めだった。それに対して、500ブームとともに出てきた「フィアット・ディーノ」「同リトモ」、初代「パンダ」といったモデルは、たいてい7ユーロ(約1100円)以下である。
「激地味車種こそ、純粋イタリア車」と信じてやまないボクとしては、歓迎すべき流れである。

もうひとつ嬉しいのは、今夏500を突然ショーウィンドーに飾った店の主は、「売れるから仕入れた」というだけでなく、大抵クルマ好きであることだ。日頃、話すきっかけがない店主であっても、ひとたび500をネタにクルマの話を始めると、たちまち親しくなることができる。
たとえば、前述の雑誌スタンドのアレッサンドロは、「フィアット・プントカブリオ」の熱烈な愛好者。日用品店のルカは、なんと「ポルシェ・カレラ」と「アルファ・スッド」を所有する、ボクサー・ファンだった。

フィアット500グッズ人気は、横丁の隠れエンスージアストと出会う、良いきっかけにもなっている。

(文と写真=大矢アキオ Akio Lorenzo OYA)

日用品店のルカさん。
日用品店のルカさん。
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一説によれば、イタリアで元祖500は今も150万台が現役という。
一説によれば、イタリアで元祖500は今も150万台が現役という。
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大矢 アキオ

大矢 アキオ

Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、24年間にわたってリポーターを務めている。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。

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