シボレー・コルベット・コンバーチブル(FR/4AT)【試乗記】
ユルい、力強い、気持ちいい 2005.06.07 試乗記 シボレー・コルベット・コンバーチブル(FR/4AT) ……835万円 6代目となった「コルベット」には、最初からクーペとコンバーチブルが用意されている。アメリカン・スポーツの代名詞は、オープンカーとしていかなる実力を持っているのか、自動車ジャーナリストの島下泰久が探る。V8のトルクにすべてを忘れる
新しいコルベットは、ボディサイズをグッとコンパクトにして登場した。全長は実に100mmも短く、逆にホイールベースは30mm伸ばされている。その意図は、おそらくGMの世界戦略車として、ライバルとされるリアルスポーツカーたちと対峙できるパフォーマンスを得るということだろう。リトラクタブルヘッドライトが廃されたのも、やはり運動性能のため。ちょっと寂しい感はあるが、そのスタイリングは、むしろ贅肉を落として残った筋肉を強調したという印象で、依然コルベットらしい迫力を醸し出している。
それに対してインテリアは、質感こそ高まったものの、デザインはあまりパッとしないというのが正直なところ。先代はともかく、たとえば“C4”とよばれる先々代なんて、今や古臭くしか見えないとはいえ、当時としてはそれなりに気合いの入った造形だったし、もっともっと昔のC2あたりなんて、実にアーティスティックな造形だったのだ。特にこれが、内装まで大いに注目されるコンバーチブルだと考えると、もう少し何とかならないのかなと思ってしまう。
けれど、いざ路上に出て、排気量が6リッターまで拡大されたこだわりのプッシュロッドV8を唄わせてしまえば、細かなことは意識からスーッと遠のいていく。これぞアメリカンスポーツのマジック。ギア比は高めにも関わらず、低回転域でも右足に軽く力を入れただけで、背中がグッとシートバックに押し付けられるほどトルクは強力。しかも臆せずさらに踏み込めば、いかにもコルベットらしい一瞬の“ため”のあと、テールの沈み込みとともにドーンとトルクの波が押し寄せ、従来よりいくぶんか粒が揃った印象のドロドロという特徴的な鼓動を響かせながら、一気にそしてスムーズに吹き上がってもくれる。こんなエンジンならば、たった4速のATでも不満など出てこない。
気合いにも応えてくれる
フットワークも洗練された。先代に続いて採用されたマグネティックライドコントロールを通常時の「TOUR」モードにしておけば、乗り心地はいい意味でとてもユルく、スポーツカーとしてはなどというエクスキューズなしに、とても快適。一方「SPORT」モードに入れれば、足は途端に引き締まって、実にしたたかな接地感がもたらされる。思いのほか高いボディ剛性と前後重量配分の良さも相まって、パフォーマンスとしては気合いを入れた走りにも十分応えてくれる。
実際、特にクーペの場合は、タッチの優れないブレーキや味気ないステアリングフィール、そして十分な接地感を保つタイヤとは裏腹に、終始上下動を繰り返すボディの落ち着きのなさなど、クルマとの一体感の点で不満は少なくないのだが、コンバーチブルになると、そうしたネガをあまり意識しないで済む。それは最初に挙げた内装のデザインにしてもそうで、要するに、そんなことばかり気にしてないで、力強いエンジンの息吹きとユルい乗り心地に身を任せつつ、流れる景色に目を向ける、そんな走り方こそコルベットには合っているのだろう。
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イケるのにイカない
というか、せっかく屋根が開いているのに、質感が……とか剛性感が……なんてことばかり気にしてて、オマエは楽しいのか? と、クルマから諭されているような気さえしてくる。トップの開閉動作はちょっと荒っぽいし風の巻き込みも小さくないけれど、それだって同じこと。髪が乱れるのなんて気にするのはやめて、あふれるトルクの波に身を任せてしまえば、スコーンと突き抜けた気分になれるというものだ。
吹き荒ぶ風とも格闘するかのようなスパルタンオープンとはまさしく対極の、乗っているうちにせかせかする気が失せて、大らかな心持ちになれるオープンスポーツカー。それは歴代ずっと変わらないコルベット・コンバーチブルの持ち味である。いつでもイケるけれど、イカずに余裕で流すのが、何とも気持ちイイ。それでいて、いざ本気で行く時には、とことん応えてくれるポテンシャルもしっかり備えるところが、新型の一番の進化と言えるだろう。
(文=島下泰久/写真=高橋信宏/2005年6月)
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島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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