フィアット復活物語 第9章「世界の中心で500をさけぶ?〜新チンクエチェントのユニークな企画〜」(大矢アキオ)
2006.10.07 FIAT復活物語第9章:「世界の中心で500をさけぶ?〜新チンクエチェントのユニークな企画〜」
■フェラーリ株買収、シェア拡大、イケイケは続く
フィアットは、ここ1週間も良いニュース続きだった。
まず9月29日、従来イタリアの銀行「メディオバンカ」などが保有していたフェラーリ株を買い取った。買取額は8億9200万ユーロ(約1338億円)で、これによってフェラーリにおけるフィアットの出資比率は85%に達した。両社の関係は開発面でもより緊密になるのでは、と予想されている。
9月のイタリア国内市場では、フィアット・グループが31%のシェアを確保した。年初には30%を“悲願”としていたのに、それを楽々超えてしまったことになる。
今年上半期では、グランデプントが22.1%、パンダにいたっては38.1%もの占有率を各セグメントで獲得。トップの座を揺ぎないものにした。
お隣のフランスでも好調だ。前年同月比でルノーが22%、プジョー・シトロエンが10.3%のいずれもマイナスだったのを尻目に、フィアットはプラス12.5%を記録した。
■「500」の発音、世界から募集中
さて、新型フィアット・チンクエチェント(500)は、発売開始まであと1年となった。そのニュースがリリースされたのは正確には9月15日だから、予定どおりことが運べば来年の今頃は500の話題で盛り上がっていることだろう。
第2章でお伝えした新型500のオフィシャルサイト「500 wants you」は、カウントダウンを続けながら引き続きオープンしている。
そのサイトで現在展開されているものを紹介すると、まず「新500のイメージキャラクター・イラストコンテスト」がある。すでに作品応募は終わっているが、サイトの訪問者は誰でも投票できる。
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いっぽう「speak500」なる企画もある。「500」を各国語でどう言うか聴いてみよう、というコーナーである。
すでに国旗をクリックすると、22カ国語の発音が聴けるようになっている。英語なら「ファイブハンドレッド」、ドイツ語なら「フュンフフンダート」と生ボイスが流れる。
しかしボクは、応募コーナーもあるのに気付いた。よく見ると中国語はあるが、日本語はまだない。一番乗りかもしれない。そう思ったボクは応募ボタンをクリックした。
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■意外に面倒くさいゾ!応募手順
ところが実際の応募手順は、そう甘くなかった。まずはユーザー登録が必要とのこと。住所などのほかにも「現在お持ちのクルマ」「買い替え予定時期」まで入力する。そしてアクセス方法を記した返信メールを待たなければならない。
イタリアでは、この返信メールというのがクセもので、日本のようにすぐ来るとは限らないのだが、幸いこの500サイトは即座に応答してきた。
さっそくユーザーネームとパスワードを使って、応募ページにアクセスする。まずは音声の録音である。パソコンのマイクに向かって、「ごひゃく!」と声を発する。近所の犬の声や、我が家の預金残高を見た女房の「あーあー」という嘆き声が入ってしまったりでNGが続き、ようやくモノになったときには10回目を超えていた。
さらなる難関は、懐かしのテレビ番組『風雲たけし城』のごとく次々と待ち構えていた。応募する国名はウィンドーから選択するのではなく、自分でgiapponese(=日本語)とキーを打ってマニュアル入力しなければならない。
次に「オーディオファイルはMP3形式のみ送信可」との注意書きが。別形式で録ってしまっていたボクは、改めて「ごひゃく!」の録音を繰り返した。
そのうえ「五百」という漢字表記も送信しなければならない。それもキーボード入力ではダメ。jpgイメージファイルである。
とどめは国旗だ。これもウィンドーから簡単に選択するだけかと思ったボクが馬鹿だった。200kb以下のjpg形式でイメージファイルを送信しなければならない。つまり、自分で日の丸を探してスキャンしないといけないのである。
すべての作業を終えてアップロードを果たしたときには、ほぼ半日が経過していた。あまりの疲れから、「もしや既存の22カ国語は、すべて事前にサイト制作者が用意したものではないか?」という疑念さえもムラムラと沸いてきた。
底値時代に買ったフィアット株を今売却して儲けているアタマのいい人は、こんなサイトにつきあってないんだろうな。そう思うと泣けてきた。
ところが、アップから約半月経過した先日5日木曜日のことである。歯医者から帰ってきたら、「500 wants you」から1通のEメールが届いていた。
読んでたまげた。「キミの声が公開されたヨ!」というお知らせではないか。
慌ててサイトを開いてみると、確かにボクの声で「ごひゃく!」ボイスが聞けるようになっていた。他国語のバリエーションも増えていた。
よくパニック映画で救助隊が来る直前に自暴自棄になり、挙句の果てに死んでしまう登場人物がいる。『webCG』に恨みつらみを書きたてようとしたボクは、まさにそれであったことを恥じた。
フィアット、ウソつかない。
なおこの発音サイト、各国における方言も歓迎とのこと。事実、イタリア語でも「モデナ方言」なんていうバージョンがある。
我こそはという方は、関西弁や京ことば、もしくは博多弁の「ごひゃく」をアップロードしてみてはいかが?
「speak500」:
http://www.fiat500.com/eng/index.asp?intro_nick=
(文=大矢アキオ-Akio Lorenzo OYA/写真=FIAT/2006年10月)

大矢 アキオ
Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、24年間にわたってリポーターを務めている。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。
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