キャデラックSTS 4.6(5AT)/STS 3.6(5AT)【試乗記】
優れたハードとアメリカ風味 2004.11.30 試乗記 キャデラックSTS 4.6 (5AT)/STS 3.6(5AT) ……825.0万円/695.0万円 “アート&サイエンス”デザイン、FRプラットフォームなど、新世代キャデラックの技術を投入してつくられたミドルサルーン「STS」。4.6リッターと3.6リッターモデルに、自動車ジャーナリストの笹目二朗が乗った。新世代FRサルーン第2弾
「キャデラックSTS」は、従来名「セヴィル」の後継車である。30年以上に渡って築き上げてきたFFの駆動方式を捨てて、FR化に方針転換を行いつつあるキャデラックにとって、「CTS」に次ぐサルーン第2弾がSTSだ。「シグマアーキテクチュア」と呼ばれるFRプラットフォームなど、基本的な構成はCTSで確立されているから、STSはサイズアップに伴うモディファイを施して完成させている。
FFからFRへの転向は、いわばBMW、メルセデスベンツコンプレックスの裏返しであろう。FRは世界的にみても技術的に新しい内容は薄い。ただし、多様な車種に合わせたFFより単純化された結果、個々のコンポーネントは重量増加を招いたものの、信頼性はかえって高まっているかもしれない。
4WDシステムと新型エンジン
とはいえ、FRに回帰してしまったことにより、オールシーズンタイヤとFRの組合せでは、北方地帯での冬季の走破能力に不安が生じる。4WD仕様をキャデラックとして初めて登場させたのは、むしろ当然の処置である。4.6リッターモデルのみに設定されるそれは高級車の4WDゆえ、ポンプ式など簡便なシステムではなく、プラネタリーギアのセンターデフを介して、前:後=40:60で駆動する、固定トルク配分型のフルタイム4WDが備わる。
STSはもちろんこれが本命であるが、エンジンを縦置きにして派生的に作りだされた2輪駆動車は、新開発の3.6リッターV6エンジン仕様もあるなど、廉価版のマーケットを吸収する。今回のハイライトはこの新設計のV6ユニットである。V6エンジンは、GM内ではオペル用の54度3.2リッターV6というユニークな傑作があったものの、保守的なユーザーにとっては、やはりキャデラック・オリジナルのV6を欲したようだ。これは正統派の60度V6で、排気量も3.6リッターと若干大きい。ちなみに弟分のCTSも、新しいV6の2.8リッターと3.6リッターが、2005年モデルから搭載されることになる。なおSTSの2輪駆動車は、3.6リッターV6と4.6リッターV8の2本立てだ。
第一級のハンドリング
すでに技術が確立されている(限界も見えている)FR方式ゆえ、特別な新味はないが、チューニングは第一級である。これまでのセヴィルに比べると重く、軽快感はやや削がれたものの、がっしりしたボディ剛性と共にどっしり落ちついた重厚な走りは、やはりキャデラックの名を辱めない。重さを感じるとはいえ、エンジンパワーも増強されていることから、V8モデルの動力性能はなかなか侮りがたいものがある。V6も不足なく活発に走るが、むしろノーズの軽さ(エンジンはほとんど、フロントアクスルからオーバーハングしていない)ゆえに、操縦安定性としての優位点が印象に残った。
FF経験済みのメーカーらしく、直進性や安定性はそのレベルを維持する努力がなされたようで、たんなる昔への回帰ではなく、FRとして第一級のハンドリングが約束されている。詳細に述べるスペースはないが、たとえばフロントよりもリアトレッドが広い意味を理解できる人ならば、想像がつくだろう。
キャデラックにとってハード面よりも重要なのは、内装など快適性や仕上げの品質感だ。ウッドと革の内装は英国車の専売特許ではなく、アメリカ車にはアメリカ流のセンスがある。正目のスッキリしたユーカリのウッドパネルや明るい色調の革装など、アメリカ車特有のおおらかな感覚で、別格のリッチな雰囲気を醸している。
(文=笹目二朗/写真=峰昌宏/2004年11月)

笹目 二朗
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