キャデラック STS 3.6(5AT)【ブリーフテスト】
キャデラック STS 3.6(5AT) 2005.08.27 試乗記 ……703万円 総合評価……★★★ 新世代キャデラックのミドルクラスが「STS」。FFからFRレイアウトへと大きく方向転換し、“攻め”のデザインを与えられたサルーンのベーシックグレード「STS 3.6」に乗った。
|
ドイツ車じゃ“足りない”ヒトに
キャデラックが長年続けてきたFFの駆動方式を止めて、FRプラットフォーム“シグマアーキテクチャー”を開発したのはご存じのとおり。そして、このシグマアーキテクチャーのうえに成り立っているセダンが「STS」である。
STSより一足先にシグマアーキテクチャーを採用したCTSもそうだが、この方針の転換がキャデラックをより魅力的なクルマに変えたのは事実だ。FRが高級車の絶対条件だとは思わないが、これまで以上に運転が楽しいクルマになったおかげで、ドライバーズカーを選ぶ際にSTSの名前が挙がる機会も増えるだろう。
乗り味がドイツ車に近づいているのは確かだが、その一方で、押しの強さや圧倒的な存在感という点はキャデラックならでは。エッジの効いた面の構成と一目でそれとわかる堂々たるフロントマスクには主張がある。「ドイツ車では主張が足りない」という人はぜひご一考を。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「STS」は従来の「セビル」を後継するミドルクラスセダンで、日本では2004年11月に発売された。「シグマアーキテクチャー」と名付けたFRプラットフォームを、CTSから流用し、STS化するにあたりサイズアップなどの手を加えた。ボディサイズは全長×全幅×全高=4995×1845×1455mmと、セビルより大きい。
エンジンは、「ノーススター」の3.6リッターV型6気筒DOHC 24バルブ(257ps)と、4.6リッターV型8気筒DOHC 32バルブ(324ps)の2種類で、トランスミッションは5ATのみ。駆動形式がFFからFRへと大きく方向転換したことに加え、4.6リッターモデルにフルタイム4WDがラインナップされたことも新しい。
(グレード概要)
3.6、4.6リッターモデルとも、装備内容はほとんど変わらない。大きな違いは、磁力をつかったアクティブサスペンション「マグネティックライドコントロール」の有無で、3.6リッターは一般的なダンパーとなる。足まわりでは、タイヤが3.6は17インチ、4.6リッターは18インチを履く。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
「プラチナシルバー」のボディカラーに組み合わされるのは「エボニー」というブラックの内装。センターパネルやコンソールなどにはユーカリのウッドパネルが配されるが、その美しい色やすっきりとした模様が、STSのキャビンを贅沢で心地よい空間に仕立て上げている。ダッシュボードのブラスチック類も高い質感を誇っていた。
メーターパネルは、大型のアナログメーターをシンプルにレイアウトしたデザイン。この3.6リッターモデルにはヘッドアップディスプレイが装着されないが、なくて困るものでもないだろう。
(前席)……★★★
標準のレザーシートは、乗員の身体を支える部分にパンチングレザーを用いている。クッションは多少沈み込むが、バックレストはやや硬めの座り心地。スライド、リクライニング、リフトはもちろん、ランバーサポートやステアリングのチルト/テレスコピックも電動式となる。
シートポジションなどの設定はリモコンキーにメモリーすることができる。カスタマイズはセンターコンソールのオーディオのスイッチに紛れている「CONFIG」ボタンを押し、そのあとは画面の指示に従えばいいが、その設定内容があまりにも多岐にわたるため、まずは取扱説明書を一読したほうがいいだろう。
(後席)……★★★
後席に身を委ねると、肩まですっぽり隠してくれるシートバックのおかげで安心感は高く、居心地のいい空間が提供されている。全長4995mm、ホイールベース2955mmというゆったりしたボディのわりにレッグルームは控えめ。もちろん窮屈というほどではないが、いまどきのFFコンパクトカーのほうが余裕はある。フロントシートの背もたれが大きめで、多少視界の邪魔になるのも気になるところだ。
(荷室)……★★★
後席とともに、サイズのわりに小さいのがラゲッジスペースだ。奥行きは110cm弱と、ひとクラス下のFFセダン並みで、後席を倒してラゲッジスペースを広げることも不可能(トランクスルー機構あり)。ハイデッキデザインにしては高さも並みのレベルだ。最低限の容量は確保されていると思うが、FRレイアウトの弱点が見え隠れしている。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
STSにはV6とV8の2種類のエンジンが用意され、このV6は最高出力257ps、最大トルク34.8kgmのスペックを誇る。3564ccと、V6としては排気量が大きいので、低回転のねばり強さは頼もしい。1000rpmを超えたあたりからすでにエンジンの力強さが感じられ、街なかなら2000rpmまで回す必要がないほど余裕もある。
一方、その気になってアクセルペダルを踏んでやれば、3000rpmを過ぎた頃から盛り上がりを見せるが、それとともにエンジンからのノイズが目立ってくる。
はやりこのクルマは回転を抑えて、ゆったり静かに乗るほうが似合うようだ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
そういいながら、ひとたびワインディングロードに足を踏み入れると、やや硬めに躾けられた足まわりと、ボディサイズを感じさせない軽快な身のこなしのおかげで、コーナーが待ち遠しくなる。
高速巡航時のフラット感はまずまずで、直進性もFFに引けを取らないレベルに仕上がっている。
気になったのは、首都高速の目地段差を通過するよう場合に、ショックを遮断しきれない点。そのあたりがさらに洗練されると文句ないのだが。
(写真=高橋信宏)
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2005年8月17日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2005年型
テスト車の走行距離:12560km
タイヤ:(前)235/50R17(いずれも、ミシュラン HX MXM4)
オプション装備:ラグジュアリーパッケージ(タスカニーレザシート/リアシートヒーター/電動サンルーフ/17インチブライトフィニッシュアルミホイール)=45万円
走行状態:市街地(1):高速道路(6):山岳路(3)
テスト距離:301.7km
使用燃料:50.2リッター
参考燃費:6.6km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
メルセデス・マイバッハSL680モノグラムシリーズ(4WD/9AT)【試乗記】 2026.3.4 メルセデス・マイバッハから「SL680モノグラムシリーズ」が登場。ただでさえ目立つワイド&ローなボディーに、マイバッハならではのあしらいをたっぷりと加えたオープントップモデルだ。身も心もとろける「マイバッハ」モードの乗り味をリポートする。
-
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】 2026.3.3 「GRヤリス」の新仕様として設定された「エアロパフォーマンスパッケージ」装着車に試乗。レースフィールドでの知見を交え開発したというエアロパーツの空力・冷却性能は、リアルワールドでも体感可能なのか。高速道路を経由し、郊外のワインディングロードを目指した。
-
ドゥカティ・モンスター(6MT)【海外試乗記】 2026.3.2 ドゥカティのネイキッドスポーツ「モンスター」が5代目にモデルチェンジ。無駄をそぎ、必要なものを突き詰めてきた歴代モデルの哲学は、この新型にも受け継がれているのか? 「パニガーレV2」ゆずりのエンジンで175kgの車体を走らせる、ピュアな一台の魅力に触れた。
-
フォルクスワーゲンID.4プロ(RWD)【試乗記】 2026.2.28 フォルクスワーゲンのミッドサイズ電気自動車(BEV)「ID.4」の一部仕様変更モデルが上陸。初期導入モデルのオーナーでもあるリポーターは、その改良メニューをマイナーチェンジに匹敵するほどの内容と評価する。果たしてアップデートされた走りやいかに。
-
スズキ・キャリイKX(4WD/5MT)【試乗記】 2026.2.27 今日も日本の津々浦々で活躍する軽トラック「スズキ・キャリイ」。私たちにとって、最も身近な“働くクルマ”は、実際にはどれほどの実力を秘めているのか? タフが身上の5段MT+4WD仕様を借り出し、そのパフォーマンスを解き放ってみた。
-
NEW
BYDシーライオン6(FF)
2026.3.6JAIA輸入車試乗会2026“中国の新興ブランド”BYDにあこがれは抱かずとも、高コスパの評判が気になる人は多いだろう。では、日本に初導入されたプラグインハイブリッド車のデキは? 初めて触れたwebCGスタッフがリポートする。 -
NEW
実に3年半ぶりのカムバック 「ホンダCR-V」はなぜ日本で復活を果たしたのか?
2026.3.6デイリーコラム5代目の販売終了から3年半のブランクを経て、日本での販売が開始された6代目「ホンダCR-V」。世界的なホンダの基幹車種は、なぜこのタイミングで日本復活を果たしたのか? CR-Vを再販に至らしめたユーザーの声と、複雑なメーカーの事情をリポートする。 -
NEW
「ジープ・アベンジャー4xeハイブリッド」発表会の会場から
2026.3.5画像・写真ジープブランドのコンパクトSUV「アベンジャー」に、4WDのハイブリッドバージョン「アベンジャー4xeハイブリッド」が追加された。その発表会(2026年3月5日開催)の場に展示された同モデルの外装・内装を写真で紹介する。 -
NEW
スバル・トレイルシーカーET-HS プロトタイプ(4WD)【試乗記】
2026.3.5試乗記スバルから本格的な電気自動車の第2弾となる「トレイルシーカー」が登場。前後のモーターから繰り出すシステム最高出力はドーンと380PS。ただし、それをひけらかすような設定にはしていないのがスバルらしいところだ。スノードライブの印象をお届けする。 -
NEW
ホンダ・インサイト
2026.3.5画像・写真4代目はまさかの電気自動車(BEV)! ハイブリッドからBEVへ、4ドアセダンからSUVへと変身して、「ホンダ・インサイト」が復活を遂げた。ドアトリム/ダッシュボードヒーターにアロマディフューザーと、新たな快適装備を満載したその姿を、写真で紹介する。 -
BYDシーライオン7 AWD(4WD)
2026.3.5JAIA輸入車試乗会2026堂々たるスタイルにライバルの上をいくパワーと一充電走行距離、そしてざっくり2割はお得なプライスを武器とする電気自動車「BYDシーライオン7」。日本市場への上陸から1年がたち、少しずつ存在感が増してきた電動クーペSUVの走りやいかに。






