日産モコG(FF/4AT)【試乗記】
OEMの光と影 2006.03.31 試乗記 日産モコG(FF/4AT) ……124万7400円 「スズキMRワゴン」がフルモデルチェンジされたのにともない、日産にOEM供給される「モコ」も新しくなった。先代同様、顔つきで日産らしさを表現しようとしているモデルである。コンランか、混乱か
まず、「MRワゴン」に乗ってみた。OEM供給をしている本家から乗るのが礼儀だ。無垢な笑いを浮かべるノンシャランな顔つきを眺めて乗り込むと、なんだか居心地が悪い。肩すかしというか、猫だましというか、もう一段あると思って足を踏み出したら階段はもう終わっていてたたらを踏んだ、というような感じ。間違えて「モコ」に乗ってしまったか、と不安になるが、ステアリングホイールの中心には確かにSのエンブレムがある。
そもそも、そのエンブレム以外は、インテリアだって同じである。それをわかりながら違和感を持ってしまったのは、室内空間が喚起する気分がいかにも日産の文法に則ったものだったからだ。シンプルさを生かして明るく清潔なイメージを作り出したインパネまわりは、都会的なモダンデザインだ。ツートーンの色使いは抑えられた構成だし、シートも無駄のない形状でリビング指向が見てとれる。ミニマリズムをインテリア全体に行き渡らせることで、安っぽさを排している。
別にスズキのデザインがダサイと言っているわけではなく、「スイフト」なんて内外装ともにいい感じだ。だけど、MRワゴンは外観が以前のスズキ然としているのに、中を見ると日産ぽいから混乱するのである。いや、日産の中でも、「キューブ」の特別仕様車にあったコンランとのコラボモデルに似ているかもしれない。まさか内装は日産が担当しました、なんてことではないだろうけど、初めからOEM供給が決まっていたことでスズキのデザイナー陣がモダンリビングを意識してしまったのだろうか。
ヘッドランプを変えて日産顔
2台別々に見るとどこが違うのかよくわからないが、並べてみると顔つきはずいぶん違う。先代でもフロントマスクははっきりと日産顔に仕立てていたけれど、ヘッドランプは共通のものを使っていた。今回は、丸くて平和なMRワゴンの目つきに対し、モコは鋭角な目頭で狷介さも隠さない。最低限のコストで日産デザインをアピールする技は、やはり経験を経て巧妙になったようだ。そのかわり、リアはMRワゴンを踏襲している。
MRワゴンがママワゴンになったから、モコだってママモコになった。シートアンダーボックスは便利だし、背高だから室内空間は広い。前席ウォークスルーだし、収納も多彩だ。シート地はアルファベットのモノグラム柄になっていて、ちょっと前のフランス車風だ。MRワゴンのクールさに比べ、カジュアルさが前面に立つ。
今回乗ったのはターボ版だっただけに、動力性能には特に不満はない。エンジン音は時に煩わしいほど高まるが、優しいママの運転なら急な加速もしないだろうから問題はないだろう。気になったのは、どうにも落ち着きのない上屋の動きだ。いくら上背があるからと言って、ボディ全体が揺れ動くようなのは感心しない。
長時間の高速走行は苦痛
さらに具合が悪かったのは、高速道路での振る舞いである。常にステアリングホイールで微妙に修正していないと、直進することができない。始めMRワゴンに乗ってそれを感じ、個体差の可能性も考えたのだが、モコでもまったく同じ挙動なのだった。この種のクルマで高速道路を長時間走行することは少ないのだとは思う。しかし、「買い物、送り迎え専用」と謳うのでないかぎり、あらゆる場面を想定するのは当然だろう。残念ながら、この2台では1時間以上高速走行を続けるのは苦痛だと思う。
そんなわけで、町乗りの実用車としてはそれなりの水準に達しているものの、いくつか意に満たないところも目についた。日産はOEM供給を受けることで安価に商品ラインナップを充実させることができ、それなりの利益も得ているのだと思う。ただ、その商品にネガな部分があればその評価も引き受けることになるわけだ。もちろんそれは承知の上なんだと思う。
(文=NAVI鈴木真人/写真=峰昌宏/2006年3月)

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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