アウディA4アバント【試乗記】
ライフスタイルワゴン 2002.03.02 試乗記 アウディA4アバント ……379.0万円〜552.0万円 沖縄県は名護市、2000年サミットが開催された場所で、アウディいうところのスポーツプレミアムワゴン「A4アバント」のプレス向け試乗会が開催された。自動車雑誌『NAVI』の山口編集部員と、元NAVI編集部員にして現コーディネーター、山田由喜恵が報告します。プレートがキラキラ光る
A4アバントのボディサイズは、旧型より全長で60mm、全幅30mm、全高は20mm、それぞれ拡大し、全長×全幅×全高=4555×1765×1455mm。ホイールベースは20mm(クワトロは40mm)延長されて2645mmとなり、リアシートのニースペースが43mm拡大したという。デザインは、「明確なプロポーションと控え前なウェッジシェイプ、彫刻のような美しさのホイールアーチ、一筆書きのような正確さで描かれるキャラクターライン」(プレス資料)と謳われる。インテリアはA4サルーンを踏襲する。
webCG アウディが「スポーツプレミアムワゴン」と銘打つ「A4アバント」、見た目の印象はいかがですか?
山田 私はA4セダンよりワゴンのほうがスポーティに見えて気に入ったの。シルバーのルーフレールが、特にスポーティな印象を与えるみたい。
山口 カッコイイですよね。ワゴンのスタイルはボディ後部の面積が大きい分、車体側面がノッペリと表情が無くて、退屈なデザインになりがちだと思うけど、アバントはウエストラインで上下が分かれていてメリハリがある。後ろから見ると、ウエストラインの下はドッシリと安定感があって、上はスッキリまとまってて、カッコイイ。
webCG インテリアの印象はいかがでしたか?
山口 アバントのキャラクターに合わせて、シフトゲート周りのシルバープレートなどがスポーティを演出してる。
山田 沖縄の強い日差しを受けて、プレートがキラキラ光るのよ。でも下品じゃなくて、品質の高さを感じさせるつくり。夜に乗ったら、メーターやセンターコンソールに、アウディらしくオレンジ色のバックライトが淡く光るんでしょうね。
グレードが変わると「違うクルマ」
A4アバントのエンジンは3種類。「2リッター直4」(130ps、19.9kgm)「1.8リッター直4ターボ」(170ps、22.9kgm)「3リッターV6」(220ps、30.6kmg)が用意される。トランスミッションは、2リッターがCVT(無断変速機)、それ以外はシーケンシャルモードを持つ、5段ATが採用された。2リッターモデルはFF(前輪駆動)で、ベーシックの「アバント2.0」と、豪華装備の「アバント2.0SE」の2グレード。1.8リッターターボと3リッターV6モデルは、アウディが誇る4WD「クアトロ」の名が冠される。「アバント3.0クワトロスポート」と「アバント1.8Tクワトロ」は、車高が20mm低いスポーツサスペンションを装着する。
webCG 運転してみて、エンジンはいかがでしたか?
山口 直4よりV6のほうがスムーズでなめらかだから、当たり前だけど高級感はV6がグっと上。4気筒は回転のザラつき感と、パワーの不足から、ついアクセルを踏みこむので、回転が高まってウルサくなりがち。ステアリングホイールにバイブレーションが伝わってくるのもマイナス。こもり音もちょっと気になった。質感は3リッターの方がかなり高いよ。
山田 まあ、値段が全然違うからね。アバント2.0SEは416.0万円、3リッター6気筒搭載の「アバント3.0クワトロ」は537.0万円。121.0万円も差があるのよ。
山口 名前は同じでも違うクルマといってもいいかもしれない。3リッターは高級ワゴン、2リッターは実用性重視かな。海とか山とかでアクティブにつかっても惜しくないような。
山田 私は、1.8リッターのターボが気に入ってるのよ。低回転からトルクに溢れていて、とても使いやすいエンジンなの。
山口 チューニングがうまいですよね。ターボが常にサポートしてくれるような。「ここからターボが利いたな」っていう境目がない。
webCG 1.8ターボは1950rpm〜5000rpmにかけて、最大トルクの22.9kgmを発揮しますからね。トランスミッションはどうですか?
山口 2リッターモデルのCVTはとってもいい。エンジンの回転数とクルマの動きの間に、不自然なところがなくて、普通のATから乗り換えてもわからないくらい。
山田 1.8ターボとV6の5段ATも、いいタイミングでシフトしてくれるし。
山口 マニュアルモードで走ってみたけど、ドライバーの感覚とズレがなくシフトチェンジしてくれた。マニュアルシフトを駆使して乗りたくなりますね。
webCG スポーティをウリにするA4アバントの足回りは?
山口 全体的な印象を一言でいうと、硬い。引き締まってるといった方がいいかな。3リッターモデルは重量があるから、しっとりと落ち着いたした乗り心地だったけど。1.8リッターターボモデルは、オプションの235/45R17っていう太いタイヤを履いてたせいか突き上げ感がある。
山田 ドイツにはアウトバーンがあって移動速度が速いから、足まわりはどうしても硬めになるのよね。
「ワゴン」でなく「アバント」
ワゴンならではのラゲッジスペースはスクウェア&フラットで、フロアの下に樹脂製のトレイがある二重構造。旧型より幅が70mm拡大した。リアシートは1:2の左右分割可倒式で、ヘッドレストはそのままにシートバックを倒すことができる。
webCG パッケージングはどうですか? ワゴンだけに荷室の広さも気になるところですが。
山口 リアシートは決して広くなかったな。僕は身長180cmあるんだけど、フロントでシートポジションを合わせてリアに座ると、膝の角度が鋭角になる。ゆったり座れないんだ。でも180cmの大人4人が乗るケースなんて、滅多にないだろうから。それとBピラーが太くて、サイドシル近くでは幅が広がるから、足がつかえて乗り降りのときに気をつかう。
山田 大人4人がユッタリ快適に、っていうサイズではないのよね。荷室もスクウェア&フラットなんだけど、ゴルフバッグが真横じゃなくて、斜めにしないと入らない。
山口 アウディは自らのブランドを、若々しいとかスポーティなイメージで訴求してるから、ルマン24時間レースに出場したり、スポーツグレード「Sシリーズ」を設定したり。同じドイツ製ワゴンでも、実用一徹のフォルクスワーゲン「パサート」などとはキャラクターが違う。アウディも「ワゴン」と呼ばず「アバント」と呼ぶ、いわゆるライフスタイルワゴンだから、いいのかも。
山田 このクルマを買える人は、豊かな人ってことよね、名実ともに。生活全般がそれなりに高級で、休みの日気軽に沖縄へ出かけられるような。私は三浦海岸あたりかな……。
(写真=山田由喜恵/2002年2月)

webCG 編集部
1962年創刊の自動車専門誌『CAR GRAPHIC』のインターネットサイトとして、1998年6月にオープンした『webCG』。ニューモデル情報はもちろん、プロフェッショナルによる試乗記やクルマにまつわる読み物など、クルマ好きに向けて日々情報を発信中です。
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