第858回:レースの技術を市販車に! 日産が「オーラNISMO RSコンセプト」で見せた本気
2026.01.15 エディターから一言 拡大 |
日産自動車は「東京オートサロン2026」に「オーラNISMO RSコンセプト」を出展した。そのポジションは“検証車”だというが、具体的にはどういうものなのだろうか? 開発主幹に話を聞いた。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
“検証車”という役割
日産グループ内でモータースポーツ活動を担うNISMOは現在、市販車へのフィードバックを目的に電動のレースカーを開発中だ。しかし、レースカーと市販車の間に大きな差があることは自明の理。そうするとフィードバックに時間がかかってしまう。その間を埋めるのが、彼らのいう“検証車”であり、このオーラNISMO RSコンセプトの役割でもあるのだ。
そのうえで、NISMOのモータースポーツ用パワートレインの開発を担う片倉丈嗣さんは、「せっかく検証車をつくるのであれば、市販も匂わせたいですよね。そこでデザイン部にカッコいい絵を描いてくださいと依頼してできあがったのが、この展示車です」と話す。
搭載されているパワートレインは、シリーズハイブリッド「e-POWER」のなかでも、最も大きな「エクストレイルNISMO」用の1.5リッターVCターボエンジンをベースとしたものだ。コンセプトカーのもととなる「オーラNISMO」のユニットが1.2リッターであることを考えると、2クラス以上も上のものといっていい。「中途半端はよくないと、かなり強引に1.5リッターVCターボをそのまま搭載しました」と片倉さん。結果として「パワーウェイトレシオは、現状でできる範囲で最小に抑えることができました」という。
さらに、ここまでやるならドライブトレインも協調制御にしようと、オリジナルの「NISMO tuned e-POWER 4WD」からエクストレイル由来の「e-4ORCE」に変更。実は、レースレギュレーションでe-4ORCEが使えるカテゴリーはほとんどなかったのだが、スーパー耐久のST-Qクラスであればチャレンジできることが判明。「シャシー制御を取り入れると、プロドライバーでももっと速く走らせられる。エネルギーマネジメントやトルクマネジメントの開発にもこの場でチャレンジしていくことが、開発としての狙いです」とのことだ。片倉さんの感触としては「かなりいいクルマになるでしょう」とのことで、その期待値は高い。
いまの日産ができること
もうひとつ、大事なポイントがある。この検証車はレース専用設計ではないということだ。冒頭でも記したように、市販車への技術のフィードバックが本来の目的であり、将来的にはコンプリートカーとしての市販化も視野に入れているのだ。専用設計の箇所が増えれば、フィードバックは難しくなる。
それに加えて、このクルマには日産からのメッセージも込められていた。すなわち「日産がいま市場に出している技術の延長線で、こういうクルマがつくれるということをアピールしたい」というものだ。その背景について片倉さんは、「いまの日産は、現状の商品力だけでなく、モデルの更新タイミングなどもあって、市場の印象は必ずしもいいものだけではありません。そこは反省すべき点です。ただ、いま出ている技術を集合させれば魅力的なものを生み出せるということを見せられれば、もう少し期待してもらえるのではないか。われわれの側としても、それに応える開発のやり方につながる。いわば“起爆剤”になってほしいんです。ですから、まずはレースで頑張るしかないんです」と語り、自身にも気合を入れていた。
ここで素朴な疑問を片倉さんにぶつけてみた。なぜオーラNISMOをベースにしたのかだ。その答えは、「e-POWERの商品価値を上げたいから」だという。「e-POWERを搭載しているクルマのなかで、最も小さいスポーツモデルをベースに、そこに一番大きなエンジンを搭載するために、あえてオーラを選びました。この条件ではこれ以上小さいクルマはないですし、1.5リッターVCターボがギリギリ入ってくれたこともありました」というものだった。
展示された検証車には実際にパワートレインも搭載されており、走れる状態にあるという。しかし、まだ適合などは行われていないため、熟成はこれからだ。「このショーに出展していなければ、どこかのコースでテストしていたでしょう」というように、NISMOは本気でこのクルマをサーキットで走らせ、生産車に技術をフィードバックしようとしているのだ。その結果がいつになるのかは、いまの時点では不明だが、そう遠くないことを期待したい。
(文=内田俊一/写真=内田俊一、日産自動車、トヨタ自動車、webCG/編集=堀田剛資)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |

内田 俊一
-
第871回:今年もグリーンヘルは熱かった! ニュルブルクリンク24時間レース観戦記 2026.5.27 “世界一過酷な草レース”として知られ、今年も波乱が巻き起こったニュルブルクリンク24時間レース。F1王者のフェルスタッペンも参戦するとあって、大いに盛り上がったその様子を、世界を飛び回るモータースポーツカメラマンが臨場感満点でリポートする。
-
第870回:熱きホンダをとことん楽しむ これが「Honda All Type R World Meeting 2026」だ! 2026.5.15 「シビック タイプR」をはじめ、“タイプR”の車名を持つホンダの高性能車ばかりが集う、激アツのイベントが開催された。気になるその内容は? 会場となったモビリティリゾートもてぎの様子を詳しくリポートする。
-
第869回:思わぬサプライズもいっぱい! クルマ好きのための祭典「シン・モーターファンフェスタ2026」で“最旬ニューモデル”に触れる 2026.4.24 日本最大級の“クルマ好きのための祭典”「シン・モーターファンフェスタ2026」に、発売を間近に控えるさまざまな注目モデルが終結! 会場の様子や、そこで得られた最新情報をお伝えしよう。
-
第868回:ウエット路面での実力は? ブリヂストンの新スタンダードタイヤ「フィネッサ」を試す 2026.4.22 2026年1月に発表されたブリヂストンの「FINESSA(フィネッサ)」は、次世代の商品設計基盤技術「ENLITEN(エンライトン)」を搭載する最新のスタンダードタイヤだ。ドライ路面での試走報告に続き、今回は自慢のウエット性能をクローズドコースで確かめた。
-
第867回:ハイエースオーナー必見! スマホで操作できる可変ダンパー「KYBアクトライド」を試す 2026.4.22 KYBからスマートフォンのアプリで操作できる可変ダンパーシステム「ActRide(アクトライド)」が登場。まずは「トヨタ・ハイエース/レジアスエース」用からの展開となるこのシステムの仕上がりを、実際に試乗して確かめた。
-
NEW
日産リーフB7 G(前編)
2026.5.31思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「日産リーフ」に試乗。初代のデビューから15年余りを経て生まれた3代目はスタイリングも中身も刷新。苦境にある日産を立て直す重責を担っている。箱根のワインディングロードでの印象を聞いた。 -
トヨタRAV4 GRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】
2026.5.30試乗記新型「トヨタRAV4」のプラグインハイブリッド車ではEV走行換算距離が約150kmにまで到達。もちろん電池容量の拡大によるところも大きいが、何よりも最新のハイブリッドシステムによる効率向上が効いている。「GRスポーツ」をドライブした印象をリポートする。 -
つまずきを糧に成功をつかみ取れ! 新型「CX-5」に宿るマツダの変革と覚悟
2026.5.29デイリーコラム既存のマツダ車とは一線を画す乗り味で、メディアをおどろかせた新型「マツダCX-5」。マツダの最量販車種は、なぜ3代目で大転換を迫られたのか? 賛否両論を巻き起こした“あのクルマ”との関係は? 新しくなったCX-5に宿る、マツダの覚悟と変革に迫る。 -
キャデラック・リリックV(4WD)【試乗記】
2026.5.29試乗記キャデラック初の電気自動車(BEV)「リリック」に、最高出力646PSのハイパフォーマンスモデル「リリックV」が登場。“ブランド史上最速”をうたう豪速SUVだが、実際に乗ってみると、高い動力性能がもたらすゆとりや心地よさにも魅力を感じる一台となっていた。 -
DS N°8エトワールAWD(4WD)【試乗記】
2026.5.28試乗記前衛を身上とするフランスのラグジュアリーブランド、DSオートモビルから、新たなハイエンドモデル「DS N°8(ナンバーエイト)」が登場。当代屈指の性能を誇る電気自動車であり、かの地では大統領専用車にも選ばれる一台の、独創の魅力に触れた。 -
「日産テラノ」がPHEVで復活 往年のビッグネームを継承するSUVの特徴を分析する
2026.5.28デイリーコラム日産自動車が「北京モーターショー2026」で、往年のビッグネームを継承する新型SUV「テラノPHEVコンセプト」を世界初公開した。初代「テラノ」で採用された「3スロット」を想起させる車両のデザインに加え、日産が新型テラノで狙うグローバル戦略に迫る。







































