アウディA4アバント40 TDIクワトロSライン(4WD/7AT)
最善の移動体 2021.04.28 試乗記 「アウディA4」シリーズについにディーゼルモデルが登場。アウトバーンでならしたその実力は、日本仕様でも健在か? ワゴンボディーやフルタイム4WDもセットになった、ファン泣かせな「A4アバント40 TDIクワトロ」で、その走りを確かめた。アウトバーン追い越し車線の最大勢力
「アウディのアバント」と言われて、よくいる昭和のクルマ好きである自分が思い浮かべるのは、1980年代に販売されていた3代目の「100」だ。当時最先端のエアロダイナミクスでもって、ボディーをファストバック調に仕立てられていたワゴンは、それとライトバンとの見境もなかった当時の日本では、その存在が宇宙過ぎて『CAR GRAPHIC』読者くらいしか理解ができなかったのかもしれない。
でも今にして思えば、「ホンダ・アコード エアロデッキ」や「スバル・レガシィ ツーリングワゴン」など、その後に続いたスタイリッシュな和製ワゴンたちに少なからぬ影響を与えたものだったように思う。ちなみにアバント(avant)とは、フランス語で「前に」という意味とのこと。アウディ自身も、ワゴンを相当特別で先鋭的な存在に育てようとしていたことが伝わってくる。
平成はじめに巻き起こったワゴンブームを若かりし頃に経験した昭和のオッさん的には、それゆえ「アウディのアバント」とささやかれればちょっと過剰に反応してしまうわけで、そこに「クワトロ」まで乗っかった日には、期待値がぼうぼうにたき盛るわけだ。
さらにこの個体は、A4としては国内初となるディーゼルユニットを搭載している。今やアウトバーンの追い越し車線の最大勢力は、メルセデス・ベンツでもBMWでもなくアウディだが、その内訳で間違いなく筆頭となるのがTDIのA4アバント クワトロだ。
恐らくは、“アクセル踏み切り”で吹っ飛んでいくその後ろ姿にうっとりしてしまうのも、もはや昭和のオッさんくらいのものだろう。でもアバントなら、「あのアウディがあのまんま、日本でも買える日がついにやってきた」という萌(も)え心も、理想的なファミリーカー選びという体裁にうまいこと隠しておくことができる。
メカニカルなフルタイム四駆にみるありがたみ
日本に導入されたA4のディーゼルモデルは、セダン/ワゴンともにFFが「35 TDI」、四駆が「40 TDI」となる。35 TDIは、アルミクランクケースや鍛造ピストンなどの採用によりエンジン本体重量を20kg余り軽量化し、12Vのマイルドハイブリッドシステムを組み合わせた2リッター4気筒の「EA288evo」を搭載。それに対して取材車の40 TDIクワトロは、その前の世代の2リッター4気筒である「EA288」を搭載している。そのぶんということか、両者の価格差は同グレード比で27万円と、低めに抑えられている。
最高出力190PS、最大トルク400N・mを発する40 TDIのユニットに組み合わせられるトランスミッションは7段の「Sトロニック」、つまり縦置きDCTとなり、クワトロシステムはセルフロッキングセンターデフを用いるメカニカルなフルタイム式を採用。通常時は40:60、グリップ状況に応じて数ミリ秒単位で70:30~15:85の間で前後の駆動を最適配分する。すでにクワトロシステムの主流は燃費性能にたけたオンデマンド式に移行しつつあり、このクラシックなフルタイム四駆は「S」や「RS」銘柄への搭載に限られつつある。普通のA4がこのメカニズムで買える機会も、限られたものになるのかもしれない。
現世代のB9系A4のデビューは2015年(日本導入は2016年2月)と、それなりに時間がたっていることもあってか、昨2020年に日本に導入されたマイナーチェンジモデルの改良は、アウターパネル類の刷新を伴う大がかりなものとなった。内装もインフォテインメント系を最新世代にアップデートするとともにモニターを大型化&タッチパネル化。さらにAIボイスコントロールシステムを採用するなど、機能の改善や整理統合が進んでいる。が、頻用する空調スイッチやハザードボタンなど、あるべきところに“ハードもの”が鎮座している一面もあって、「もはやクルマの操作ごときで戸惑いたくもない」という昭和のオッさんもとっつきやすい。
マニア以外も試してほしい
最近は、ガソリンエンジンも軒並みの直噴化で盛大なインジェクターノイズを響かせることもあって、ディーゼルエンジンの音・振動的なネガは目立たなくなりつつある。が、そんな今日びにおいてさえ、A4の始動音や振動は若干大きめに感じられる。もっとも、これは車種的特徴というよりも、フォルクスワーゲンの銘柄にも感じられるEA288の素性だと思う。
低回転域のトルクがあり余るほどリッチな感覚はないが、Sトロニックはリンケージが時にトルコンATを思わせるほど滑らかにしつけられていることもあって、わずらわしさを感じさせず、回転をうまくおいしいところに合わせてくれる。そうして速度が乗ってくれば、ロードノイズや風切り音がかぶさることもあり、ガラガラビリビリといったディーゼルっぽさはほとんど気にならない。高回転域はディーゼルの常で4500rpm付近で頭打ちとなるが、そこまで回さずとも速度は十二分に乗ってくれる。ともあれ中間域がひたすらおいしいエンジンだ。ちなみに0-100km/h加速は7.7秒で最高速は241km/h。この動力性能に不満を抱く方はいないだろう。
先だって乗ったA4セダンの「45 TFSIクワトロSライン」では、全域で絶妙な上質さとスポーティーさを感じさせてくれるライドフィールに心底驚かされた。それゆえ、同じサイズのタイヤを履くこの個体が、アバント+ディーゼル+スライディングルーフという3つの重量増要素をどこまで吸収してみせるか興味深かったが、若干の硬さ・粗さを感じる場面はあったものの、おおむねそれに準じたものにはなっていた。近ごろのアウディ、とりわけ「A4」「A6」「A8」という中軸モデルの乗り心地とハンドリングのバランス点は、ライバルと同等か、それ以上の域に位置しているというのは個人の感想だが、それを期待してこのグレードを検討しても、裏切られることはないと思う。
積載力、燃費、スタビリティー。A4アバントのディーゼルのクワトロを選ぶということは、これらクルマに期待される主要機能が高次元で担保されるということだ。なにがあっても最善の移動環境が手元にあるという安心感を、アウトバーン信仰が抜けない昭和のクルマ好きだけで独占してしまうのも、もったいない話である。
(文=渡辺敏史/写真=山本佳吾/編集=堀田剛資)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
アウディA4アバント40 TDIクワトロSライン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4770×1845×1435mm
ホイールベース:2825mm
車重:1730kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:190PS(140kW)/3800-4200rpm
最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/1750-3000rpm
タイヤ:(前)245/35ZR19 93Y/(後)245/35ZR19 93Y(ピレリPゼロ)
燃費:14.6km/リッター(WLTCモード)
価格:641万円/テスト車=774万円
オプション装備:ボディーカラー<タンゴレッドメタリック>(9万円)/ダンピングコントロールスポーツサスペンション(10万円)/シートヒーター<フロント+リア>+ステアリングヒーター(9万円)/パノラマサンルーフ(22万円)/ブラックスタイリングパッケージ<Audi exclusive/ルーフレール[ブラック]+エクステリアミラーハウジング[グロスブラック]>(10万円)/アルミホイール<Audi Sport/5Vスポークスターデザインマットチタンルックポリッシュト 8.5J×19インチ>+245/35ZR19タイヤ(19万円)/S line plusパッケージ<運転席メモリー機能+フロント4wayランバーサポート+アーティフィシャルレザー[ドアアームレスト+センターコンソール]>(10万円)/スマートワイヤレスチャージング+リアシートUSBチャージング(6万円)/Bang & Olufsen 3Dアドバンストサウンドシステム(17万円)/マトリクスLEDヘッドライトパッケージ<マトリクスLEDヘッドライト[フロントダイナミックインジケーター]+ヘッドライトウオッシャー>(11万円)/プライバシーガラス+アコースティックガラス<フロントサイド>(10万円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:1503km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(6)/山岳路(0)
テスト距離:198.0km
使用燃料:15.3リッター(軽油)
参考燃費:12.9km/リッター(満タン法)/13.6km/リッター(車載燃費計計測値)

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
-
プジョー308 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】 2026.7.14 マイナーチェンジで内外装がブラッシュアップされた「プジョー308 GTハイブリッド」に試乗。大胆なデザインのフロントフェイスに目を奪われるが、ステランティス自慢の1.2リッター直3マイルドハイブリッドを搭載する最新モデルの仕上がりと走りやいかに。
-
日産キックスG(FF)/キックスX e-4ORCE(4WD)【試乗記】 2026.7.13 日産のコンパクトSUV「キックス」が、いよいよフルモデルチェンジ! デザインもパワートレインもプラットフォームも刷新された新型は、見ても乗っても長足の進化が感じられる力作となっていた。日産の再生を担う重要モデルの仕上がりを報告する。
-
BYDシーライオン6 AWD(4WD)【試乗記】 2026.7.11 BYDのプラグインハイブリッド車「シーライオン6」の4WDモデルが登場。先に登場したFFモデルにリアモーターを追加したという説明は間違いではないが、実はエンジンが違うばかりか、加速力にも別物といえるくらいの差がつけられている。300km余りをドライブした印象をリポートする。
-
スズキ・エブリイワゴンPZターボスペシャル ハイルーフ(MR/CVT)【試乗記】 2026.7.8 フロントマスクが変わったのはすぐにお気づきのことと思うが、実は最新の「スズキ・エブリイワゴン」は中身のレベルアップが著しい。内装デザインが刷新されたほか、アダプティブクルーズコントロールなどの軽バンらしからぬ装備も標準化されている。ワゴンの最上級グレードを試す。
-
ポルシェ911 GT3 S/C(RR/6MT)【海外試乗記】 2026.7.7 スポーツカーの水準器「ポルシェ911」に、新たなバリエーションの「GT3 S/C」が登場。サーキット直系の走りとオープンエアの爽快感は、私たちにどんな体験をもたらしてくれるのか? ポルシェのおひざ元である、ドイツのワインディングロードで確かめた。
-
NEW
第970回:クルマの背中に浮かぶ文字たち――空いた字間が語るもの
2026.7.16マッキナ あらモーダ!アナタは自動車のボディー背面に施されたメーカー/ブランドのロゴについて考えたことがあるだろうか? 字間を詰めたり、広げたり、時代によって変わるそのトレンドと、その背景にあるメーカーの思惑を、自動車史にも精通する大矢アキオが語る。 -
NEW
九州・熊本で開催 「Lamborghini Summer Days 2026」で極上なる猛牛の世界観を知る
2026.7.16デイリーコラムランボルギーニが1泊2日の無料招待制イベント「Lamborghini Summer Days 2026」を、九州・熊本で開催。上天草の自然とともに最新モデルの走りと独自の世界観を味わう特別なツアーの詳細を報告する。 -
NEW
フェラーリ849テスタロッサ スパイダー(4WD/8AT)【海外試乗記】
2026.7.15試乗記歴史ある車名が与えられた「フェラーリ849テスタロッサ」は、従来型から大幅な進化をとげた高性能スポーツカーだ。では、そのオープントップバージョンの走りはどうか? 日本での発売を前に、フェラーリ通として知られる西川 淳が試乗した。 -
ポルシェ・カイエン ターボ エレクトリック(4WD)【試乗記】
2026.7.15試乗記ポルシェ最新の電動ハイパフォーマンスSUV「カイエン エレクトリック」。そのラインナップのなかでも、最高峰に位置するのが「カイエン ターボ エレクトリック」だ。最高出力1156PS、最大トルク1500N・mという、とてつもないパフォーマンスの一端に触れた。 -
第120回:幽玄なるBMWアルピナ(前編) ―日本でも愛された「控えめの美学」にこの先の未来はあるか?―
2026.7.15カーデザイン曼荼羅日本でも、ファンの間で熱く支持されてきたBMWアルピナ。創業家の手を離れ、BMWの傘下となったこのブランドだが、その伝統である「控えめの美学」は今後も受け継がれるのか? ショーカー「ビジョンBMWアルピナ」の造形から、カーデザインの識者と考えた。 -
MVアグスタ・ドラッグスターRR SCS(6MT)
2026.7.15JAIA輸入二輪車試乗会2026宝石とも形容される伊MVアグスタのバイクのなかでも、アグレッシブなデザインと前のめりな走りで異彩を放つ「ドラッグスター」。自動クラッチシステム「SCS」が搭載されたモデルに試乗し、刺激的でありながら懐の深さも合わせ持つ走りに触れた。















































