ルノー・ルーテシア1.6【試乗記】
敷居が低く、懐が深い 2006.02.09 試乗記 ルノー・ルーテシア1.6 欧州では2006年カー・オブ・ザ・イヤーを獲得した、ルノーのコンパクトカー「ルーテシア」。はたして日本では人気を獲得できる実力があるのか? 発表前のモデルに先行試乗した。
拡大
|
拡大
|
小回りの利く、大きいボディ
新型「ルノー・ルーテシア」の日本上陸は、やや変則的なスケジュールだった。正式発表は2006年3月1日で、価格もそのとき発表される予定。ところがそれに先がけて1月下旬にプレゼンテーションを行い、2月初めにかけてメディア向けの試乗会が行われたのだ。
しかも都内で開催されたプレゼンテーションは、フランスからはるばるやってきたプロダクトマネージャーが行った。「カングー」「メガーヌ」に続いて、ルーテシアを日本における3番目の柱にしたい。そんなルノー・ジャポンの意気込みが伝わってきた。
ルーテシアとしては3代目となる新型、今回輸入されるのはエンジンは1.6リッターのみだが、トランスミッションは4段ATのほかに5段MTも用意される。しかも3ドア、5ドアの両ボディでMTが選べる。一方のATには、「eLe(エル)」という名称の上級グレードが設定される。このなかから、5ドア標準仕様のATとMTに乗ることができた。
ボディはやはり大きくなった。全長は4メートルに限りなく近づき、全幅は日本の5ナンバー枠をわずかではあるがオーバーした。といっても、依然として持てあまさないサイズである。しかも最小回転半径は逆に小さくなっている。プラットフォームを日産と共同開発した成果かもしれない。実際、走り始めてまず印象的だったのは、このクラスの輸入車としては例外的な小回り性能だった。
MTが似合う
サイズアップの恩恵は、室内空間に現れている。旧型は、身長170cmの自分が前後に座ると、リアは頭がルーフに触れ、ひざの前の空間もわずかだった。しかし新型は、さすがクラス最長のホイールベースの持ち主。ひざの前には10cmぐらいのスペースが残り、頭上も余裕がある。横方向を除けばワンサイズ上の「メガーヌ」とあまり変わらない。
シートの座り心地もメガーヌに似ている。サイズはこのクラスとしてはたっぷりしているが、ルノーとしては硬め。ただ、一晩で300kmぐらい走り回ったら、降りる頃には少しだけカラダになじんでいるのがわかった。
クオリティアップがはっきり実感できるキャビンには、フランス生まれらしいセンスがちりばめてある。たとえばドアポケットやセンターコンソールは微妙なカーブを描き、エアコンのルーバー周辺も単純な円形や長方形にしていない。エクステリアも、ボンネットからピラーにかけてのラインや、ルーフエンドのスポイラーなど、細部まで手を抜いていない。こうしたこだわりが、毎日の生活に彩りを添えてくれるはず。
エンジンとトランスミッションは、すでにメガーヌに搭載されているものと同じ。車重はそれより100kgほど軽いから、加速はATでも不満ない。とくに2000〜3000rpmあたりのトルクに余裕があるので、アクセルに余裕を残し、回転をそれほど上げずに走れる。エンジン音やロードノイズも気にならないレベルに抑えられている。
でもこのクルマに似合っているのは、やはりMTだと思った。スッスッと軽いタッチで確実に入るシフトレバーを操り、メカニカルギアボックスならではのダイレクトな感触を得ながら、アクセルペダルを踏んで加減速していると、クルマのほうが喜んでいるようにも思えてくるからだ。
噛めば噛むほど味が出る
低速では軽くスコッと切れるのに、それなりの重さで戻されるステアリングフィールは、ちょっとチグハグに感じる。ところが50〜60km/hぐらいになると操舵力に重みが加わって、釣り合いがとれてくる。低速では硬いと感じた乗り心地も、やはりこの速度域で、しっとりしたストローク感がメインになる。焦点が合うという表現がピッタリだ。そしてここから、ルノーらしい盤石の直進安定性とフラット感が主役の、快感クルージングに突入する。
ハンドリングは、旧型やメガーヌとはひと味違う。ノーズの動きに遅れがなく、キビキビ動く。その後もフロントがふくらむ気配はなく、切ったとおりにコーナーを抜けていく。ステアリングを切る量がいつもより少ないと感じるほど。といっても、プジョーのような鋭さはない。ルノーらしい自然さをキープしたうえで、軽快になった。抜群の接地感を武器に、荒れた路面でも平然と駆け抜けていく、懐の深さもそのままだ。
新型ルーテシアを最初に写真で見たとき、デザインに「プジョー206」の影響を感じた。プレゼンテーションでプロダクトマネージャーに聞いたら、それを否定しなかった。そして試乗してみると、その影響は走りにも現れていたのだ。
でもこれは、わかりやすいクルマになったという意味で、いいことではないか。根幹の部分はルノーそのものなわけだし。噛めば噛むほど味が出る、あの奥の深さはそのままに、少しだけ敷居が低くなった。そんな感じなのだ。
(文=森口将之/写真=河野敦樹/2006年2月)

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
-
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】 2026.1.17 BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。
-
マツダCX-60 XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.1.14 「マツダCX-60」に新グレードの「XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ」が登場。スポーティーさと力強さ、上質さを追求したというその中身を精査するとともに、国内デビューから3年を経た“ラージ商品群第1弾”の成熟度をチェックした。
-
カワサキKLX230シェルパS(6MT)【レビュー】 2026.1.13 その出来には“セロー乗り”も太鼓判!? カワサキのトレイルバイク「KLX230シェルパ」に、ローダウン仕様の「シェルパS」が登場。安心の足つき性で間口を広げた一台だが、実際に走らせてみると、ストリートでも楽しめるオールラウンダーに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツC220dラグジュアリー(FR/9AT)【試乗記】 2026.1.12 輸入車における定番の人気モデル「メルセデス・ベンツCクラス」。モデルライフ中にも年次改良で進化し続けるこのクルマの、現在の実力はいかほどか? ディーゼルエンジンと充実装備が魅力のグレード「C220dラグジュアリー」で確かめた。
-
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(FF/CVT)【試乗記】 2026.1.10 日産の軽スーパーハイトワゴン「ルークス」がフルモデルチェンジ。「見えない危険が……」のテレビCMでお茶の間をにぎわせているが、走る、曲がる、止まるをはじめとしたクルマ全体としての仕上がりはどうか。最上級グレードをテストした。
-
NEW
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
NEW
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
NEW
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。 -
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】
2026.1.17試乗記BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。 -
新生ノートンがいよいよ始動! 名門の復活を担う次世代モーターサイクルの姿に迫る
2026.1.16デイリーコラム英国のモーターサイクル史にあまたの逸話を残してきた名門、ノートンが、いよいよ再始動! その数奇な歴史を振り返るとともに、ミラノで発表された4台の次世代モデルを通して、彼らが思い描く未来像に迫った。




































