アウディRS 4(4WD/6MT)【試乗記】
緻密に作られた、最上位の量産車 2006.09.28 試乗記 アウディRS 4(4WD/6MT) ……990.0万円 「エブリデイスポーツカー」を標榜する「アウディRS 4」。現在国内では数少ないMTのアウディ車で、今モデルではワゴンだけでなくセダンボディも加わった。その運動性能だけでなく、新しい直噴V8ユニットにも注目だ。990万円はお買い得
「アウディRS 4」はミディアムセダンである「A4」のコンパクトなボディに、4.2リッターV8(420ps)エンジンを詰め込んだ高性能車で、言わずとしれたクワトロ(4WD)である。外観の化粧はこの種のチューニングカーにしては控えめであるが、それでも見つめるほどにタダモノではない雰囲気がひしひしと伝わってくる。
しかし走り出せばもう洗練の極みで、スムーズな走行感覚からは、その先に待ち受ける過激さを予測できない。「オ、これポルシェ911より魅力的だなー」と思わず呟いた。990万円という価格を聞いてはお買い得感さえある。
装備の目玉はステアリングの左側のスポーク付け根に設けられた「S」ボタン。これを押すと、まずシートクッションが空気によって膨らみ、締めつけを増す。さらにエンジンのレスポンスが一層鋭くなり、V8FSI直噴エンジンの排気音もやや野太く変化する。このうち低音でドスを聞かせる排気音は好みが分かれるであろうが、エンジンのレスポンス向上とシートのタイト化は、スポーツ走行しようという意識をもたない状況でも、普段の社会的温厚運転でも好ましい。ハイパワーエンジン+6MTの組み合わせでは、スムーズな変速に対しても貢献するから、常時オンにして使いたいほどだ。
スムーズな振る舞い
それにしてもV8FSIエンジンはスムーズでパワフルだ。レブリミットは8250rpmに設定されているが、そこまで意識しなくとも軽く踏んで7000rpmにはすぐ達する。2輪駆動車で420ps+MTとなれば発進時にホイールスピンさせないようにクラッチミートには気を遣うところだが、このクルマは4WDゆえにまったくそうした気配もなく、ただちにパワーが4輪に伝わりスムーズに動きだす。このあたりの振る舞いは、まったくもってクワトロの独壇場ともいえる。
ここがもう少し、あそこがちょっと……というケチをつけたくなる部分がほとんどない。もっと高価なクラスも含め、このRS 4は緻密に作られた量産車の中で、最上位にランクされよう。すでにこれは1台ずつ造り出される、手作り的なチューニングカーの領域にある。
強いて重箱の隅をつつくとすれば、VW・アウディに共通するA/B(アクセル/ブレーキ)ペダルを両方同時に踏んだときに、エンジンが一瞬加速を躊躇するアノ悪癖くらいだろうか。ATだけでなくMTであっても、中速コーナーなどでは速度を落とさずに曲がるきっかけとして、スロットルを踏んだまま左足でチョンとBを踏むチャンスはままある。そんな時にガッカリしてしまう。アウディの、BはAに優先するという技術身上を貫く気持ちは理解できるものの、せめてBを放してからのリカバリーを早めてほしいところだ。
トレッドのチューニングがもたらす応答性
競技など純粋にタイムを要求される場合には、Sトロニック(DSG)のほうが効率よく素早い変速が可能であろうが、ロードカーの場合の変速する楽しみという基準をもってすれば、このクラッチ操作付きマニュアル変速はドライビングのリズムからいっても最上の味を楽しめる。6段のステップアップ比が、1.66−1.45−1.34−1.23−1.18というクロースしたレシオは、理解して乗る人だけでなく初めての人に対してもMTの楽しさを教えてくれる。もちろん町なかでも普段より1段上のギアを選択できる乗りやすさを合わせ持つ。
もうひとつRS 4に採用された玄人受けするチューニング手法を紹介すると、それは前後トレッドの差である。フロントのそれよりリアが広い。通常のクルマは前後同じかフロントが広い。これは単純にトレッドだけの特性でみれば、前が広いほうがアンダーステア=安定性を稼げるからだ。だからあえてリアを広く採ったのには理由がある。ステアリングホイールの切りはじめにスッと旋回態勢に入る遅れのない素直な応答性に貢献するからで、バランスの悪いFR車ではできない手法だ。これと前40%、後60%の後輪寄りのイニシャルでのトルク配分が絶妙に絡んで、コーナーの入口から出口まで実に繊細にして痛快なる操縦安定性を安心して楽しめる。
RS4は外観こそ普通のセダンではあるが、技術的洗練性において究極のクルマである。
(文=笹目二朗/写真=高橋信宏/2006年9月)

笹目 二朗
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