スマート・ロードスターBRABUS(2ペダル6MT)【試乗記】
中古ボクスターとどっちを選ぶ? 2004.11.25 試乗記 スマート・ロードスターBRABUS(2ペダル6MT) ……347.2万円 エアロパーツにデュアルエグゾーストパイプ、フロント205/40R17、リア225/35R17のワイドタイヤなどで武装した「スマートロードスターBRABUS」。最高出力101psのハイチューンユニットを積む2座スポーツに、自動車ジャーナリストのいしわたり康が乗った。タダモノではない
スマートといえば、「フォーツー」がすぐに頭に浮かぶ。街なかで見かけるスマートはほとんどがコレだ。しかし、カブリオ、ロードスター、ロードスタークーペ、そして「フォーフォー」と呼ばれる4人乗りがラインナップに加わって、スマートファミリーもいつのまにか充実してきた。さらに、長年メルセデスベンツのチューニングを行なってきたブラバス社とタッグを組み、スマートの合弁会社スマート・ブラバス社が設立され、それぞれのモデルのブラバス仕様まで登場している。
「スマートK」を除けば、現在スマートに搭載されるエンジンは、698cc直列3気筒ターボユニットで、モデルによってチューニングが異なる。そのなかでもっともチューニングレベルが高いのが、「ロードスターブラバス」と「ロードスタークーペBRABUS」が積むユニットだ。パワー/トルクはそれぞれ101ps、13.3kgmと、フォーツークーペの61ps、9.7kgmから大幅にアップ。ベース車となったロードスター&ロードスタークーペの82ps、11.2kgmと比べても、ずいぶん強力になっていることがわかる。
今回試乗したのは「ロードスターBRABUS」。エクステリアはスマートの特徴であるトリディオンセーフティセルとボディパネルのツートーンが排され、単一のシルバーかブラックのボディカラーとなる。さらにフロントスポイラー、サイドスカート、リアスポイラー、そして17インチのワイドホイールなどが組み合わされ、小さいながらも迫力のある外観となっている。
とくにノーマルロードスターより20?低い1185mmの全高と、フロント205/40R17、リア225/35R17という超ローハイトのワイドタイヤが醸す雰囲気は、タダモノではない。
盛り上がる“特別感”
ノーマルのロードスターでも、「ロータス・エリーゼ」並みに低いドライビングポジションが、スポーツカー気分を盛り上げる。ドライバーズシートに乗り込むには、それなりの身体の柔らかさと覚悟が必要だが、ブラバス仕様はさらに車高が低くなっており、まるで半地下に降りていくような感覚だ。
インテリアは、シートヒーター付きのブラックの本革シート、本革トリム、クロームリングの入ったメーター類、アルミと本革をあしらったシフトノブとパーキングブレーキなど、ブラバス専用のアイテムを装備。カジュアルなムードのノーマルモデルと違って、ちょっとスパルタンで重厚な感覚でまとめられている。
スマートならではの6段セミATは、ノーマル同様、オートモードとマニュアルモードが切り換え可能。シフトレバーだけでなく、ステアリング左右のパドルでもシフトアップ&ダウンできる。
ノーマルでも中〜高回転を得意とするエンジン特性は、このブラバスではさらに高回転よりとなっているから、マニュアルモードを選んで走り出した。3000rpm以下では機敏に加速しない反面、それを過ぎると明らかにターボらしい太いトルク(といっても698?のターボとしては)で、850?のボディを元気に引っ張ってくれる。マックストルクをノーマルは2250〜4500rpmで発生するのに対し、ブラバス仕様は2500〜5300rpm とより広い回転域で発生するので、5000rpmを超えてもトルクの頭打ち感がなく、そのまま6000rpm まで気持ちよくまわりきるのが嬉しい。
専用のデュアルエキゾーストから発せられる野太いサウンドは、とても698ccとは思えない凄味があり、「特別なクルマをドライブしているんだな……」という実感が沸いてくる。スロットルを抜くと、「シュパー!」とウェイストゲートの開く音が耳元まで届き、運転にも俄然やる気が出てくる。
惜しまれるセミAT
演出は申し分ないのだが、とかくやり玉にあげられるATモードのギクシャクとした加速感は、このクルマでも「健在」だった。動力性能がよくなったぶんギクシャク感も大きく、運転している本人ですらクルマ酔いしそうなくらい、加速中に減速Gを感じた。街なかでの乗り心地は、低められたスポーツサスと、超偏平タイヤから想像されるものよりずっといい。硬くひきしまったスポーツカーと思えば、十分納得がいくレベルだ。高速での直進性も、ボディサイズを考慮すればかなり落ち着いている。それだけに、セミATのデキが惜しまれた。
ワインディングロードではどんな走りを見せてくれるのだろうと期待したら、ちょっと肩すかしを食った。パワー的には十分で速いのだが、ステアリングからロードフィールが今ひとつしっかりと伝わってこないのだ。とくに路面が濡れていたりするとインフォメーションがすくなく、限界がとても掴みにくいのは、太すぎるタイヤの悪影響かと思われる。
トランスミッションのマナーも、運転にちょっと水を差す。マニュアルモードを選んでいても、6000rpmで勝手にアップシフトしてしまうので、コーナー手前でシフトアップして「オットット……」ということが何度となくおこった。パドルを操作したときのレスポンスが、もうすこし早くならないかなとも思う。まぁあれこれ言いたくなるのも、クルマのできがイイからなのだが。
ブラバスチューンが施されたスマートロードスターシリーズは、カタログモデルではなく限定車だ。ロードスターブラバスが343.0万円で限定30台、ロードスタークーペは363.0万円で限定20台が販売されるのみである。中古ボクスターが買えるプライスの高さも驚きだが、希少価値の高さは、他に比べるものがない。
(文=いしわたり康/写真=荒川正幸/2004年11月)

いしわたり康
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