日産フーガ350GTスポーツパッケージ(5AT)【ブリーフテスト】
日産フーガ350GTスポーツパッケージ(5AT) 2004.11.29 試乗記 ……480万9000円 総合評価……★★★★ 日産の新しいLクラスサルーン「フーガ」。走りのパフォーマンスを重視したニューモデルはどうなのか? 凝ったサスペンション機構や19インチタイヤを装着した「350GTスポーツパッケージ」に、自動車ジャーナリストの森口将之が乗った。引き上げられた持ち味
東名高速道路の大井松田〜御殿場間、下り右ルートを安心して走れること。「日産フーガ」が目標のひとつに掲げたのがこれだった。この区間を走ったことがあるクルマ好きなら、思わずニヤリとするのではないだろうか。
フーガは「セドリック/グロリア」という、40年もの歴史を持つ高級車の系譜を受け継いで生まれた。セドリック/グロリアには以前から「グランツーリスモ」という名前のスポーティグレードがあり、それがライバルの「トヨタ・クラウン」「ホンダ・レジェンド」とはひと味違う個性の源泉になっていた。
今年は日産だけでなく、トヨタとホンダも、そろってこのクラスをモデルチェンジしてきた。クラウンは「ゼロ・クラウン」の言葉とともにイメージの変革を図り、レジェンドは新開発の4WDシステムで高度な走行安定性を売りものにしてきた。ライバルも走り方向に振ってきたのだ。
そんな好敵手を前に日産が放ったフーガのイメージリーダー「350GTスポーツパッケージ」は、国産量産車初という19インチホイール/タイヤや、それに合わせて締め上げられた足まわりなどにより、“走りのビッグセダン”という持ち味をさらに引き上げている感じがした。
プレミアムセダンとしてみると、内装の質感や走行中の音づくりなどに、まだまだ不満がある。また、輸入車ユーザーを引き入れたいという思いとは裏腹に、ディテールには演歌調が残るなど、迷いも見え隠れする。でもこうした部分は、これから勉強していけばいい。
フーガとクラウン、レジェンドとの関係は、BMW/メルセデスベンツ/アウディに似ていると思った。3台がはっきりと違う道を歩き始めたことに、とても好感を持った。
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【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
日産のLクラスセダン「セドリック/グロリア」の後を継ぐニューモデルとして、2004年10月にデビュー。「高級車のパフォーマンスをシフトする」というキャッチフレーズのとおり、「走る」というクルマ本来の性能を重視したスポーティセダンとして生まれ変わった。
ボディサイズは全長×全幅×全高=4840×1795×1510mm(GTシリーズ)。先代セド・グロに比べ100mmも延長されたホイールベースは2900mmとなった。「スカイライン」や「フェアレディZ」にも使われた「FMパッケージプラットフォーム」の改良型が用いられる。
横剛性をアップさせたというサスペンションは、フロントが新開発のダブルウィッシュボーン式、リアはマルチリンク式。ダンパーには、乗り心地向上のための「リップルコントロール」に加え、ピストンスピードに応じて機械的に減衰力を調整する機能を付けた「デュアルフローパスショックアブソーバー」を採用し、走行性能と乗り心地を両立したという。
エンジンは、3.5リッターV6 DOHC(280ps/6200rpm、37.0kgm/4800rpm)に加え、2.5リッターV6 DOHC(210ps/6000rpm、27.0kgm/4400rpm)をラインナップ。トランスミッションは、先代セド・グロに用いられたトロイダル式CVTが姿を消し、すべてのグレードで5M-ATx(マニュアルモード付きフルレンジ電子制御5速オートマチック)を採用した。マニュアルモードでは、シフトダウン時にエンジン回転数を同期させる、スロットルブリッピング機能を使うことができる。
グレードは、スポーティな「GT」系と、ラクシャリーな「XV」系に大別され、それぞれに3.5リッターと2.5リッターを設定。FRが基本だが、3.5リッターには4WDモデルもある。
(グレード概要)
「350GTスポーツパッケージ」は、GT系の最高峰。高性能をウリにするフーガのイメージリーダーを担う。
最大の特徴は、その名にもある「スポーツパッケージ」。245/40R19インチの大径タイヤ、専用サスペンション、車速と舵角に応じて後輪を操舵する「リアアクティブステア」、アルミ製ペダルのセットで、ダイナミクスの向上に加え、外観をアグレッシブに演出する。
基本的な装備は「350GT」と同じ。DVDナビゲーションシステムやハイグレードオーディオ、メモリー付きパワーシートなど、高級車らしく内容も充実する。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
センター部分を手前に張り出させた、最近の日産車でよく見られる造形は、機能面では文句ない。ただし質感はもうすこしがんばってほしい。特にインパネのフィニッシャーは、木目調、メタル調、ピアノ調の3種類が用意されるが、ピアノ調以外は「ティーダ」あたりとあまり変わらない印象だ。
そのピアノ調が、現状ではGT系では選べないのも残念。センターパネルのスイッチは、操作はしやすいが、デザインは洗練されているとはいいがたい。
一方、太めのステアリングホイールや短めのシフトレバーからは、ドライバーズカーであるという主張を感じる。特にシフトレバーは、コクコクという操作感を含めて、なかなかスポーティに感じられた。
(前席)……★★★
シートは標準がクロス、オプションでレザーが選べる。クロスではブラックとエクリュ、レザーではそのほかフォーブが用意される。個人的に好みのピアノ調フィニッシャーは、エクリュとのコーディネイトで、いままでの国産高級車にはない雰囲気をもたらしてくれる。
シートの座り心地は、クッションの厚みがあまり感じられないのは最近のドイツ製プレミアムブランドに似るが、それ以上に腹や胸のあたりのサポートが緩め。腰はしっかりサポートしてくれるが、特にレザーシートでは上半身が左右にぶれがちだった。恰幅のいい体格のユーザーを想定したのかもしれないが、GT系だけでもタイトにつくってよかったのではないだろうか。
(後席)……★★★★
クッションの傾きがすくなく、逆にシートバックは寝かせ気味という、いままでの国産高級車によくある乗車姿勢なのが残念。もうすこしクッションに角度をつければ、長く乗っていても姿勢がくずれず、楽に過ごせるだろう。座り心地はけっこう硬めで、スポーティセダンであることが伝わってくる。
広さについては申し分なく、身長170cmの自分が前後に座った場合、膝の前には30cm近くもの空間が残り、頭上にもゆとりがある。
(荷室)……★★★★
外から見てもわかるように、リアオーバーハングが短めなので、トランクリッドの開口部はそれほど広くはなく、内部も奥行きについてはほどほどという印象。ただし深さや幅については、このクラスのセダンの水準には達しているという感じを受けた。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
最初に驚いたのは、アイドリングのときの音や振動がほぼ完全にシャットアウトされていること。さすがは日本製高級車だ。発進もこのクラスの日本車の例に漏れず、やや唐突。せっかちなドライバーを想定したのかもしれない。
同時に乗った250系でも不満なく走るだけあって、3.5リッターV6エンジンと5段ATによる加速は、流れに乗って走るだけなら2000rpmぐらい回せば済むなど、かなり余裕がある。
音はその状況では気にならないが、3000rpm以上ではボリュームが大きくなる。音質は聞き惚れるほどではないが、さりとて不快でもない。
ATはとても滑らかで、特にマニュアルモードでは、シフトダウン時に回転合わせを行ってくれるので、スムーズな変速が堪能できた。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
意外なことに、19インチのホイールとタイヤを組み合わせた350GTスポーツパッケージが、いちばん乗り心地がよかった。ホイール/タイヤに合わせたチューニングがなされているのだろう、他のグレードのように荒れた路面で足もとがバタつくことはほとんどなく、フラットな姿勢を保つ。国産高級車としてはかなり硬めの乗り心地だが、アイデンティティをはっきりさせたという点で評価できる。
ステアリングは、エアバッグのせいか、すこしだけフリクションを感じるが、おおむね素直な反応。ボディの大きさを感じさせない軽快な動きが身上の250系に対して、350系は車格にふさわしい落ち着いた身のこなしだが、ロードホールディングは十分以上。特に19インチを履いたスポーツパッケージのコーナリングスピードはかなり高い。ロールをほとんど感じさせず、ハイペースでコーナーをこなしていく姿は、あきらかにクラウンとは違っていた。
(写真=峰昌宏、佐藤俊幸/2004年11月)
【テストデータ】
報告者:森口将之
テスト日:2004年9月29日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2004年型
テスト車の走行距離:--
タイヤ:(前)245/40R19(後)同じ
オプション装備:本革シート+前席エアコンディショニングシート+前席シートバックグリップベルト+後席前後上下調整式ヘッドレスト(左右)+後席上下調整式ヘッドレスト(中央)+前席SRSサイド&カーテンエアバッグ+後席ELR3点式シートベルト(中央)+助手席パワーオットマン機構(以上セットオプションで36万7500円)/ETCユニット(3万1500円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行形態:市街地(3):山岳路(7)
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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